戦場への第一歩
「父上が私たちを呼んでいる?」
私は不思議でたまらなかった。だって、父上が戦の会議に私を呼んだ事がなかったから。
「…分かった。父上にすぐに行くと伝えてくれ。」
お兄ちゃんは平然と言った。体を起こそうとするお兄ちゃんを私はすぐに駆け寄り起き上がるのを手伝った。
「ありがとう、睡蓮。」
お兄ちゃんは笑顔で言った。ドキッ、と私の胸はなった。お兄ちゃんにばれないように、顔をしたに向けながら、
「…うん」
と私は静かに言った。
「父上ただいま参りました。」
会議場についた私達は、父上に挨拶をして各武将が座っているところに座った。
「…お前たちを呼んだのは他でもない。今度の戦についてだ。長年の私の夢である、山の国々10国を1つにまとめるこの重要な戦。絶対に負けられないのだが。…非常に言いにくいのだが、紅蘭今度の戦にお前を連れて行くと言っていたのだが、体調を悪くしたお前を戦に連れて行くのは、少し気が引けるのだ…。すまないが、今回の戦はお前を連れては行けぬ。」
父上は、とてもすまなそうに言った。
「王‼︎紅蘭様を戦から外すということは、とても不可能と思われます!なんてったて、今度の戦の相手は山の民の中でも一番人が多く、強い虎の国ではないですか!紅蘭様を抜いては、いくら王が強いからとはいえ勝利する確率は低くなってしまいます。」
と私の隣に座っている武将が言った。
「…分かっておる。だが、それでも息子のことを思うと仕方が無いのだ。」
父上もだいぶ困っている。私はそんな父上の役に立ちたいと思った。
「…父上…私がお兄ちゃんの代わりに戦に行きます。」
私は意を決して言った。私の一言に会議場が騒がしくなった。
「何を馬鹿なことを言っているのだ!睡蓮、お前は女なのだぞ。将来嫁に行くような女が顔に傷でも付いたらどうなる。私はお前にそんな事は出来ない!」
父上は驚きと怒りを隠すので精一杯のようだ。でも、私は諦めるつもりはない。
「父上、戦に出るのは男だけだと、誰が決めたのですか?」
「……‼︎」
「それに、顔に傷を付けないように、お面を付けて戦えばいいのではないでしょうか。…私は本気で言っています。今まで男手一つで育ててくれた父上に恩返しがしたいのです。…お願いです、どうか私を戦に連れて行ってください。何でも言うことを聞きますから…!」
私は深く頭を下げて言った。
「私からもお願いです。私がいけない代わりに睡蓮を連れて行ってください。稽古は私が付けますから。」
お兄ちゃんも私と同じようにして頭を下げてくれた。
(お兄ちゃん…ありがとう)
「…お前たちの気持ちは充分、分かった。睡蓮、明日の朝から紅蘭に頼んで稽古をつけてもらいなさい。」
「ありがとうございます‼︎」
……この頃の私は考えもしなかった。将来あんな事になるなんて………。