エグゼリオの守護騎士2
活気に溢れた通りを、一人の男が歩いていく。黒目黒髪で、身長は平均より少し高いくらい。顔立ちは整ってはいるが、さして美形と言うわけでもなかった。細身にも見えるが、それは無駄な肉がついていないことの証拠でもある。髪の毛は夏らしく短く整えられている。足取りは滑らかで隙がなく、彼が優れた武芸者であることが伺えた。
男の名はルクト・オクス。カーラルヒスのノートルベル学園武術科に在籍する学生であり、近く始まる夏休みがあければ晴れて五年生になる。
「暑い……」
歩きながらルクトはダルそうにそう呟いた。日が最も長い時期はおよそ一ヶ月前に過ぎたが、しかし暑さの盛りはこれからが本番である。さらにルクトは昨日まで合同遠征で涼しい迷宮の中にいたため、夏の空気はことのほか暑く感じた。
四年生で、また夏休みが近いこともあって最近は講義の予定もない。普段であれば迷宮に避暑に、もとい自己鍛錬にでも行くのだが、今ルクトが向かっているのは迷宮ではなかった。今彼が向かっているのは、外からやって来た人々が泊まる宿屋。その一つである「三軒宿」である。
その理由は、ルクトが合同遠征に行っている間に寮に届けられた一通の手紙である。そしてそれを届けた者の名前と、宿泊している宿を記したメモが一緒になっていた。
手紙の差出人はメリアージュ。そして手紙を届けてくれたのは、セイルハルト・クーレンズとヴィフレン・マーブル。手紙の中身は、簡単に言えば紹介状だった。
『二人が荷物運びの人手を求めている。気が向いたら協力してやるといい』
簡単に要約すれば、手紙にはそのようなことが書いてあった。ただ仕事の内容や拘束期間、報酬などについては何も記されておらず、つまり「直接話を聞いて確認しろ」と言うことらしい。
手紙を読んだ第一感想は、率直に言って「面倒くさそう」だった。とはいえ他ならぬメリアージュの紹介。話も聞かずに断ることはできず、こうして二人が宿泊している三軒宿まで足を伸ばしている次第、というわけだ。
三軒宿に到着し受付でセイルハルトとヴィフレンの名前を尋ねると、逆に自分の名前を尋ねられた。ルクト・オクスだと答えると、件の二人は宿の食堂にいると教えてくれた。どうやらあらかじめ話を通しておいてくれたらしい。
受付に礼を言ってから、ルクトは食堂のほうに足を向ける。三軒宿の食堂には、宿泊客と思われる人々が多数いて雑談に興じるなどしていた。その中からルクトは目的の二人を探さなければならない。だが、困ったことにルクトは二人の名前しか知らない。さてどうしたものか、と考えているとルクトの視線が一つのテーブルに止まった。
そのテーブルに座っているのは二人の男。一人は金髪に青い目で、非常に端正な顔立ちをしている。もう一人は黒目に黒髪で、浅黒い肌が特徴的だ。二人とも長身だが、後者はそれに輪をかけて大柄である。
目立つ二人である。だが外見的な容姿とは別のところで、ルクトは彼らが目的の二人であると確信した。
にじみ出る風格。威圧されているわけでも、まして敵意を向けられているわけでもないのに、圧迫されるものを感じその場から動くことができない。背中に流れる汗は、暑いからではないだろう。うまく表現することができないが、ルクトは彼ら二人からメリアージュに似た気配を感じ取った。
ゴクリ、と唾を飲む。その音が聞こえたわけではないだろうが、二人のうち金髪の方がルクトに気がつき彼のほうに視線を向け、そして少しだけ面白そうに笑みを浮かべた。それから満面の笑みを重ねて浮かべ、おもむろにルクトを手招きする。
ルクトは一瞬だけ躊躇したが、すぐに意を決して足を前に進めた。三軒宿の食堂はそれなりの広さを持っているが、それでもやはり室内であることにかわりはない。ルクトは十秒程度で二人が座っているテーブルの傍らに立った。
「君が、ルクト・オクス君?」
ルクトが足を止めると、金髪の男がそう尋ねた。その口調は柔らかく、また実力に裏打ちされた自信と落ち着きがにじみ出ている。
「はい、そうです。それでは、お二人が……?」
「そ、僕がセイルハルト・クーレンズ。セイルでいいよ。それでこっちが……」
「ヴィフレン・マーブルじゃ」
「ルクト・オクスです。よろしくお願いします」
自己紹介を終わらせると、勧められるままにルクトは椅子に座った。緊張した様子を見せるルクトに、セイルはマグカップに紅茶を入れて差し出す。飲んでみると、驚いたことに冷たくまたほのかに甘い。聞けば、自前の魔道具で冷やしたのだと言う。
「ここに来てくれたということは、手紙とメモには目を通してくれたんだよね?」
ルクトの緊張がほぐれたのを見計らい、セイルはそう切り出した。ルクトはそれに「はい」といって返事を返す。
「では改めて。ルクト君、君に物資輸送の仕事を依頼したい」
声音を真剣なものにしてセイルはそう言った。ただ表情は穏やかなままで、そのおかげか威圧されているような圧迫は感じない。
「仕事の依頼と言われても……。中身を聞かないことには答えようが……」
ルクトが少し困った様子を見せてそう答えると、ヴィフレンが「確かにのう」と声を立てて笑った。セイルのほうも気にした様子はなく、相変わらず穏やかな笑みを浮かべている。
「仕事の説明はこれからするよ」
そう言ってセイルは説明を始めた。仕事の内容は、簡単に言えば「仕入れた物資を〈プライベート・ルーム〉に積み込み、セイルたちが指定する場所まで運ぶ」というものだ。
目的地までの案内は二人がやってくれるので、ルクトは付いて行くだけでいい。仕事が終わった後の帰路も、カーラルヒスまで送ってくれると言う。目的地までは数日かかると予想され、その間は野宿することになるが、それも特に問題はない。
(〈プライベート・ルーム〉の中にはゲルもあるしな……)
ゲルとは遊牧民が使う移動式の住居だ。いわば家付きでサバイバルに行くようなもので、これで「キツイ」などと言っていたら怒られそうである。ただ夏のこの時期、換気の利かない〈プライベート・ルーム〉の中は暑くなっていることが予想され、そう思うとあまり使う気も起きないが。
まあ、それはともかくとして。
「運べる物資の量には限界がありますが……」
「十個のパーティーと遠征用の荷物を収容できると聞いている。それだけ入れば十分だと思うよ」
メリアージュから合同遠征のことを聞いていたのだろう。〈プライベート・ルーム〉の容量に問題はないとセイルは言った。
「もし一度で運びきれないのであれば、二度三度と往復すればよいじゃろう」
ヴィフレンがそういい、セイルもそれに同意した。すべての物資を〈プライベート・ルーム〉に収容して輸送するのであれば、普通に馬車などを使う場合とは異なり、ルクトたちは身軽な状態で走って移動することができる。それも武芸者の速度と体力で、だ。そのため移動時間の大幅な短縮が可能になるのだ。そもそも片道数日という見立ても、それを前提にしたものに違いない。回数を重ねれば慣れるものだし、複数回往復するとしてもそれほど大変ではないだろう。
「それで、拘束期間だけど……」
一ヶ月、という期間をセイルは提示した。夏休みは二ヶ月間だから、その半分と言うことになる。話を聞いているとはいえ、彼らにとって〈プライベート・ルーム〉はまだ未知の能力。余裕を見て一ヶ月、ということだろう。
「で、報酬なんだけど……」
報酬の話になり、ルクトの目が少しだけ細くなった。彼は夏休みの間、毎週合同遠征を行っている。その稼ぎは一ヶ月で800万シク。もしセイルたちの依頼を請けるとしたら、この収入は当然見込めなくなる。そうである以上、最低でも同額程度の報酬を提示してもらわないかぎりは、ルクトはこの仕事を請ける気はなかった。
「一ヶ月で1000万出そう。仕事が一ヶ月より早く終わった場合も、この額でいい」
「やらせて頂きます!」
即答だった。「金に目がくらんだ」と軽蔑したければすればよい。実際、金に目がくらんだのだ。その後、さらに細かい条件などを話し合い、仕事をする拘束期間は八月の一ヶ月間と言うことになった。
(カデルハイト商会のバイトは、夏休みに入る前に終わらせればいいしな)
ルクトの言うバイトとは、彼が毎年この時期にカデルハイト商会からの依頼でやっている、オーフェルからの塩の輸送だ。去年までは講義の関係もあって夏休みに入ってからやっていたのだが、四年生になってからは随分と空き時間も増え、そのおかげで夏休み前にバイトをやってしまう目星が付いていた。実際のところルクトがバイトに使うつもりのその空き時間は、学生たちが遠征を行うための時間なのだが、まあそれはそれでいいとして。
「そういえば、ルクト君は塩の輸送のバイトもしていると聞いたけど?」
「……ええ、まあ。ある商会から依頼を請けて、毎年この時期にやっています」
今まさに考えていた話題を振られ、ルクトは少なからず驚いた。セイルは彼の返事に一つ頷くと、「その商会を紹介して欲しい」と頼んだ。そのわけを聞けば、塩を仕入れるためにオーフェルの商会に紹介状が欲しいのだと言う。
特に断る理由もなく、三人はすぐにカデルハイト商会に向かうことにした。商会の建物に到着し、受付で頭領であるドミニクに面会を申し込む。
ルクトはこの商会でそれなりに顔を知られているが、しかしだからと言ってアポも取らずにいきなり頭領に面会するのは難しい。カデルハイト商会は中堅どころで、このくらいの規模の商会は頭領が一番忙しいと以前にドミニクが愚痴をこぼしていたくらいだ。ただ、ルクトには魔法の言葉がある。
「メリアージュのところから来た客人だと伝えてください」
受付にそう伝言を頼むと、あら不思議アポを取っていないにも関わらず三人は応接室へと通された。ソファーに座ったセイルは苦笑を隠そうともしない。
「メリアージュは随分とあくどい商売をしているらしい」
「そうみたいですね」
「言っておくけど、君も相当影響を受けているからね?」
そんな話をしていると、ドミニクが慌しく応接室に入ってきた。彼の年の頃は五十の半ばという話だが、苦労を重ねてきたせいか実年齢よりも老けて見えた。頭には一筋白髪が帯のように走っていて、彼の気苦労の多さを思わせた。
初対面の三人が簡単に自己紹介を終えると、話はすぐに本題へと移る。つまり、塩の仕入れについてだ。
「オーフェルのノールワント商会への紹介状、ですか……」
一通りの話を聞くと、ドミニクはそう言って苦笑を浮かべた。紹介状を書くこと自体は問題ない。話を聞く限りその塩は自分たちで使うのであって、さらには仕入れるのも今回のみ。商売敵になるという心配はないだろう。
ただ、「塩を仕入れたいから紹介状をくれ」と言う話を、カーラルヒスでまさに塩の販売を行っているカデルハイト商会の頭領ドミニクにするということ、それ自体に苦笑してしまう。
確かにオーフェルで直接仕入れたほうがカーラルヒスで買うよりも安いだろうが、しかしドミニクにしてみれば自分の商会から買ってくれた方が良いに決まっている。商機を自分の手でドブに捨てろ、と言われているようなものなのだ。商人として面白いはずがない。
しかしセイルもその辺りの機微は十分に承知している。ドミニクの苦笑に満面の笑みを返すと、おもむろに一通の書類を取り出し彼に渡した。
「これは……」
その書類は、今回セイルとヴィフレンが仕入れるつもりの物品のリストだった。ドミニクが大雑把に目を通してみると、品目は多岐にわたり中には高価なものも含まれている。この全てを一手に扱うことができれば、かなり大きな商談になるだろう。
「紹介状を書いていただけるなら、そのリストの品物はこちらの商会で揃えたいと思っています」
「なるほど。そういうことでしたら、一筆したためましょう」
これだけ大量の物資をどうやって輸送するのか。その点についてはドミニクも何も言わなかった。なにしろこの席には〈プライベート・ルーム〉を持つルクトがいるのだ。輸送手段など、聞くだけ野暮である。
「それと……、今は持ち合わせが少ないので、コレの換金もお願いします」
セイルがそう言ってヴィフレンに目配せすると、彼はドロップアイテムと思しき金属のインゴットをテーブルの上に次々と並べ始めた。
(まさか……!)
そのインゴットを見た瞬間、ルクトは目を見開いた。インゴットの色は鈍い銀色。ただ、見る角度によっては金属的な濃紺の光沢を放つ。そのような特徴を持つ金属を、ルクトは一つしか知らない。すなわち、レアメタルの最高峰〈アダマンダイト〉である。
ドミニクのほうを見れば、彼も驚愕を表に出していた。腕利きの商人であり、感情の制御に慣れているドミニクには珍しいことである。
ただ、それくらい衝撃的な光景なのだ、これは。
アダマンダイトがレアメタルの最高峰とされている理由としては、金属として優れた性質を持つことに加え、その供給量の少なさが上げられる。なにしろ大きな商会でも年間で扱うインゴットの数は一つが平均で、二つ扱えれば多いという状態なのだ。
同じレアメタルであっても、例えば〈ダマスカス鋼〉などは比較的供給量が多く、お金さえあれば手に入れることは容易だ。少なくとも、「モノがない」という事態は滅多に起こらない。だがアダマンダイトの場合は、欲しくてもそもそもモノがない状態。ルクトも過去に一度だけ、メリアージュからインゴットを見せてもらったことがあるだけだ。
そのくらいドロップ率が低く、滅多に出回らないのがアダマンダイトというレアメタルなのだ。当然、取引価格は天井知らずとなっている。「二倍の重さの金より価値がある」と言われているくらいだ。間違っても、無造作に積み上げられるようなものではない。
「……本当に、これ全部が……」
「全て、アダマンダイトですよ」
信じられないのでしたら確認していただいてかまいません、とセイルはなにも気負った様子を見せずにそう言った。嘘をついている様子は微塵も感じない。仮にコレが演技だとすれば、彼は役者になれるだろう。
「……いえ。この輝き、アダマンダイトに間違いないでしょう。それにメリアージュ様ご紹介のお客人が、そのようなたばかりを働くとも思えません」
それで換金についてなのですが、と言ってドミニクは少し言葉を濁した。ルクトはこういうものの相場にはまったく詳しくないが、しかしどれだけ安く買い叩いても億の単位を下回ることはないように思う。
「……幾らになるかは、まだはっきりとしたことは言えません。ただ、お恥ずかしいことですが、恐らく買い取り価格の全額をお支払いするだけの現金が当商会にはないでしょう」
ですから全額お支払いできるのは、お預かりしたインゴットを売却した後ということになります、とドミニクは苦い声で言った。彼としては間違いなく、これらのアダマンダイトを全て買い取りたいはずだ。だが、現実問題として買い取るためのお金がない。しかし金がないのに「買い取る」と言えば、それはもう詐欺だ。
「それでも、当商会にお任せいただけますか?」
「ええ、是非お願いします」
どうやら、正直に内情を話したドミニクの態度は好意的に映ったらしい。ほとんど考え込む間もなく、セイルは即答した。
「それと最終的な支払いですが、何度も決算をするのは面倒なので、リストの物品をそろえていただき、その分を差し引いた差額だけ最後にもらえれば結構ですので」
もちろん明細は頂きますが、とセイルは最後に付け加えた。これはドミニクにとってもありがたい提案だった。リストの物品全てを揃えるには時間がかかる。つまりその間にアダマンダイトを売却することができるのだ。
普通こういう買取りは即日即金で、というのが基本である。だが、それだと今回の買取りはカデルハイト商会の身の丈を越えてしまう。しかしセイルが譲歩したおかげで、ドミニクはこの商談をものにすることができた。滅多にない規模の商談であり、ドミニクは武者震いのする思いだ。
「ありがとうございます。諸々、勉強させていただきます」
「お手柔らかに」
これで話は決まった。ただ、ドミニクにはまだ懸念が残っている。それは塩の仕入れについてだ。
「それで、塩の仕入れについてですが、どれくらいの量をお考えで?」
「そうですね……。二、三百キロ、と言ったところでしょうか」
「当然、ルクト君の〈プライベート・ルーム〉を使うことが前提ですよね?」
セイルが首肯すると、ドミニクは少し考え込んだ。それからおもむろに口を開き、懸念を口にする。
「それですと……、果たしてモノがあるかどうか……」
二、三百キロといえば、決して少なくない量である。オーフェルの塩は岩塩を採掘しているわけではなく、塩田で海水から作っている。つまり、量を揃えるにはそれ相応の時間がかかるのだ。
いや、二、三百キロだけならば常に在庫を用意しているだろう。だが旅をしやすいこの時期は、カーラルヒスの商人たちがオーフェルの塩を求める最盛期でもある。いくら紹介状があるとはいえ、飛び込みの新顔よりも付き合いの長い商人たちが優先される、というのは十分に考えられることだった。
カデルハイト商会の注文分から融通しましょうか、とドミニクが提案しようとした矢先、それに先んじてセイルが口を開いた。
「それは、時間さえあれば解決する問題ですか?」
「……恐らくは」
余分に塩を生産することはできなくても、例えば他所の商会から融通してもらうなど、時間さえあれば調達のめぼしはつくだろう。
「それでしたら、私があらかじめ紹介状を持っていって注文を済ませてしまいましょう」
そして用意するのにどれくらいかかるのかを確認しておき、後で改めてモノを受け取りに行く。確かにそれができれば円滑に塩を仕入れることができるだろう。だが、現実には距離という問題が立ちはだかる。
カーラルヒスからオーフェルまではおよそ100キロ。武芸者が身体能力強化を駆使して疾駆しても片道に一日かかる。注文を出すためだけにこの距離を往復するのは効率的とはいえないだろう。しかしセイルは、その程度であれば半日もかからずに往復が可能だと言った。恐らくは彼の個人能力の力であろうが、呆れた機動力である。
「紹介状は明日の朝取りに来ますので、それまでにお願いします」
「分かりました。用意しておきましょう」
話がまとまり、さらに二言三言言葉を交わすと、セイルら三人はカデルハイト商会を辞した。
三人が応接室から去って一人になると、ドミニクは大きく息を吐いてソファーの背もたれに身体を預けた。全身に疲れを感じるが、それは心地よいもだ。
大きな商談をまとめることができた。それは確かに大きな成果である。だが、商人としてのドミニクはさらにその先を見据えていた。
(なんとしても、あの二人とは繋がりを作っておきたいところだな……)
セイルハルト・クーレンズとヴィフレン・マーブル。あの二人は只者ではない。アダマンダイトのインゴットを積み上げて見せた一事を見てもそれは明らかである。あの二人と繋がりを作っておければ、それは商会にとって大きなプラスになるであろう。そのためにはまず、今回の一件をつつがなく終えて信頼を勝ち取らねばならない。
「まずは紹介状だな」
滅多にない大きな仕事に、ドミニクは奮い立つ。年甲斐もなく、商人の血が騒いだ。