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403 シングル・ルーム  作者: 新月 乙夜
エピローグ
159/180

門出3

 突然だが、個人能力(パーソナル・アビリティ)は成長する。十人十色で無数に存在する個人能力のなかでも、特に成長幅大きいのは所謂〈ウェポンタイプ〉だといわれているが、まあそれはそれとして。


 個人能力は成長する。それはすでによく知られている事実だ。だから誰かの個人能力が以前と多少異なっていたとしても、それは別に驚くようなことではない。だが今、ルクトの〈プライベート・ルーム〉(便宜上まだそう呼んでいる)に入ったロイら三人は、あまりにも変わってしまったその能力に開いた口が塞がらない様子だった。


 ちなみに、彼らを中に入れることについては、すでにルシフィーネに話して承諾を得ている。本来ここはルクトの能力のはずなのだから彼女に承諾を得る必要などないのだろうが、彼はここが自分の能力だとはどうにも思えないのだ。


「ルクト……。個人能力は成長するというけど、これはちょっと成長させすぎじゃない?」


 高く青い空とそこに浮かぶ白い雲。大地は草花に覆われ、鼻腔をくすぐる風は薫香を含んでいる。視線をめぐらせれば、山があり、丘があり、川が流れて湖へと向かっている。どこをどう見ても、四方を白い壁に囲まれた、彼らのよく知る〈プライベート・ルーム〉ではない。少なくともこれを〈ルーム〉と呼ぶには、いささかスケールが大きすぎるというものだ。


 自然と、ロイとクルルそしてラキアの三人の視線がルクトに集中する。それを感じ取ったルクトは、ただ肩をすくめてこう言った。


「今は何も聞いてくれるな」


 実際、ルクトも分からないことの方が多いのだ。遠征などの準備もあり、あれからまだルシと諸々の話をする機会は得られていない。ただ、それでも彼女に焦った様子は見られないから、別に焦らなくても良いんだろうとルクトは思っていた。


 さて、それはともかくとしてひとまずは遠征である。学園を卒業したロイはすぐに故郷のガルグイユには帰らず、およそ一ヶ月の間カーラルヒスで迷宮攻略をする予定でいる。これは新生活のための資金稼ぎであり、これが上手く行かないとロイとクルルの新婚生活はさもしいことになる、かもしれない。そしてそのための助っ人として呼ばれたのがルクトとラキアだった。


 遠征のための荷物を〈プライベート・ルーム〉に運び込んだルクトたちは、予定通り迷宮に向かった。そして荷物を持たない身軽さを存分に発揮して迷宮の中を駆け抜け、下へ下へと潜っていく。なお、今回はシャフトは使わない予定である。今回のメンバーはルクトとロイ、それにクルルとラキアの四人だが、このメンバーで遠征をするのは初めてであり、浅い階層で連携の確認をするためだった。


 何回かモンスターとの戦闘を繰り返すと、四人の役割分担が明確になり、戦い方がパターン化していった。以前、ラキアの代わりに武術科のOBでもあるセイヴィア・ルーニーを入れた四人でパーティーを組み遠征をしたことがあったが、その時と大体同じ戦い方である。


 つまり、クルルの〈千里眼〉でモンスターの出現(ポップ)をあらかじめ察知しておき、次いでロイの〈伸縮自在の網(バンジー・ネット)〉で出現した直後にモンスターを拘束、そして動けなくなったモンスターを仕留める、というやり方だ。


 セイヴィアがいた時はほとんどの場合彼女が一撃で片付けてしまっていたが、今回のパーティーにそこまでの火力はない。しかし全員が腕利きだ。〈伸縮自在の網〉に捕らわれて、満足に身動きの取れなくなったモンスターを倒すことなど造作もなかった。


「はぁぁぁ……、はぁ!」


 気合の入った掛け声と共に、ルクトは〈伸縮自在の網〉に絡まって身動きが取れなくなっている〈リザードマン〉に太刀を突き立てる。太刀の切っ先は〈リザードマン〉の硬い鱗に阻まれるが、しかしそれは織り込み済み。


 ――――カストレイア流刀術、〈千鎧抜き〉。


 ルクトの太刀の切っ先から、細分化された烈の刃が放たれる。それらの刃は〈リザードマン〉の硬い鱗をかいくぐり、その内側を直接破壊していく。〈浸透系〉、あるいは〈内部破壊系〉などと言われるタイプの技であり、〈リザードマン〉のように硬い鱗や甲殻を持っているモンスターには特に有効とされている。


「グゥガアァァアアァアア!!」


 絶叫を上げながら、〈リザードマン〉がマナへと還っていく。モンスターの姿が完全に消えたのを確認してから、ルクトは太刀を引いて鞘に収めた。そんな彼に、少し心配そうに声をかけたのはラキアだった。


「ルクト、あまり無理はするなよ……?」


 彼女のその言葉にルクトは苦笑する。彼が行方不明になったあの一件以来、ラキアは彼に対してどうも“心配性”になってしまった。


「大丈夫だよ」


 むしろ身体の調子は以前よりもいいくらいである。技の切れも、なんだか冴えているような気がする。これも長命種(メトセラ)に、いやルシの言う〈契約者(テスタメンター)〉になった影響なのかもしれない、とルクトは思った。しかしそんな事情を知らないラキアは、まだ心配そうな顔をしている。


「だけど、太刀だって予備のものじゃないか」


 そう言ってラキアはルクトがまだ本調子じゃないと主張する。しかしその指摘は大概的外れだ。


「こいつはダマスカス鋼五割の太刀だぞ?」


 それは現在ラキアが使っている太刀と同じダマスカス鋼の割合である。ついでに言えば製作者も同じで、つまり武器の質としては同程度と言うことができる。よってルクトの太刀が不足であれば、ラキアの太刀も不足と言わざるを得ない。


 もちろんこれは予備の太刀だから、以前にルクトが使っていた純ダマスカス鋼製のものと比べればどうしても見劣りがする。しかし五割という数字は決して悪くない。武器のランクとしては、ぎりぎり一級品と言った所だ。


「むう……。しかしな……」


 そう言ってまだ心配そうな顔をするラキアの頭を、ルクトは苦笑しながら少し乱暴に撫でた。そんなことをされてしまうと、ラキアは何も言えなくなってしまう。子ども扱いされているみたいで何だか悔しく、彼女は唇を尖らせながら上目遣いに少しだけルクトのことを睨んだ。もっとも彼の手を振り払わない時点で、本当に嫌がっているのかははなはだ疑問だが。


「あ~、お二人さん。そろそろ進んでいいかね?」


 そんな二人にどこか呆れた顔をしながら声をかけたのはロイだった。ちなみに彼は今回の臨時パーティーのリーダーでもある。そんな彼の後ろには、やたらと機嫌良さそうにニコニコと満面の笑みを浮かべるクルルの姿があった。


「ああ、悪い。大丈夫だ」


 そう言ってルクトはラキアの頭から手を離すと、何事もなかったかのように歩き出した。そんな彼の背中をラキアは不満げに睨みつけてから、諦めたようにため息を吐いてその後を追った。


 この日、ルクトら四人は十階層の大広間まで迷宮を攻略した。意図的にスピードを落としていたこともあり、そこに到着したときには夜の八時近くになっていた。迷宮の中は時間的な変化、つまり昼夜の変化がないため、気が付いたら思ったよりも時間が経っていたということはよくあるのだ。


「時間も遅いし、今日はここまでだね」


 休むとしよう、というロイの言葉に頷きルクトは〈ゲート〉を開いた。〈プライベート・ルーム〉の中に入ると、そこは夜になっていた。以前の〈プライベート・ルーム〉とは違い、ここでは昼夜の区別があるらしい。夜空に月はなく、ただ無数の星が瞬いていた。


 四人はすぐに火を熾すと、クルルが中心となって夕食の支度をした。簡単なものしか作らないが、しかし温かいものが食べられるだけもありがたい。お腹が満たされると安心感を覚えるから不思議だ。それはもしかしたら、周りが暗いことも関係しているのかもしれない。


「そういえば、アッチに温泉が湧いている」


 夕食を食べ終わって人心地ついていると、ルクトがふとそんなことを言い出した。事前にルシから聞いておいた情報だ。その言葉に、他の三人は目を丸くする。たっぷり十数秒沈黙した後、三人の内心を代弁するかのようにロイがこう言った。


「もう、何でもアリだね……」


 とはいえせっかくの温泉に入らないという選択肢はなかったらしい。話し合いの結果、先に女性二人が入ることになった。「覗くなよ、絶対に覗くなよ?」とラキアが、「覗いたら駄目ですからね?」とクルルが、それぞれ太い釘を刺してから二人は嬉しそうに温泉に向かった。


「さて。オレもちょっと散歩してくる」


「……覗きかい?」


「まさか。夜風に当たりたいだけだよ」


 わりと本気で睨んでくるロイにそう返してから、ルクトはクルルとラキアとは逆の方向に歩き出した。やがて森の中に入ると、彼は虚空を見つめながらこう呟く。


「ルシ、いるか?」


「ええ、いるわよ」


 フワリ、と音も立てずにルシは空中に現れた。相変わらず彼女は宙に浮いている。そんな姿も、少しずつだが見慣れてきた。


「それで、少し聞きたいことがあるんだが?」


「そうね……。あなたも落ち着いてきたみたいだし、いいわ、答えましょう」


 それで何を聞きたいの、とルシは面白がるような笑みを浮かべながらルクトに尋ねた。だが彼はすぐには質問をしない。聞きたいことはたくさんある。だが、ルシはその全てを今すぐに答えてはくれないだろう。ならば、優先順位を定めなければならない。まず今聞くべきこと、知るべきことは何か。まずはそれを考える。


「…………今日、やたらと身体がよく動いた。あれはルシの仕業か?」


 それは今日の攻略中、ずっと感じていたことだった。かつてないほどに身体の調子がいい。それ自体はいいことなのだが、反面どこかで反動が来たりはしないかとルクトは不安だった。遠征で必要なのは一時的な調子のよさではなく、期間中調子を安定させておくことなのだ。


「ええ、そうよ」


 ルクトの問い掛けに対し、ルシは自分の仕業であることをあっさりと認めた。そしてその上で、「反動が来ることはないから安心して」と言ってルクトを宥める。しかし彼は訝しげな顔をしたまま、彼女をさらに問い詰める。


「オレに一体何をしたんだ?」


「一言で言えば改造、じゃなかった。強化よ」


 言い直した単語に巨大な不安を覚えながらも、ルクトは無言でルシに続きを促す。彼女が時々こういうイジワルをすることをルクトはすでに知っていた。


「私があなたを助けたこと。そして『頼み事がある』と言った事は覚えているわね?」


 ルクトが無言で頷くと、ルシは満足げに笑った。そしてそのまま言葉を続ける。


「その〈頼み事〉をやってもらう上で、私もあなたをサポートしようと思い、〈加護〉を与えることにしたの」


「〈加護〉?」


 聞きなれないその単語を、ルクトは聞き返した。それに対しルシは、「そうよ」と言って一つ頷く。


「他の言い方をすれば、〈ブーストアップ〉とか〈エンチャント〉と言ったところかしら? ともかく、私のほうから力を貸してあなたの能力を底上げするの」


 こんなふうにね、と言ってルシは軽く手を横に振った。その瞬間、ルクトの身体が青白い光に薄く包まれる。


「こ、これは……!」


 自分の身体の中に感じる力に、ルクトは戸惑いと驚きの声を上げた。調子がいい、などという程度のものではない。まるで別人になったかのようである。どんな敵が相手でも勝ててしまいそうな、そんな根拠のない全能感が身体を満たしている。


「それが私の力の一部よ。でも、その力を使うには人間の身体では脆弱すぎる」


 だからルクトを助けたとき、ただ助けるだけではなく彼の身体を改造、もとい強化したのだとルシは語った。欠損していた左腕を再生したのもその時だという。


「その結果、あなたは人間ではなくなり、そして私との間にある種の“繋がり(ライン)”が出来て〈契約者〉になった、というわけね」


 それが、ルクトが人間を卒業することになった理由らしい。すべてはルシの言う〈頼み事〉を果たすため、だ。


「……結局、ルシの〈頼み事〉って何なんだ?」


 それが全ての発端であることは間違いない。しかし、ルシは今それを語ろうとはしなかった。


「今はまだ気にしなくてもいいわ。それよりも、今はその身体の扱いに慣れなさい」


 そう言ってルシは掲げていた手を下ろした。その途端、ルクトの身体を覆っていた青白い光が消え、彼が感じていた力も消えうせる。なんだか自分がとてつもなく弱くなってしまったように感じて、ルクトはそこはかとない不安を覚えた。そんな彼の様子を、恐らくは意図的に無視してルシは言葉を続ける。


「最も重要で難しいのは、力を使わないことでも、まして使うことでもなく、制御することよ」


 それが出来るようにならないうちは〈加護〉はお預けね、とルシは悪戯っぽく笑った。そう言われてしまっては、ルクトも反論できない。今日の攻略でも、調子の良すぎる身体に振り回されていた感があったのは否めない。


「さて、今日はここまでにしましょう。続きはまた今度ね」


「まだ時間はある」


 話を切り上げようとするルシに、ルクトは少し不満げにそう言った。しかし彼女は毅然と頭を横に振る。


「ダメよ。言ったでしょう? 『一度に全てを説明しても、あなたはそれを理解しきれない』と」


 はっきりとそう言われ、ルクトは押し黙った。理解できる、ということは簡単だ。しかし実際に理解することは、ルシの言うとおり出来ないだろう。自分でもそう思ってしまい、ルクトはため息を吐いた。


「分かったよ……。でも、明日の攻略のことで聞いておきたい事がある」


「それなら聞いておきましょうか。なにかしら?」


「明日は地底湖に寄る予定なんだけど……」


 ルクトが気にしていたのは、地底湖の水を抜くときのことだ。〈ゲート〉の操作は今まで通りにできた。だから地底湖の水を抜くことはできるだろう。問題はその水がどこに行くのか、だ。ゲルの近くに排出され、荷物が全て水浸しになったら目も当てられない。


「ああ、それくらいならこちらで何とかするわ。そうね、水抜きを始める前に一声かけてちょうだい」


「一声かけろ、って言われてもな……」


「頭の中で呼びかけてくれれば大丈夫よ」


 気楽な調子でルシはそう言った。何がどう大丈夫なのかルクトにはよく分からないが、彼女がそう言うのであればそうなのだろうと、彼はそれ以上深く考えなかった。


「さ、そろそろもう戻りなさい。あの二人も温泉から上がったわ」


 ルシのその物言いに、ルクトは思わず眉をしかめた。まるで温泉に入っているクルルとラキアの様子を見ているようではないか。


「……覗きか?」


「失礼ね。見知らぬ人間がここに入り込んでいるのよ。監視するのは当然でしょう?」


 澄ました顔でそう言ってから、ルシはふと満面の笑みを浮かべた。どうやらロクでもないことを思いついたらしい。


「よかったら彼女(・・)のスリーサイズ、教えてあげようかしら?」


「……遠慮しておく」


 そう言ってルクトは、少し気まずそうにしてルシから目を逸らすのだった。



▽▲▽▲▽▲▽



「あ~、堕落する~」


 温かい温泉につかり、嬉しそうに困るという器用な真似をしながらラキアはそう言った。緩みきった彼女の顔には、緊張感というものがまるで感じられない。


「そうですね……。まさか遠征の途中で温泉に入れるなんて……」


 クルルもまたリラックスした表情でそう呟く。彼女の長い黒髪は、お湯につからないように結い上げてある。彼女にとっては人生初の温泉だ。ちなみにラキアはヴェミスにいた頃に入ったことがある。


「これに慣れてしまったら、もう普通の遠征なんてできませんね……」


「そう。それが堕落」


「ラキアさんは危ないんじゃありませんか?」


 クルルが悪戯っぽくそう言うと、ラキアは「うっ」と言葉を詰まらせた。温泉は論外としても、ラキアは〈プライベート・ルーム〉を使う遠征に慣れてしまった。これこそ彼女の言うところの「堕落」である。もしこの先普通の遠征をすることになったら、きっと苦労するだろう。


 ただ、あくまでも「普通の遠征をすることになったら」である。そうなる可能性は低い、といいなぁとラキアは思っていた。そしてそんな彼女の内心を見透かしたかのように、クルルが先人の余裕と大きな慈愛を微笑みと一緒に浮かべながらこう言った。


「それもこれも、ルクトさんの返事次第、ですか……」


「なっ……!?」


 クルルのその言葉を聞いた瞬間、ラキアは思わず立ち上がった。涼しい夜風が緩やかに吹いてはいるが、温泉で温まった身体はそれをまったく問題にしない。


「湯冷めしますよ?」


 クルルにそう言われ、ラキアはおとなしく温泉のお湯のなかに身体を沈めた。ちなみに彼女の顔が真っ赤になっているのは、決してのぼせたからではない。


「な、何を言って……」


「告白なさったのでしょう、ルクトさんに?」


 なんとか誤魔化そうとするラキアの稚拙な言い訳は、クルルによって情け容赦なく一刀両断にされてしまう。


「な、なんで……」


「女のカンです」


「……わたしのカンはそんなによくない」


「では結婚を控えた乙女のカンです」


 ぬけぬけとそう言われ、ラキアは「むう」と唸った。女と言うのは結婚を間近に控えるとそんなにカンがよくなる生き物なのだろうか。自分もその生き物の端くれとして、それはどうも違うような気がするラキアだった。


「……それで、やっぱり返事はまだですか?」


 クルルのその問い掛けに、ラキアは無言で頷いた。彼女が告白してからルクトはすぐに行方不明になってしまったし、帰ってきてからも卒業式が近かったりと慌しかった。そのせいで彼からの返事はまだ貰っていない。


「……でも、今はまだこのままで良いんだ」


 ラキアは小さくそう呟いた。ルクトが傍にいてくれる。ルクトの傍にいられる。今はそれで十分だった。


「大丈夫。きっといい返事がもらえますよ」


 笑顔を浮かべながら、クルルはそう言い切った。それに対し、ラキアは苦笑を浮かべる。彼女はそこまで未来を楽観視できていなかった。


「なんでそんなことが分かるんだ?」


「女のカンです」


「……だから、わたしのカンはそんなによくない」


 そう言って二人は声を出して笑った。笑うと、気分が軽くなる。そして気分が軽くなったラキアの視界にふとソレが飛び込んできた。


 ――――浮かんでいる。


 なにが、とはあえて言わない。悲しくなるから。そして自分のソレを見る。浮かんでいない。


 浮かんでいる。浮かんでいない。浮かんでいる。浮かんでいない。浮かんでいる。浮かんでいない。


 視線を動かすたびに、ラキアは何かがガリガリと削られていくような気がした。


(カンの良さってアレに比例するのかなぁ……)


 いやいやそんなアホな、と自分で自分に突っ込んでしまうラキアだった。


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