門出2
ノートルベル学園武術科を無事に卒業したルクト・オクスは、その次の日に寮の403号室を引き払い、今はクルーネベル・ラトージュの家で厄介になっていた。これからおよそ一ヶ月、さらにカーラルヒスで迷宮攻略を行う予定である。
カーラルヒスで迷宮に潜るには許可証が必要になる。武術科の学生であれば学生証がその代わりになるのだが、ルクトの学生証は退寮するときすでに学園側に返還している。だから改めて許可証を取らなければならないのだが、これは申請すればすぐにもらえるのでルクトもロイもすでに取得している。もっとも、一ヶ月しか使わない予定だが。
さて、七月の最終日。明日から遠征が控えているルクトは、クルルに借りた部屋の中でメリアージュから貰った“黒い石”を砕いた。ゲルの中に保管しておいたものだ。粉々になった“黒い石”は〈闇〉に戻り、そしてすぐに“黒い鳥”へとその姿を変える。やがてその“黒い鳥”からメリアージュの声がした。
「……ルクトか。どうかしたかえ?」
「ちょっと、話したいことがあってな」
そう言うとルクトはベッドの上に座った。窓から風が入ってくるが、夏の盛りとも言うべきこの季節。やはり暑い。
「ところで、ここはどこじゃ? 寮ではないようじゃが……」
「ああ、寮はもう引き払ったんだ。ここは前に話した、レイシン流道場をやってるクルルの家。ちょっと厄介になってる」
また寮を出たため彼女が“黒い鳥”をそちらに飛ばしてもルクトはそこにいないし、また明日からは遠征なので、今日こうして彼の方からメリアージュを呼び出したのだ。彼がそう説明すると、メリアージュは「なるほど」と言って納得した様子を見せた。
「……それで、話というのは?」
木製の小さなテーブルの上に降り立った“黒い鳥”がメリアージュの声でそう尋ねる。
「まずはコレ」
そう言ってルクトは“黒い鳥”の前に金貨を十枚、つまり100万シク分を並べた。今月の返済分である。そして、これが最後の返済でもある。
「うむ、確かに。これにておぬしの借金は完済じゃ」
メリアージュが満足そうな声でそう言った。そして“黒い鳥”を使って十枚の金貨を一枚ずつ丁寧に回収していく。その様子を、ルクトは卒業証書を受け取ったときとはまた別の感慨を感じながら見ていた。
実を言えば、完済するだけならば先月の時点で十分に可能だった。それをルクトはわざわざ100万シクだけ借金を残しておいたのである。そのことに合理的な理由はまったくなく、「卒業と借金の完済を合わせたい」というルクトの我儘、あるいは感傷によるものだった。ついでに言えばその辺りのことはメリアージュに筒抜けだったらしく、先月の返済の際には「ほう、ほう」と非常に生暖かい声をかけられたものである。
ただ、今月こうして借金を完済できたのは、ある面非常に運が良かったからだ。サミュエルに関わるアレコレでルクトは一回死にかけた。というより、普通ならば死んだはずだった。実際、一緒に行方不明になったサミュエルは、結局あれから見つかることなく規定どおりに死亡が認定された。
余談になるが、彼の故郷には学園側からその旨を記した手紙が出されるそうだ。武術科の学生が死亡する例は毎年決してゼロにはならず、このあたりの対応はマニュアルに則って粛々と行われる。
なぜルクトは生き残ることができたのか。彼自身、その理由についてはまだ理解し切れていない。だから今の時点で彼に分かっているのは、ただ運が良かったというそれだけである。
とはいえ、生き残れたのだ。そのことに不満は無い。そのおかげで借金を踏み倒すことなく、こうして借金完済という十年来の目標を達成することができた。「黒鉄屋から借りたお金を踏み倒す者は、死より恐ろしい目に遭う」という。死んでまで「死より恐ろしい目」に遭うところだったと思うと、まさに九死に一生を得た気分である。
「そして、コレ」
メリアージュの操る“黒い鳥”が金貨を回収し終えたのを見計らって、ルクトは一枚の紙切れをその目前に広げた。ノートルベル学園武術科の卒業証書だ。これを手に入れるために、彼はカーラルヒスまでやって来たのである。
「うむ、見事である」
メリアージュは重々しい声で厳かにそう言った。ただその声音からは彼女が喜んでいることもはっきりと感じ取ることができる。それがルクトには嬉しかった。
「メリアージュのおかげだ」
「いやいや、妾は何もしておらぬよ。全ておぬしの力じゃ」
そう言ってもらえるのが、ルクトは何よりも嬉しかった。少しだけでも自分の力を認めてもらえたような気がするからだ。ただし彼が目指すところはまだ遥かに遠く、その道はきっと今までよりもずっと険しいのだろう。そんな事を考えながら、彼は証書を丸めて筒にいれ、それを“黒い鳥”のほうに差し出した。
「いるか?」
「いや、それはおぬしが持っていればよかろう」
そう言って“黒い鳥”はフルフルと首を横に振る。そう言われ、ルクトは「そっか」と呟いて証書を収めた筒を引っ込めた。
「それにしても、まさか本当に在学中に借金を完済させるとはのう?」
面白がっているのか感心しているのか、どちらともとれる声音でメリアージュはそう言った。そんな彼女に、ルクトは肩をすくめながらこう応じる。
「ま、それが目標だったからな。そりゃ頑張るさ」
おどけるようにしてルクトがそう言うと、メリアージュは楽しげに笑った。
「それで、こちらにはいつ頃帰ってくる予定なのじゃ? 明日からはまた遠征だと言っておったが」
ごく自然にメリアージュはそう訪ねた。しかしそれを聞いてルクトは苦笑する。その話をするのが今日わざわざ彼女を呼び出した最大の理由だった。
「あ~、実はヴェミスに帰るのは少し遅れることになった」
「ん? どういうことじゃ?」
訝しがるメリアージュにルクトは事情を説明する。
「実は、ロイとクルルが結婚することになった」
そして、結婚後はロイの故郷であるガルグイユでレイシン流の道場を開く予定になっている。だが、そのためにはどうしても先立つもの、つまりはお金が必要。そこでおよそ一ヶ月カーラルヒスで迷宮攻略をすることにしたのだが、自分はそれを手伝うことにしたのだ、とルクトは説明した。
「あと、実は式にも出てくれないかって言われてるんだ」
まだ返事はしていないがもしかしたら出ることになるかもしれない、とルクトは言った。その場合、ヴェミスに帰るのは最悪来春になる。
「ふむ、それはまあおぬしの勝手じゃが……。しかし、それでよいのか?」
ヴェミスに帰ったら修行に付き合って欲しい、とルクトはメリアージュに頼んでいた。もちろん、それは長命種になるための修行である。ヴェミスに帰るのが遅れれば、当然修行を始める時期も遅れる。最悪でも来春には帰れるのだから致命的な遅れにはならないだろうが、ルクトにしては随分悠長なことだとメリアージュは感じた。
「あ~。実は、な……」
ルクトはそう言って、苦笑しながら視線を彷徨わせる。そうやって言葉を探す彼を、メリアージュは何も言わずに待った。やがてルクトの視線が“黒い鳥”に戻り、それからおもむろに彼は口を開いた。
「……なんか、長命種にはもうなった、らしい」
厳密に言えばルクトは長命種になったのではない、とルシフィーネは言っていた。彼がなったのは、強いて言うならば〈契約者〉だと。ただその辺りの事情は、ルクトもまだ理解し切れていない。だからひとまずはルシが言っていた通り、「長命種になった」ということにしておこう、とルクトは思っている。
まあそれはそれとして。長命種云々の話はルクトにとって想像だにしていなかった急展開だったが、寝耳に水な話を聞かされたのはメリアージュも同じだった。
「…………はあ!?」
思わず、メリアージュはそう叫んだ。聞き間違いでなければ、今彼は「長命種にはもうなった」と言った。だが六月の末頃に話をしたときには、彼はまだ十二階層に差し掛かった程度だったはずだ。もちろん、それでは長命種になるのにまるで足りない。一体、この一ヶ月の間に何があったのか。その当然の疑問をメリアージュは口にする。
「い、一体何があったのじゃ……!?」
「実を言えば、オレもまだよく分かってないんだ」
メリアージュの問い掛けに、ルクトは苦笑を深くしながらそう答えた。それにしても彼女がこんなに動揺するのは珍しい。それが見られただけでも(実際には声だけだが)長命種になった甲斐があったな、とルクトは的外れなことを考える。
「……随分、余裕がありそうじゃのう?」
ルクトの不埒な考えに勘付いたのか、メリアージュが低い声を出す。暑いこの気候の中、冷や汗の出そうな声である。彼は視線を逸らしながら、慌てて言い訳を口にした。
「いやいや、これでも困ってるよ」
本当に分からない事だらけで、彼自身困っている。とはいえ深刻な状態になっているわけではなく、その点は気楽だった。幸い種明かしをしてくれる存在にも心当たりがあり、おいおい吐かせればいいやと思っていた。
「まあ、長くなりそうだから、詳しいことは帰ったら話すよ」
「……おぬし、少し変わったのう」
なぜかため息を吐きながら、どこか諦めたようにメリアージュはそう言った。「変わった」と言われてルクトは首を捻る。確かに短命種から長命種になったのだから大きな変化を遂げたことになるが、彼女が言っているのはそういう事ではないだろう。もっと内面的、性格的な面について「変わった」と言っているはずだ。だがそちらの方面で自分がどう変わったのか、ルクトにはあまり自覚がなかった。
「そうかな?」
「うむ。前よりも自然体で、余裕があるように見える」
メリアージュのその評価を聞き、「それはきっと良いことなんだろうな」とルクトは思った。
「借金を返済し終えたから、かな?」
「そうかも知れんな」
そう言ってルクトとメリアージュは少しだけ笑った。そうやって笑うと気分も前向きになる。とりあえずやれることをやっていこう。ルクトはそう思った。
「……それで、帰るのは少し遅れるけど、修行に付き合って欲しいってのは変わらない。頼んでも、いいか?」
「構わぬよ。もともとそのつもりじゃ」
少し遠慮がちなルクトの頼み事を、メリアージュは鷹揚に引き受けた。そんな彼女に、ルクトはただ「ありがとう」と礼を言う。その後、二言三言言葉を交わしてから、“黒い鳥”は窓の外へと飛び立った。
(まったく、敵わないな……)
飛び立った“黒い鳥”を見送りながら、ルクトはそう思う。借金を完済し、さらに長命種になってみても、まだまだメリアージュには敵いそうにない。そう考えると、長命種になったこともなんだか大したことではないように思えてくる。つまり今彼が問われているのは目標を達成することではなく、達成したその後どうしていくのか、と言うことなのだろう。
(ま、ぼちぼちやって行くさ……)
メリアージュが聞けば、「おぬしはいつも“ぼちぼち”じゃな」と笑うだろう。その様子を想像して、ルクトもまた少しだけ笑った。
――――借金残高、なし。借金完済。
▽▲▽▲▽▲▽
無事に借金を完済したその日の午後。ルクトは贔屓にしている武器屋、もとい工房である〈ハンマー&スミス〉に足を運んでいた。〈絶対勝利の剣〉の一撃を受け止めたことで蒸発してしまった以前の太刀に代わる、新しい太刀を依頼するためである。だが工房主のダドウィンはルクトから事情を聞くと途端に不機嫌な様子になり、店のカウンターに頬杖をついて彼をねめつけた。
「新しい太刀、ねぇ……」
「お、おやっさん……」
ダドウィンの不機嫌な声と顔に、ルクトは思わずたじろぐ。なにしろダドウィンときたら身長が二メートルはあろうかという大男で、さらに肩幅は広く胸板は厚い。そろそろ六十近いはずなのだが、彼の筋肉に衰えは見られない。はっきり言ってルクトなどより遥かに武芸者らしい体躯をしている。
そんな厳ついおっさんが不機嫌そうに睨んでくるのだ。健全な青年であるルクトがビビッて直立不動になってもおかしくはない。
「そういやぁ、前にもこんなことがあったよな?」
そう言ってダドウィンはさらに目を細め、ルクトはさらに冷や汗を流す。彼の言う「前」とは、ルクトが使っていた先々々代の太刀のことであろう。ダマスカス鋼の割合が三割だったあの太刀は、彼が使った瞬気法に耐え切れず砕けてしまった。柄だけになって帰ってきたあの太刀を見たときも、ダドウィンはこんなふうに不機嫌になったものである。そして今回は、その柄さえも帰ってこなかった。
「ったく、あの太刀は純ダマスカス鋼製だったんだぞ? それが蒸発したって、一体どういうことだよ」
そう言ってダドウィンは自分の頭を乱暴にかきむしった。純ダマスカス鋼製の武器と言えば、文句なしの一級品である。それが折れるでも砕けるでもなく蒸発してしまうとは、長年鍛冶屋をやっているダドウィンさえも聞いたことのない話である。いっそ盗まれたと言われた方が信じられる。そんな心境だった。
「ま、お前さんが嘘をつくとも思えん」
本当のことなんだろうな、と言ったダドウィンは身体の力を抜くようにして息を吐いた。そしてやれやれと言わんばかりに首を横に振る。
「まったく、ワシもまだまだだな……」
「いや、おやっさんのせいじゃ……」
ルクトの言うとおり、彼の太刀が駄目になってしまったのはダドウィンの腕が悪かったからではない。むしろ、彼の腕は一流である。それでも駄目だったのは、結局のところ純ダマスカス鋼製では〈絶対勝利の剣〉の一撃を受け止めるだけの耐久力がなかったという、ただそれだけのことである。
「分かっとる。分かっとるが、それでも、だ」
ダドウィンは腕を組みながらそう言った。彼のそういう、ともすれば頑固な気質は、ルクトが一年生のときこの工房でバイトをしたときから少しも変わっていない。そのために融通が利かない一面は確かにあるが、それは彼が自分の仕事に高い矜持とプライドを持っていることの裏返しでもある。そしてそれこそが、ルクトが彼に自分の武器を任せてきた最大の理由だった。
「……それで、新しい太刀の話だったな。具体的にはどうするつもりだ?」
「寸法は以前のモノと同じにしてください。それで、素材はコイツでお願いします」
そう言ってルクトは取り出した金属インゴットをカウンターの上に並べた。そのインゴットを見た途端、ダドウィンが目の色を変える。それを見て、ルクトは少しだけ意地の悪い笑みを浮かべた。
「おい、ルクト。こいつぁ、まさか……」
「ヒヒイロカネのインゴット、です」
ルクトはどこか自慢するかのようにそう言った。だがそれも嫌味には聞こえない。実際これは自慢しても差し支えないものなのだ。
希少金属、というものがある。“レア”と言われるだけあって供給量が少なく、また金属として優秀な性質を持っている。ダマスカス鋼もレアメタルの一種だが、今回ルクトが持参したヒヒイロカネはそれよりもさらにランクが高いとされている。実際、「太刀を打つのであればヒヒイロカネが最も適している」と言われていた。
そのヒヒイロカネが、目算だがおよそ太刀二本分。長年鍛冶師をやっているダドウィンでさえ、今までに見たことのない量である。山のように積まれたヒヒイロカネのインゴットとルクトの顔をせわしなく見比べながら、彼は恐るおそるといった口調でこう尋ねた。
「おい、ルクト。お前さん、まさか……」
「はい、そのまさかです」
「盗んだのか!?」
「盗んでませんよ!?」
失礼な話である。見ればダドウィンがしてやったりな笑みを浮かべている。その笑みを見てルクトは思わず脱力してカウンターに突っ伏した。
「勘弁してくださいよ、おやっさん……」
「悪い悪い。お前さんがあまりにも得意げだったんでな」
ついからかってみたくなった、とダドウィンは全然悪いと思っていないであろう笑顔を浮かべながらそう言った。それから彼はおもむろに表情を引き締める。そしてカウンターに突っ伏したままのルクトにこう言った。
「まあ、冗談はさておき、だ。本当に、純ヒヒイロカネ製にするつもりなのか?」
ルクトがはっきりと頷くと、ダドウィンは「そうか」と言って押し黙った。そしてヒヒイロカネのインゴットを数秒間凝視し続けたあと、おもむろに首を振って視線をルクトのほうに向けた。
「やれやれ、とんでもない大仕事だな、これは……」
純ヒヒイロカネ製の武器となれば、名家の家宝になっていてもおかしくはない。そんな大仕事を請け負ったダドウィンの口調は、しかしどこか楽しげだった。職人と言うのは、やはり優れた素材を使えると嬉しいのだろう。
「よし、任せておけ。最高の太刀を仕立ててやる」
それで何本打つつもりだ、とダドウィンはルクトに尋ねた。彼が持ち込んだインゴットの量は、太刀一本分にしては多すぎる。
「二本、お願いします。……それで、二本目なんですけど……」
少し気恥ずかしそうな顔をしながら、ルクトはダドウィンの耳元に口を近づけ、小声で要望を伝える。それを聞くとダドウィンはにやぁとだらしない笑みを浮かべた。
「よし、そういうことなら任せておけ! 二本ともワシの最高傑作にしてやる!」
そう言って意気込みながら、ダドウィンは愉快そうにルクトの肩をバシバシと叩いた。実に容赦のない叩き方で、結構痛い。それから逃れるようにして、ルクトは彼に大変重要なことを尋ねた。
「あ~、それで幾らになりますかね?」
「そうだな……。よし、待っていろ。今見積もりを出す」
そう言ってダドウィンはサラサラと紙に品目と値段を書いていく。そして完成したそれをルクトに見せる。差し出された紙の合計の欄には「115万シク」と書かれていた。それを見てルクトは少しだけ眉をひそめた。
「……素材持込のわりに高くないですか?」
しかし「そんなことはない」とダドウィンは言う。今回は太刀を丸々二本仕立てることになるから、刀身だけあればそれで完成というわけではもちろんない。彼の技術料に加え、鞘、柄、鍔などの付属品も必要になる。そして今回は「純ヒヒイロカネ製に相応しく、鞘なんかも高級品を使うつもりだ」とダドウィンは言った。
「う~ん」
ダドウィンの説明を聞いてルクトは唸る。せっかくの純ヒヒイロカネ製なのだから、最高のものを作りたいという彼の気持ちは理解できるし、またルクトも同じ気持ちだった。今回の太刀は彼にとっても特別な意味を持つものなのだ。
「あ~、じゃあこれで……」
お願いしますと言いかけたその時、ルクトの頭にある考えが浮かんだ。
「おやっさん、そういえば学割は?」
ルクトのその言葉を聞いたダドウィンは、しかし苦笑しながらこう返す。
「お前さんはもう学生じゃないだろうが」
「そうだった……」
自分がもう学園を卒業したことを思い出し、ルクトはうなだれる。こんなことならもう三日早く注文するんだった、と彼は後悔した。
「『いつまでも 続くと思うな 学生時代』」
「字余りですよ」
にやにやと意地の悪い笑みを浮かべるダドウィンに呆れた視線を向けてから、ルクトは見積書にサインをするのだった。