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自分は人と違う。
そんなことに気付いたのは、図々しくも小学校に上がってからだった。
周囲の大人からの言葉に、何か不安を感じる。
自分は一体何なんだろう。
疑問から佑夜は、両親に何度も聞いた。
「僕とお兄ちゃん、似てる?」
似てるわけなんてないんだ。血の繋がりがまったくないんだから。
それなのに困る親をよそに聞き続けた。
僕たち、そっくり――?
親が折れたのは、それから三年後のこと。
似ていないなど言われ慣れてしまい、佑夜もそんなことなど気にも留めなくなった頃だった。
その日の佑夜は、国語の漢字テストで一番をとって浮かれていた。
お父さんにもお母さんにも、お兄ちゃんにも自慢するんだ。
そんな思いを胸に秘め、軽い足取りで家路を辿ったのだ。
勿論家に帰って、すぐには言わなかった。
今は母親しかいない。
父は仕事でいつも帰りが六時を過ぎている。
それにこの頃将斗はまだ元気で、サッカー部に所属していた。そのため帰りは遅かったのだ。
どうせならみんなのいるところで言いたい。ビックリさせたい。
そんな幼い考えがあったから、言うのを我慢したのだ。
その日は将斗よりも早く、父親が帰ってきた。
勿論佑夜は言うのを我慢した。
しかしすぐに両親に呼ばれたのだ。
表情に出ていたのかな? だったら言っちゃうか。
飛び跳ねるように軽い足取りのまま、佑夜は両親のいるリビングに赴いた。
けれどそこにいる両親は、少しも明るい表情など見せていない。
無理して張り付けた笑顔が妙に痛々しかったのを、佑夜は覚えている。
何かがおかしいと悟ったのは、その時になってからだった。
静まり返った室内。佑夜は一歩いっぽ両親に近づいていく。
そして不意に、一冊のアルバムを渡された。
そこには今まで見せてもらえなかった一歳前の自分と、大人の男女と女の子がいた。
この日を境に、家族の関係は本当に断ち切られた。
佑夜の信じて疑わなかった家族は、自分と繋がりのない人たちだったから。




