断罪イベント365ー第28回 来なかったのは、誰?
断罪イベントで365編の短編が書けるか、実験中。
婚約破棄・ざまぁの王道テンプレから始まり、
断罪の先にどこまで広げられるか挑戦しています。
断罪イベントが、まさかの王子の発熱により中止になって数日。
王都広場では、「断罪中止返金ガチャ」が行われ、
「代わりに王子が罰金払ったらしいわよ」
「看病してたの元婚約者だって……やだ、泣ける」
などと噂が飛び交っていた。
だが、その頃。
王子は、寝室の天井をじっと見つめていた。
「……おかしい」
「なんで来ないんだ……」
◆王子の脳内モノローグ
あれほど断罪イベントに情熱を注ぎ、
「私に任せてください♡」と笑っていた彼女が──
なぜ、俺が倒れたときに来なかった?
あんなに笑ってたじゃないか。
「王子さまが正義です♡」って。
…それは、社交界で言うだけだったのか?
◆侍従との会話
「なあ、アネッサ嬢……俺の体調を気にしてる様子はあったか?」
侍従は、ほんのわずかに口元をひきつらせた。
「いえ……イベント中止と聞いて、
“時間が空いたので夜会へ行ってきます♡”と……」
「…………」
「ちなみに、こちらをお預かりしています」
王子の枕元に差し出されたのは、一通の置き手紙。
ハートマークがあしらわれた封筒。
王子の名が、かなり適当に書かれていた。
◆置き手紙の中身
『王子さまへ♡
お風邪、大丈夫ですか〜?
っていうか、それどころじゃなくないですか?
実は来週、新作ドレスの発表会があるんですの。
「涙のダイヤモンドコレクション」ってテーマで、
ほんっと〜〜に感動モノなんですよっ♡
ぜひ、お元気になったらお越しくださいませ!
ご招待チケット2枚同封しておきますね♡
……あっ、でもお連れは元婚約者じゃないですよね?うふふ
愛と感謝をこめて♡アネッサより♡♡♡』
王子「……………」
王子(チケット付きって……これ、宣伝じゃねぇか)
◆控え室・元婚約者と侍女たち
「結局、黒幕令嬢は見舞いにも来なかったんですね」
「元婚約者の方は、ちゃんとお粥まで炊いて……」
「恋と政治の違いが、はっきりしましたね」
「王子、今ごろ枕に顔うずめて泣いてるんじゃない?」
「今ごろっていうか、きっと今です」
◆再び王子の寝室にて
「……ふざけるな……」
そう呟きながら、王子はチケットをくしゃりと握りつぶす。
そして、枕元の“断罪予定表”に目をやった。
明日。
断罪イベント、再開。
「もう……誰も信じない……」
彼の目が、少しだけ陰った。
王子、目を覚ますのが 少し
遅かったですね。
読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m




