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赤い星と茶色い星と宝の話

天才と凡人、ランチタイムは波乱の予感!?

銀河政府から舞い込んだ“宝探し”の依頼。

それを伝えるためのヒカリとのランチは、まさかのトマトソース爆弾とツッコミ合戦に!

そして、遥の口から意外な一言が飛び出して──!?


天才と凡人のすれ違いラブコメ、ついに「宝探し編」が動き出すかも?(笑)

AM11:30 オシャレなイタリアン・ランチタイム


しばらく歩くと、“オシャレ”なイタリアンレストランの前でヒカリが足を止めた。


「ここね。ちょうどオープンしたところみたい。

さ、入りましょう」


「お、おぅ……」


店構えにちょっとたじろぐ。……財布、大丈夫かな?


「いらっしゃいませ」


店員さんに案内され、2人用の窓際の席に通される。


「こちら、メニューでございます」


「ありがとうございます」


ヒカリがメニューを受け取る。

なんでこいつはこんなに堂々としてんの?

ちょっと尊敬しちゃいそうだ。


「どれにする?」


ヒカリがメニューを見せてくる。

パッと見、お値段は意外とリーズナブルだ。


「……よかった」


「……何が?」


「いや、結構高級そうな店だからドキドキしてた」


俺は小声でヒカリに伝える。


「ああ、そんなこと……大丈夫よ。

ちゃんと調べ――って、何でもない!」


「?」


ヒカリは軽く咳払いをした。


「う、うん。で、決めた?」


「ああ、俺はこのカルボナーラのセットにするよ」


「そう。私はこっちの“トマトスープのパスタ”にするわ」


店員さんを呼び、注文を終える。


「……よかったのか?」


「?」


こいつは、本当に気づいてないな。


「そのワンピース、真っ白で綺麗だな」


「え、え、そう……」


ヒカリが照れる。

やばい、ニヤニヤが止まらない!


「けど、どうしたのよ急に……はっ!」


ようやく気がついたらしい。こいつらしくもない。


“トマトソースと白い服”


相性は最悪である。


「は、計ったわね!」


「自業自得だろ!」


「くっ……!」


ヒカリは悔しそうに唇を噛む。


「楽しみにしてたのに……」


はあ、しょうがないな。


俺は着ていたシャツを脱ぎ、おもむろにヒカリに差し出した。

(※ちなみにシャツの下にはTシャツを着てます)


「え?」


キョトンとするヒカリ。


「それ、着てろ。多少汚れても問題ないしな」


母さんが激怒するけど……。


「……」


「何だよ? 洗濯ならしたぞ!」


(1週間前にな)


「……いいの?」


「ああ」


「あ、ありがとう……」



AM11:50 イタリアンレストラン・食事中


「……美味しい!」


ヒカリが目を輝かせる。


「良かったな」


俺のカルボナーラもなかなかの味だ。

この店、“アタリ”だな。

……こいつも“ちゃんと調べてた”みたいだし。


「で、今日は美味しいパスタを食べるだけでいいのか?」


「そんなわけないでしょ。

もう……何よ、もう少しゆっくりさせなさいよ」


ヒカリがぷくっと膨れる。


「気になってしょうがないんだよ!

お前に“何を言われるのか”が!」


思わず声が大きくなってしまった。


「なんだ、そんなこと気にしてたの?」


「“そんなこと”って……昨日から心配で、食事も喉を通らないくらいだぞ!」


「完食してるじゃない! カルボナーラ!」


「しっ! 声が大きい、マナー違反だぞ」


「こ、こいつは……!」


小声でプルプル震えるヒカリ。

……いや、パスタ美味しすぎて感動してるだけかも?


「……そうね。今“これ”食べちゃうから、ちょっと待ってて」


そう言うと、ヒカリはスプーンとフォークを持ち直し――


バクバクバクッ!


ビシャッ!


案の定、俺のシャツにスープが飛ぶ。


ビシャ!


……いや、これ、上手いこと“俺のシャツだけ”に飛ばしてないか?

ヒカリの白いワンピースには、シミひとつ付いてない!


「おい! お前、ワザとだろ!? そうなんだろ!?」


「声が大きいわよ。マナー違反よ」


「っく!!」


「ああ、本当に美味しい……」


くそぉぉ……!

シャツなんか貸すんじゃなかった……!

やっぱりこいつ、“嫌な女”だぁぁぁ!!



PM12:20 イタリアンレストラン・食後の本題


食事が終わり、飲み物が運ばれてきた。


シャツも返ってきたが……

そこには赤い星々が、いたるところに輝いていた。

……ちゃんと落ちるのか、これ。


「それじゃあ、本題に入りましょうか……」


カフェラテを一口飲むと、ヒカリは一転して真剣な顔になる。

ちなみに俺はアイスコーヒー派だ。


「実は私、銀河政府の上層部から“ある依頼”を受けてるの」


「政府? “K”じゃなくて?」


「政府の上層部よ」


「ふーん。で、その“依頼”って?」


「……ある“宝”を探してほしいって」


「胡散臭っ! 何、“宝”って!?」


「わかってるわよ。私も最初そう思ったわ。

……けど、どうやら本当にあるらしいの」


「まあ、本当にあるとしてだな、

こんな広い宇宙のどこを探すんだ?

俺たちにゃ無理だろ」


「違うの。宇宙じゃなくて、この“地球”……ううん、“日本”にあるみたいなの」


「は?」


「何でも、ここ“地球”は“未発達惑星”で、銀河政府も手が出せないんだって。

だから、いろいろな訳ありの人たちが逃げ込んでるらしいの」


「そのうちの誰かが“日本”に宝を持ち込んだ……ってことか?」


「そう……みたい」


「で、自分たちじゃ探しに行けないから、

お前に宝探しをしてくれって泣きついたわけだ……」


「うん」


「なるほどね……で、その宝って何なの?

そんなに価値がある物なのか?」


「……あるわ。

その宝は、“AI”に感情を持たせることができる、一種の装置みたいなものよ」


「AIに感情? それって……銀河連邦の歴史に出てくる“あのヤバいやつ”なんじゃないのか!?」


「そう。

だから政府は、他の誰かの手に渡る前に、何としても回収しようとしてるの」


「でも、その“感情装置”が日本にあるって証拠はあるのか?」


「あるわ」


ヒカリは、カフェラテを一口飲んでから言葉を継ぐ。


「……昔、未発達惑星に月から来た女性型AIがいたの。

彼女は感情を持たない存在だったけれど、ある青年と出会って“心”を得た。

そしてふたりは、争いを超えて月へと旅立った――という伝説が、銀河の各地に残されているの」


「それって……日本の“竹取物語”に似てないか?」


「えぇ。やっぱり、あなたもそう思う?」


「ああ。けど、最後が微妙に違わないか?

確か“かぐや姫”は月に“ひとり”で帰る話だろ?」


「……そうなのよね。

まったく別の似たような伝承なのか、

それとも――どちらかの伝承が、間違っているのか……」


ヒカリがカップを見つめながら、静かに言う。


「……」


「銀河政府も、その伝承の“酷似”の仕方に何かを感じたの。

そして、日本の“竹取物語”に出てくる“五つの宝”に目をつけた……」


「……なるほど、ね。

けどよく日本の“竹取物語”なんか知ってたな。

銀河政府は地球に手を出せないんだろ?」


「あぁ。それでも、内密に探りは入れてるみたい……

よく目撃情報あるでしょ? UFOの」


「……あれ!? マジで!?」


「そういうことみたい」


「……」


「そこで――あなたに、“約束”を果たしてもらいます!」


「うっ!」


「一緒に、“宝探し”をしてもらいます!」


「やっぱりかぁー……やっぱりこうなるのかぁー……」


俺はテーブルの上に突っ伏した。


「……静かに、試験勉強させてくれ……」


「大丈夫よ。期限は決められてないし、

ゆっくり探しましょう……」


ヒカリがやたらと優しい声で言う。


「それに、“勉強”なら私が……ゴニョゴニョ……」


「え?」


「な、何でもないっ!」


「えぇー? けどさ、ほら、俺って“レジスタンス側”の人間だし、

こんな風に協力するのってマズくないか?」


「そ、それは……」


「な? 不味いだろ?

両陣営のトップ同士の密会なんてさ!」


「だ、大丈夫よっ! 秘密にしておけば……!」


「なんで急にそんな大雑把なんだよ……」


ピコピコッ


お知らせ:大丈夫! 私がバレないようにするから!

だから、お願い! ヒカリちゃんを手伝ってあげて!


俺とヒカリのスマホに、K様からのメッセージが同時に届いた。


「……ほら、“K”ちゃんも協力してくれるって!」


「マジかぁ……わかったよ、約束だし手伝うよ」


「ほんと!?」


ヒカリが嬉しそうに笑う。


「ただし、“試験勉強”優先な!」


「わかったわ!」


やけに嬉しそうだな、こいつ……。


「で、何か手がかりでもあるのか?

手がかりなしじゃ、探しようがないぞ?」


「あるって言えば、あるのよね。

写真が残ってるの、宝の」


「写真あるのか!?」


「まあ、画質は悪いけどね」


そう言ってヒカリがスマホを差し出す。


画面には、“解像度の悪い画像”が映っていた。


俺はスワイプしながら、一枚ずつ目を通していく。

5枚の画像――どれもハッキリしない。


「うん……?」


5枚目の写真で、ふと違和感を覚えた。


「どうしたの?」


ヒカリが首をかしげる。


「いや……これ、どこかで見覚えが……」


「え!?」


どこだったか……あれ? いや、まさか……。


「こいつのある場所……知ってるかも……」


「すごいじゃない! どこにあるの!?」


やたらと目を輝かせるヒカリ。

……そんなに期待されてもなぁ。

間違ってたら、後が怖そうだ。


「え、あ、うん。

と、とりあえず……これから俺の家に来ないか?」


ブッ!!


ヒカリはカフェラテを、見事に俺に吹きかける。


俺のTシャツに、今度は見事な茶色の星座が描かれた。


「けほっ、ちょ、何を急に言い出すのよ!?

わ、私だってまだ……こ、心の準備が……!」


「……何言ってるんだ、お前は。

違うって。

この写真の“宝”に似たものが、ウチのリビングに飾ってあるんだよ!」


「へ?」


「マジなんだって。……どうする?」


「ど、どうするって……」


ヒカリは眉間に皺を寄せて、しばし唸る。


「……ただ、その前に……」


「その前に?」


「……ユニクロ行っていいですか……」


「……」


「なんか、その……ご、ごめんなさい」


ヒカリが、珍しく頭を下げた。


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