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煽り耐性ゼロの天才と凡人

「行ってきまーす」


自転車に乗って家を出る。

俺の高校は自転車通学圏内にある。


「銀河部屋から学校ってなんだよ…スケールの落差が半端ないな」


昨日の敵艦隊との遭遇戦の後、こっちの艦隊は味方艦隊と合流して”惑星リキュール”の防衛線を引いた。

特に俺が出る幕なんてなかったけどマルタの”嫌がらせ(たぶん…)”により艦内に残された。

まあ、司令官だからしょうがないとは思うが”時給アップ”は遠ざかった。

そしてやっと解放されると今度は”コミットくん”による”スパルタ学習”が始まる…何故こうなった?


ピコピコ


「うん?」


自転車を止めてスマホを見る。


お知らせ:

おはよー。遥くん。

昨日の戦いっぷりは2人とも見事だったね!

感心しちゃったよ、さっき録画で確認した。

さすがは”私”が選んだだけあるね。


「何故、録画!?」


ピコピコ

お知らせ:

寝ちゃってた。テヘ♡


「寝てたんかい!ちゃんと責任持って生放送見ろ!」


ピコピコ

お知らせ:

それじゃあ、学校頑張ってね!

私はもうひと眠りするから…ふぁぁぁ。

おやすみー!


「寝るな!そして人の話を聞け!そして何の用だ!」


ピコピコ

お知らせ:

あ、そうそう大事な話があったんだ。

まあ後で2人にまとめて連絡するわ。

面倒いから。

今度こそおやすみー。


しばらく通信できません、ご了承下さい。



「大事な話!」



公道でスマホに向かいひとりで叫ぶ男子高校生。

周りの目が痛いです。



教室に入ると”氷室ヒカリ”はすでに席に着いていて読書中だった。


「…よう」


自分の席に着きとりあえず軽めに挨拶する。


「…おはよう、遥くん。

昨日は”ちゃんと”勉強してたかしら?」


ヒカリはニコリと笑うといつも通りの挨拶を返してきた。

ちょっと突いてみるかな…。


「まあ、勉強もしたけどちょっと”ゲーム”もしたかな」


俺は伸びをしながら答える。


「へぇ、そう、ちなみにどんな”ゲーム”だったの?」


「何?興味あんの?」


「うん…ちょっとだけね…」


ヒカリの目が泳ぐ。


「アレだ、単なる対戦型の”シミュレーション”ゲームだ」


「…ふーん」


「遥くんはさ…そのゲーム強いの?」


「どうだろうな…けど、昨日の対戦は”楽勝”だったかな」


「へー、ふーん、ほーん」


ヒカリの手に握られる本が歪む。


「ど、どんな風に楽勝だったのかしら?」


「相手はさ、こっちの何倍もの戦力で来てこっちを蹂躙しようと”舐めプ”してたからさ、

相手の弱点着いて逆に挟み撃ちにしたって訳。

まあ、楽勝だったね」


ヒカリは俯きプルプル震えている。


バン!


「何が”楽勝”よ!味方艦隊が来なかったら”あなたの艦隊”なんて全滅してたじゃない!」


教室にヒカリの声が響きわたる。

クラスメイトの視線がヒカリに刺さる。


ヒカリは顔を真っ赤にして席につく。

やっぱりこいつは”煽り耐性”低いな。


「…やっぱりお前か…」


ヒカリがジロリと俺を睨む。


「…やっぱりあなただったのね…」


「”やっぱり”って事はお前も気がついていたんだな?何で分かった?負けたからか?」


「負けてないし!そもそもあんな”無人艦隊”を最終防衛ラインに配置する”バカ”なんてあなた以外いないわ!」


またも叫ぶヒカリ。


「氷室、どうした?

ホームルーム始めるぞ」


担任がヒカリを嗜める。

どうやら担任が来た事に気がついてなかったようだ。

再び顔を真っ赤にしながら俺を睨む。


本当に”煽り耐性”低いなこいつ…。





帰りのホームルーム終了のチャイムが鳴る。


皆がまだ帰り支度をしている中、氷室ヒカリはそそくさと教室を出て行った。


アイツとは朝以来一言も口を聞いていない。

気まずいと言うのもあるのだろうが、きっと俺と話すとつい”素”が出てしまうからだろう。

アイツはいつもクラスメイトの前では”完璧超人”を演じている。

まあ演じられるだけのスペックがあるから凄いのだが…よく疲れないものだと感心する。


「さて俺も帰るか…ふぅ、憂鬱だ…」


ピロン


スマホが鳴る。


「うん?また”K”か?」


”屋上まで来て”


氷室ヒカリからのLINEだった。





ガチャン


屋上の扉を開くと氷室ヒカリが街を眺めていた。


「なんか用か?司令官さま」


とりあえず煽りから入ってみる。


「司令官って呼ばないで!それにあなただって司令官でしょ!」


予想通りの反応でひと安心だ(笑)


「で、人を呼び出して何のようだ?

”告白”でもすんのか?」


再び煽る。

俺も大概悪いな…自重しよう。


「こ、告白なんて!…す、するわけ…モニョモニョ」


「あ?」


最後の方がまったく聞こえなかったが、まあいい。


ピコピコ


ヒカリが口を開きけた、その時ヒカリのスマホが鳴る。



あの音は…”k”からの”お知らせ”?


ヒカリはスマホを開くと目を見開き、顔を真っ赤にしていた。



「何で分かるのよ!」


ヒカリが天に向かって叫ぶ。


「ど、どうしたんだよ?急に!

”K”に何言われたんだよ!」


ヒカリがキッと俺を涙目で睨む。


「な、なんだよ…」


「…何でもないわ」


「お、おう…?」


「ま、まあいいわ。

私はあなたに話があるの」


「何だよ」


「私は…いえ、私たちは明日あの”拠点惑星”を制圧します」

「これは宣戦布告よ」


「!?」


「話はそれだけよ…じゃあ」


ヒカリは話し終えると屋上の扉に向かう。


「ちょ、ちょっと待て!」


「何?」


頭だけ振り向き応える。


「何でそんなに”やる気”なんだ、氷室ヒカリ!?」


「…あなたが相手だからよ」


「え?」


「あなたの泣き顔を”絶対”に見てやるって決めたの…さっき」


「最新の願望だな!おい!」


「そんな事なら今”泣くぞ”?

準備はいいか?」


俺は目薬をポケットから取り出す。


「そう言う事じゃないでしょ!?

それにそれ”嘘泣き”!」


「じゃあ何でだよ。俺たちがあの銀河に肩入れする理由なんて、赤点回避以外ないじゃないか?」


「それはあなただけ!」


「私はあの銀河政府に…思想に”希望”を見たの…。あのAIが統治する社会に…」


真剣な顔で俺を見る。


「…そっか、なら仕方ないな。

けどお前の”希望”から漏れたヤツらはどうするんだ?完璧なお前らしくないと思うけどな」


ヒカリの顔が歪む。


「分かってるわ…だからこうやって実績を作ってるんじゃない…」


また最後の方が聞こえなかった。


「まあ、分かったよ…お前がこの戦争にかける気持ちは…」


「そう、よかったわ。

それなら明日は正々堂々とーー」


「お断りします!」


俺はハッキリ言った。


「何でよ!」


「考えてもみろ!試験まで2週間切ってるんだぞ!そんな状況で毎日毎日戦争なんかしてられるか!」


「それはあなたが毎日勉強してないからでしょ!?」


毎度同じことを言われるな、俺。


「と•に•か•く!お断りだ!」


「知らないわよ!あなたのそんな”小ちゃな”事情なんて!」


「”小ちゃな”て言うな!」


「とにかく私たちは明日”拠点惑星”を攻めます!あなたは勝手にすればいいわ」


「そんな事言うなよぉ、ヒカリ」


俺は正々堂々と縋り付く。


「下の名前で呼ばないで!」


「なら、氷室さん!」


「…やっぱり下の名前でいい…」


「???」


ヒカリの顔が少し赤い…怒らせ過ぎたか?


「なあ、本当に頼むよ!試験が終わるまでは休戦しようぜ?」


「…」


「お願いします!何ならここで土下座してもいい!」


「それはやめて…」


「ま、まさか…皆の前で土下座しろって言うのか…」


「そんな事一言も言ってない!誤解を招く言い方はやめなさい!」


激オコじゃん。


「なあ、頼むよ。何でもひとつ言う事聞くからさぁ」


「…”何でも”て言った?」


ヒカリが悪い顔で笑う。


「い、言ったかなぁ…」


時すでに遅し、ついにヒカリが本性を表した。


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