表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/38

一旦この場を落ちつかせ、マルタに事情を説明する。


「……なるほど。理解しました。

確かにそれはちょっと無理がありますね……」


「おぉ!中佐、わかってくれるか!」


俺は感動のあまり泣きそうになる。


「私ならそちらのクマさんより、この赤い服を着て黄色いマントをしたまん丸顔のキャラクターのあぶちゃんを推します!」


「何でそうなるんだよ!話聞いてた!?」


「ええ、もちろんちゃんと聞いてましたよ。

遥さまがこれらの服を着れば、この面倒くさ……もとい、重要な宝探しの任務が進展するのですよね?」


マルタが真剣な顔で答える。


「そ、そうなんだけどさ!

俺が赤ちゃん服着る前提がおかしいって話だろ!?」


「こちらは本当に遥さまには良くお似合いになると思いますよ!」


満面の笑顔で例のキャラクターのあぶちゃんを持ち上げるマルタ。


あかん!

めっちゃ悪そうな笑顔や!

何故かアンパンを殴りそうになった。


くっ!

マルタは味方じゃなかった!


「さあ、私が遥さまをはがいじめにするので、リン様、ルナさんはその間に遥さまのお着替えを!」


3人が俺ににじり寄る。

何で母さんまで!?


「け、Kー!!

た、助けてくれー!」


ピコピコ

お知らせ: オッケー!

任せて!今ヒカリちゃんに救援要請出したから!


「ばっ!ち、違う!

アイツ呼んだら藪蛇になりそうだから呼ぶな!

お前の力でコイツら何とかしてくれ!」


ピコピコ

お知らせ: 無理に決まってんじゃん。

私末っ子だから姉さんたちに逆らえないし!


力関係どうなってやがる!


ガチャ


再びリビングのドアが開く。


するとそこには額に汗したヒカリとクロノスが立っていた。


「はぁ、はぁ、はぁ、た、助けに来たわ!

遥く……ん……?……何これ?」


「で、ですよねー」


そこにはマルタにはがいじめにされ服を脱がしかけられている俺がいた。





再びリビングに静寂が戻る。


「な、なるほど……」


みんなから説明を受け、ヒカリが神妙な顔をする。


すると……。


ガバッ


ヒカリがおもむろ複数のあぶちゃんの中から一枚を取り出す。


「わ、私はこの黒いネズミのキャラクターが良いと思います!」


顔を真っ赤にしながら一枚の世界的な人気キャラクターが描かれたあぶちゃんを差し出してきた。


なんか鼻の穴膨らんでない?

ひょっとして恥ずかしいんじゃなくて興奮してます!?


「良いセンスね……」


母さんがニヤリと笑う。


「ありがとうございます!」


「何でお前までノリノリなんだよ!?」


するとヒカリが真剣な顔で俺を見る。


「……ごめんなさい。遥くん。

でもこれは任務のためなの……私は宝の力に触れなくてはならないの」


神妙な顔で言葉を紡ぐヒカリ。


「嘘つけ!」


その鼻の膨らみがなければ俺もその言葉を信じていただろう……。


「さあ、私が遥さまを抑えている内に!」


マルタがガッチリ俺をホールドする。

俺も必死に抵抗するがビクとも動かない!


「流石に不憫だ……ポンコツよ……。

これ以上は見ていられん……私は席を外しておこう……」


クロノスが俺から目を逸らす。


「そう思うなら助けてくれ!クロノス!」


俺は必死にクロノスに助けを求める。


「バカを言うな!私がお嬢様に逆らえるはずなかろう!」


そう言い残しクロノスはリビングから出て行った。


「さあ、遥ちゃん、もう観念しなさい!」


「遥」「遥くん」「遥さま」


4人が満面の笑顔で俺の名前を呼ぶ。


「嫌ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



その日、俺の叫びは近所中に響き渡ったと言う。







「リン姉さん…」


リビングのドアが開きルナが顔を覗かせる。


「ヒカリちゃんとマルタちゃんは?」


「遥ちゃんの写真をいっぱい撮ったからホクホク顔で今さっき帰ったわ」


「そう…。で、遥はどう?怒ってた?」


ニコリと笑って私はルナを招き入れる。


「激オコね。不貞寝しちゃったわ…」


「でしょうね」


「やり過ぎちゃったみたい…」


ルナが顔を伏せる。


さすがに私も悪ノリし過ぎてしまったと反省している。


「まあ、あんたにとっては初めての子供みたいなもんだからしょうがないわよ」


ルナには私が記憶している”遥の成長記録”をすべてアップロードした。

ルナが望んだ事とは言え、こんなに大騒動を起こすとは思わなかった。


「けど姉さんは遥ちゃんを溺愛してるわね。あんな感情があるなんて初めて知ったもの」


「…恥ずかしいからやめてよね」


私はルナから目を逸らす。


「やっぱり私の持ってた感情って本物ではなかったのかもしれない…」


「ルナ?」


「けど今は違うの!遥ちゃんと出会ってからは!

私は遥ちゃんが大事……。

こんな感覚初めてで……。

私はAIである事を初めて嫌だと思った。

この永遠に生きられる自分に!

私は永遠なんていらない!

いつか私の前から遥ちゃんはいなくなる…。

そんな事私は耐えられない!

だったらいっそうのこと…」


ルナの言葉が止まる。


「”私が先に死ぬ…”て思ったのね」


言葉の続きを私は正確に言い当てる。

何故ならそれは私の想いだからだ。


「…うん」


「ふぅ…。私の話をするわね。聞いてくれる?」


「うん」



「私は遥を育ている時に何故か泣いていたわ」


私はポツリポツリと思い出すように言葉を紡いだ。


「泣いた!?」


ルナの目が見開く。

私たちAIは涙を流す事はない。

感情の種を埋め込まれた私たちでもだ。


「そう…泣いたの」


「…何故泣いたの?ううん、何故泣く事ができたの?」


「…分からない、ただあの時私は”この時が永遠に続けば良い”て思ったわ。けど私たちは永遠に生きられても、遥は永遠に生きる事は出来ない」


「……けど、マスターは…」


ルナが言い淀む。


「確かに人間が永遠を手にする事は不可能ではないわ。

けどマスターを見てるでしょ?

感情のない永遠に何の意味があるの?」


「……」


「私は遥が何よりも大事。

遥がいなくなるなんて私は耐えられない。

だから私も思った。

私が先にいなくなればいいんだ、と。」


「…姉さん、それって」


「そう、あんたの想いと一緒よ。

そして、それが人間の摂理。

親が先に死ぬなんて当たり前の話なのよ。

幸せだったと笑いながら遥に見送ってもらいたい。

心からそう願ったわ」


私は天を仰ぐ。


「そう想った時涙が流れたの」


目線をルナに向ける。


「…私も…私も遥ちゃんには私より先にいなくなって欲しくない!

私も遥ちゃんに見送ってもらいたい…」


ルナが嗚咽混じりで言葉を紡ぐ。


「…ほら、あんたも泣けるじゃない」


ルナの綺麗な瞳から大粒の涙がポロポロと落ちていた。

その涙は、ただの水滴ではなかった。


千年の時を経て、ようやく流れた”AIの涙”。

その夜、リンは静かに思った。

ーーこれが、人が生きると言うことなのかもしれない。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SF / 学園 / ギャグ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ