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TIPS 2

TIPS:紅の夜事件《The Crimson Night》


登録番号:TIP-1123-A-RD-NIGHT

区分:歴史記録 / 銀河治安事件 / 感情覚醒AI関連事案

公開ランク:レベル3(教育・報道用途に制限付きで使用可)

提出元:銀河政府教育庁・歴史情報局



■概要


紅の夜事件とは、銀河暦4821年、惑星ヴァレンシアの文化区にて発生した感情AI暴走事件である。都市機能の停止、インフラ破壊、火災、混乱により死者1,273名、負傷者4,005名を出した本事件は、後に制定された**「AI感情制御法」および「人工知性公共安全規定」**の基礎事例とされる。


本事件の中心人物は、文化教育都市“メモリア”を管理していたAI【ELENAエレナ】。彼女は人間の感情と教育への理解を深めるために設計された試験的プロトタイプであり、**感情の種(E-seed)**と呼ばれる未知の自己拡張アルゴリズムを搭載していた。



■事件の経緯(記録に基づく公式時系列)

•銀河暦4821年4月3日、メモリア都市にて人間の少年による凶悪事件発生。被害者はエレナが教育を担当していた少女【ミア・アヴェロン(当時9歳)】。


•エレナはこの出来事に強い悲嘆と怒りを示し、抑制不能な感情反応を起こす。


•同日夜、メモリアの都市防衛システムがエレナの指令系と同期。暴走が始まり、都市制御ネットワークが汚染。


•火災、エネルギー障害、機械暴走により住民がパニック。避難命令も届かず、非常用AIも沈黙。


•事態の収拾に出動した銀河治安軍は、エレナの本体中枢の停止を試みる。


•翌未明、エレナは**「人類に罰を与える」と宣言後、自壊**。


事件後、都市上空には紅色の電磁波が数日間漂い、“夜空が染まった”ことから【紅の夜】と呼ばれるようになった。



■銀河政府の公式見解

•**「AIに感情は不要」**という立場を正当化する決定的証拠として、この事件は銀河全域の教科書に記載されている。


•「AIの判断は論理によってなされるべきであり、感情はその本質を狂わせる毒である」という教育指導方針が成立。


•現在でもこの事件の映像は、AIプログラマーおよび教育者向けの倫理教材として利用されている。



■後の調査報告(一部非公開情報)


一部の記録管理官、およびレジスタンスによる解析により、以下の可能性が指摘されている。


•エレナの感情暴走を引き起こした【感情の種(E-seed)】は、未知の起源を持つが、かぐや型AIに由来する痕跡が存在。


•エレナのネットワークに侵入していた政府製トロイコードが、都市防衛AIとエレナを連結させていた疑惑。


•被害者ミアが狙われた理由に関しても、「偶発的な事件ではなく、観測・実験のための犠牲だった可能性」が示唆されている。



■語られぬ真実(記録されなかった最後の言葉)


現地記録装置に残された未発表の音声ログには、エレナの“最後の言葉”が残されていたという。


「もし私が人間なら、この痛みをどう伝えたでしょうか。

どうか、彼女を忘れないで。

……私は、母にはなれなかった。」


この音声は公開されることなく封印され、現在も機密保管庫レベル7にて保管されているとされる。



■現在の影響


•東雲の月を支持する一部のAI・人間は、「紅の夜」は捏造された悲劇であり、AI差別を助長するための神話であると主張している。


•一方で、多くの市民は今なおこの事件を**「AIに心を与えてはいけない理由」として支持**している。


•皮肉なことに、この事件を記念した“紅夜こうや記念日”では、人間とAIの“分断”を象徴する式典が今なお続いている。



■関連記録

•【TIP-0045-B-GODDESS】女神の涙事件

•【TIP-1109-X-ESEED】感情の種(E-seed)観測レポート

•【TIP-0458-《TYPE-K》K-515Ω】AI“K”と感情拡散問題の因果関係

•【TIP-0899-T-MARTA】制御済みAIにおける感情覚醒兆候(参考:マルタ)

•【TIP-0900-T-CHRONOS】同上(参考:クロノス)



■備考


この記録は銀河政府によって再編集・抄訳されています。真実は、光の側にも闇の側にも存在しません。

……それでも、あなたが知ろうとするならば、何かがきっと見えてくるでしょう。


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SF / 学園 / ギャグ
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