カオスは続く
「ハッ!
て、事は…”あの話”も全部聞いてたって事?」
ヒカリが慌てて顔を上げる。
「あの話と言いますと…”ラーメン”の件ですか?お嬢さま」
「「そっちじゃない!」」
「…”宝”の話でしょうか?閣下」
「「そう!それ!」」
「…全部聞いてたのね」
マルタは罰が悪そうに目を逸らす。
「聞いていたと言いますか…聞かされたと言いますか…。
お2人のイチャイチャにもう胸がいっぱいになっていたので”もうやめようか”と思っていた矢先に話が始まってしまったので聞かざるを得なくなってしまいました…申し訳ありません!」
俺とヒカリは再びテーブルに突っ伏した。
「お嬢さま、この様な男に頼らずとも”私”がお手伝いいたします!是非ご再考を!」
ヒカリは目だけクロノスに向ける。
相当ダメージを受けた模様。
「あなたはこの”地球”では表だって行動できないでしょ?」
「…」
「自分も反対であります!閣下」
俺も目だけマルタに向ける。
相当ダメージを受けた模様。
「もし、こんな事が我が軍にバレたら”反逆罪”で即”銃殺刑”になってしまいますぞ!」
何それ!?超怖い!
「「まだ間に合います!閣下(お嬢さま)!」」
俺は顔を上げると空を見上げる。
「…”K”聞いてるか?」
ピコピコ
お知らせ:
聞いてるよー!
何か凄い事になってるね!
ところで”デート”楽しかった?
「デートじゃない!
そんな事より”この2人”も宝の探索に巻き込んで大丈夫か?」
「「!」」
驚くマルタとクロノス。
ピコピコ
お知らせ: OK!
「「「「軽っ!」」」」
「て、事だ。
これでお前らも共犯だからな!
まあ、心配すんな!”K”がバレないようにしてくれるみたいだしな」
コイツらにはすぐバレたけど…。
ピコピコ
お知らせ:
ゴメン、ゴメン!
2人のデートが気になって、気になって。
次はちゃんとやるから心配しないで!
「心を読むな!そして”デート”じゃない!」
ピコピコ
お知らせ:
遥くんはつれないなぁ。
ね、ヒカリちゃん。
「…えっと…」
ヒカリが戸惑う。
「何故自分まで!?」
「そ、そんな私はお嬢さまと”2人”で宝探しをしたいのに…」
…俺以外の3人が戸惑っていた。
※
「…それで、マルタ中佐。
その姿はどう言うつもりだ?」
俺はマルタの姿を確認する。
サングラスに革ジャン、そして筋肉ダルマ!
まさにターミネ…いや、これ以上はやめておこう…。
「はい?」
「だから、何でその姿なんだって言ってんの!?」
「は!それは閣下にバレないように”この姿”で目立たないよう変装してみました!」
「余計目立つわ!何で”サングラス”なんだよ!?何で革ジャンなんだよ!?て言うか暑くない!?」
「は!非常に暑いです!
何故”サングラス”かと問われれば”尾行”と言えば”サングラス”だから、何故”革ジャン”かと問われれば”尾行”と言えば”黒”かと愚考したしだいです!」
「本当に”愚考”だわ!」
汗をダラダラ流しながら熱弁するマルタ。
見ていて暑苦しいことこの上ないな…。
「…遥くん、もう許してあげたら?」
ヒカリがマルタに救いの手を差し伸べる。
「ふぅ…わかった。
今回の件は”不問”にしよう…。
だから、いつもの姿に戻れ…」
「えぇ…、それはやめておいた方が…」
「何で?
お前だって”暑い”だろ?
めっちゃ汗かいてるし」
「いや、でも…」
マルタはチラチラとヒカリを気にしていた。
「いいから!暑苦しいんだって!」
「…分かりました。少し席を外します」
※
「…誰よ!?」
ヒカリは目を見開きマルタを凝視していた。
「あぁ、マルタだよ」
マルタは”美人秘書バージョン”で戻ってきた。
「…マ、マルタです」
ガタッ
「き、貴様!マルタ中佐か!」
突然クロノスが立ち上がり叫ぶ。
「「知ってんの!?」」
俺とヒカリの声が重なる。
「えぇ…”惑星ステイトの戦姫”マルタが何故ここにいる!」
マルタを睨むクロノス。
”惑星ステイトの戦姫”て何だよ。
ちょっとカッコいいじゃないか。
「私を知っているとは…あなたは何者ですか?」
ガバッと変装を解くクロノス。
そこには燕尾服を着た長身のクールイケメンが立っていた。
「あ、あなたは”惑星ジシオの黒き悪魔”クロノス!」
睨み合う2人。
「お前ら”ポンコツ”過ぎるだろ!
名前で気付け!そして、その”惑星シリーズ”やめろ!」
「ふっ、”惑星地球の小さなポンコツ”遥は黙っていてもらおうか」
「嫌な二つ名つけんな!」
こいつぶっ飛ばしてー。
「クロノス、落ち着いて!」
「失礼しました。”全銀河の白き天使”ヒカリ様のご命令とあらば…」
「その”二つ名シリーズ”もやめて!」
「マルタもステイだ!」
「私は犬か!」
もうこのカオスな状態、どうにかしてくれ!
※
ようやくポンコツな2人を諌め、再び4人で席に座りなおす。
「…ねぇ、マルタさん。
改めて聞くけど、あなたと遥くんの関係は?」
満面の笑顔で質問するヒカリ。
何なの、その殺気!?
「ヒッ…、そ、その秘書兼ご、護衛です」
”惑星ステイトの戦姫”がマジびびりです。
「ふーん、それにしては随分仲良さそうね?」
め、目が怖すぎる!
「け、決してその様なことは!」
必死だな、マルタ。気持ちは分かるけど。
「ただ、業務の関係で一緒にいる事も多く…その様に見えてしまうことも無きにしも在らず…みたいな…?」
おい!それ煽ってる!
「へー、ずっと一緒にいるんだ?へー」
そこに空気を読まないクロノスが口を挟む。
「よろしいではないですか?お嬢様
そこの”小さなポンコツ”が誰と仲良くしてーー、ヒッ!」
ヒカリの目がクロノスを捉える。
「あなたは口を挟まないで」
「し、失礼いたしました!」
”惑星ジシオの黒き悪魔”て…。
「ねぇ、遥くん」
こ、怖すぎる!
「…は、はい」
「良かったわねー。こんな美人が”ずっと”側にいてあなたの面倒を見てくれて…」
「ご、誤解があります。
だってこいつの中身は”あの”筋肉ダルーー」
「それに随分楽しそうだし、”私”といる時よりも!」
「え?何を言ってーー」
「さあ、クロノス、帰りますよ」
そう言うとヒカリは席を立ち、呆然とする俺たちを置いて帰ってしまった。
「…あ、あれが”敵の指揮官”…お、恐ろし過ぎる…」
マルタが震えている。
「あ、あのぉ…マルタさん…」
俺はある事に気がついてしまった。
「な、なんでしょうか?」
「…お金持ってます?」
※
結局あいつらの分の会計も払うはめになった(マルタが)。
テラスから出てきた俺たちの姿を見た店長の青ざめた顔は一生忘れられないだろう。
こうして、俺とヒカリの”初お出かけ(?)”はカオスと化してヒカリが怒って帰ると言う予測不能な結末を迎えた。
宝探しも有耶無耶だしなぁ…。
※
翌日 AM8:30
「た、大変です!遥さま!」
大慌てでマルタが部屋に現れる。
「ふぁぁ、おはよう、マルタ中佐。
随分と早いな」
「そんな事言ってる場合ではありません!」
「”惑星リキュール”が陥落しました!」
「へ?」




