デデンデンデデン
2人で何とも照れ臭い雰囲気の中で固まっていると、視線の先に違和感を感じた。
デデンデンデデン
BGMが流れた。
黒のサングラスに革ジャン(革ジャン!?)を着た筋骨隆々の超目立つ大男が身を潜めて、こちらを伺っていた…何一つ隠れてないぞ、おい!
「…ヒカリ、ちょっといいか?」
「?」
俺はヒカリの腕を引いて歩き出す。
一つめの角を曲がり、そこで壁に張り付く。
「ちょ、ちょっと何してるのよ!?」
「しっ!いいからちょっと待って」
すると筋骨隆々の大男が慌てて角を曲がってきた。
「おい…」
目の前の大男に声をかける。
「っ!」
「ここで何してる…マルタ中佐」
マルタはそのまま逃走体制に入る。
「アイル ビー バッーー」
「言わせるか!」
俺はマルタの頭をはたいた。
※
「何してんだよ…マジで…」
とりあえず俺はマルタに正座させた。
「す、すみません…」
サングラスに革ジャンの大男が、中肉中背の男子高校生に正座させられていると言う、非常にシュールでレアな光景に人だかりができる。
「ちょっと、遥くん!目立ち過ぎ。
場所を変えましょう…」
「…そうだな」
俺はマルタを引っ立て歩き出そうとする。
「ふぅ、しょうがない。ちょっと待っててくれる、遥くん」
そう言うとヒカリは群集を掻き分け、ある老婆の前で立ち止まる。
「何をしているのかしら?クロノス」
クロノスと呼ばれた老婆は一瞬たじろぐも、優雅に挨拶をした。
「これは、これは、お嬢さま。
ご機嫌麗しゅう。
しかしよくお分かりになりましたな。
完璧な変装だと自負しておりましたのに…。
流石はお嬢さまです」
ヒカリはプルプル震えている。
「こんなに大きな”おばあちゃん”はいません!」
胸に7つの傷を持つ男が同じような事言ってたなぁ。
その老婆は190cmはありそうだった。
こうして4人は連れだって近くの”カフェ”に行く事になった。
※
「いらっしゃいませ!何名さまで…す…か…」
店員は4人の異様な組み合わせにドン引きしていた。
高校生2人とターミ○ーター、デカいババァ。
そりゃあ引くわ!
「と、とりあえず4人です!」
俺は慌てて答える。
「…は、はい!で、ではこちらにどうぞ…」
流石はプロだ、すぐに気持ちを切り替えてきた。
俺たちはテラス席に案内された。
デカいのが2人いるための配慮だと思われる。
席につき、しばらく沈黙が続く。
すると先ほどの店員が現れる。
「ご、ご注文がお決まりでしたら、お伺いします」
場の空気に圧倒されながらも頑張る店員のお姉さん。
ホント、ごめんなさい!
「あ、俺はアイスコーヒーで」
いたたまれなくなり、慌てて注文をする。
「じ、自分も同じ物で…」
マルタも同じように感じているのか、身を屈め、小さく手を上げる。
「お嬢様に合った”一流”のコーヒーをお願いいたしますよ」
空気を読まない”バカ”いた。
「は、はぁ…」
固まるお姉さん。
「ちょっと、やめなさいよ!
あ、ごめんなさい!私は”普通”のコーヒーを…」
「おや、おや、それはいけません。お嬢さま。
お嬢さまの様な”一流”の人間は”一流”のコーヒーを飲まなくてはいけないのです」
何言ってるんだこのババァは。
恐らく本人以外のこの場にいる全員が思ったことだろう。
「君、無いのであれば”私”がお嬢さまに”一流のコーヒー”を入れる。厨房を貸したまえ」
「やめなさい!」
ヒカリがババァの頭を叩く。
※
テーブルにコーヒーが並ぶ。
ちなみに運んできたのは”店長”らしき男だった。
きっとお姉さんは限界だったのだろう…お疲れ様でした!
「”何をしてたのか”は聞かない…」
俺は2人を睨む。
「”どこから”見てた!」
マルタは項垂れ、クロノスはそっぽを向く。
「答えろ!」
「じ、自分は”豆の木”あたりから…」
「全部じゃん!余す事なく全部見てんじゃん!」
「は!」
「”は!”じゃない!
で、そっちの”クロノス”だっけ?お前は?」
俺はクロノスを見る。
「…貴様に話す言われはないな」
「こ、こいつ!」
「言いなさい、クロノス」
「余す事なく全部です。お嬢さま」
ペロっと簡単に暴露するクロノス。
「し、しかし仕方ないではありませんか!?
敵の指揮官と会うとなれば、自分としては偵察せざるを得ません!」
マルタが言い募る。
「そ、それはそうなんだけどさぁ…、そんで偵察した結果、どう思った?」
「は!普通に”デート”かと…」
「「デートじゃない!」」
2人で声を荒げる。
「しかしお嬢さま、私の分析結果でも、断腸の思いではありますが”デート”だと…」
「っく!わかった…百歩譲って”デート”だとしよう…」
「遥くん…」
何故嬉しそうな目で俺を見る、ヒカリ!
「なら”会話”は!?
”会話”の内容はどこまで知ってる!?」
クロノスとマルタが目を会わす。
「「余す事なく全部聞いてました」」
俺とヒカリは机に突っ伏した。
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