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第六話 うまい肉を少女と食べてみた

 取り出した肉をどうするのか考える。


「直火焼きでいいかなぁ。少しぐらい何かした方がいいかな?」


 まぁ周りに何も道具がないから直火しかないけど。


 そういえばアルルクは冒険者らしいから人間の町にも行くよね。癪だけどそこで料理器具をそろえた方がいいかもしれない。


 料理の腕前はある程度あると自負している。なんでかって?奴隷時代に作りまくったからだよ。三ツ星料理をね。


 あの時はあまり公開されていなかったけど、働かされていた店が急成長したのは私のお陰と言っても過言ではない。


「よし、アルルクが持ってきた枝に串刺しにして…………」


 まって衛生面どうしよう。そこら辺に落ちていた枝を火の燃料にするのはいいけど食品に指すのはなぁ。


「アマリスさん。持ってきましたよ」


 後から声をかけてきたアルルクの手には数十本のいい長さの木の枝。


「ありがとうね。それとさん付けしなくていいよ。見た感じ同い年だし」


 わかった。と頷きと返事が来た。あ、そういえば――


「アルルクって水魔法使える?」


「一応使えるけど…………」


 よかったよかった。これである程度は肉や枝の水洗いができる。火の熱で細菌ぶっ殺すつもりだったけど一応ね。


「よし、それじゃあ――」


「アマリスってエルフ族だよね?魔法が得意な種族って聞いたけど使えないの?」


 ぐはっ。痛いとこ突かれた。


「いや、使えないことはないけど弱いっていうかカスほどしかないっていうか」


 私はエルフの中で特に魔法の才がなかったから忌み嫌われていたんだよね。


「まぁそういうことだから。私がやるよりアルルクにやってもらった方が効率がいいの。お願いできる?」


「もちろん!それじゃあ初級水魔法の『ウォーターボール』でいい?」


 うん。ちょうどいいね


「全然大丈夫。それをずっと流す感じでお願い」


 アルルクが両手を前に出し詠唱を唱え始める。


「水の神ウルボフよ、我が呼ぶ声に応えよ。全てを癒し、全てを消し飛ばせ――ウォーターボール」


 アルルクの掌から、まるで空気中から集められるように小さな水の玉ができていく。それは拳ぐらいに大きくなったところで波もなく空中で佇む。


 久しぶりに詠唱聞いたけど、『ウォーターボール』は水魔法の中で一番簡単な魔法にもかかわらず壮大に唱えるからびっくりする。まぁ他の魔法もこんな感じだけど…………


「じゃあいきますよ」


 洗いやすく調整をしながら放ってくれている。私はアルルクに負担を掛けないように素早く終わらせる。


「よし。もういいよ、ありがとう」


 次は火起こしだがこれは魔法を使わなくても大丈夫。なんでかって?火起こしのプロだからだよ。


 慣れた手捌きで木の枝を組み立てて原始的だけど摩擦熱で火をおこす。


「ここからは耐久だなぁ」


 木の表面を少し削ってそこに木の棒を置いて高速で回す。


「そのやり方って物凄く時間がかかるやつじゃないですか」


 アルルクからの的確な突っ込み。


「まぁ大丈夫だって」


 一回目の一回し。


 パチッ


 ん?今火花が見えた気が…………さすがに気のせいかな。


 二回目。三回目。四回目…………


 どんどん速くしていく。


 パチッ…………パチッ……パチッ…パチッ


 ボワァ!


「「…………え⁈」」


 一瞬で火が付いた。時間にして十五秒ほど。本当なら二、三時間かかってもおかしくはないのに…………


「凄いね…………」


「だね。ここら辺の木はよく乾燥していたのかな?」


 アルルクの視線は炎ではなく私に向いている。


「違うよ。あそこまで速く棒を回せる人なんて見たことがない…………」


 高速で回していた?そうだとは思わな…………服のせいか!


 まぁこの服は『ウェポンジェネレート』で作ったからそりゃ身体の補助もしてくれるか。戦闘服というか武器服だしね。一応ごまかしておこう。


「それはただの特技だよ。それよりこの火種―—もう十分燃えている――を移さなきゃ」


 そう言ってから火種をアルルクと一緒に運ぶ。よし、料理の準備はあと肉の血抜きとそれを串に刺さなきゃ。


「血抜きした肉ここに置いておくから。そこの洗った串に刺して火に近づけておいて」


 肉を触る。あ、もう水洗いしたから大体血抜けてた。


 アルルクと一緒に肉を串にさして火に当てる。


 …………。


「よし。いい感じだね」


 串を一本取る。そして細部までよく見て焼けたことを確認する。


「でも、一つ欲しいと言えば調味料か…………」


 私はいつもただ茹でたジャガイモしか食べてなかったから解放されてからはしっかり味のついたのを食べたい。


「持ってますよ。塩」


「え⁈本当⁈」


 人って塩かければ大体なんでも食べれると聞いたことがある。私は奴隷出身のエルフだけど。


「はいこれ。自分の好きな量かけてね」


 アルルクが背中の腰あたりにあった小袋を開け私達の真ん中に置いた。


 少し濁っているけど結構白い。どうやって作ったんだろう。


 一振り焼けた肉にかける。そうしたら一気に美味しそうに見える。


「じゃあ――」


 パクッ


 う~ん。肉でさえ貴重だったのにそれに足して塩とか贅沢すぎる。


 数日間の空腹と脂の甘味、赤身の噛み応えが相乗効果を発揮して物凄くうまく感じる。これが至福の一時って言うんだね。


 アルルクの方をチラッと見ると、こちらもこちらで垂れそうな頬を必死で抑えながら食べている。あんなにうまそうに食べられると気分がいい。なんせ、三ツ星で働いていた時は客の顔が見れなかったからね。


 一食分と思って切り分けていた肉が一つ、また一つと私達の腹に収まる。塩って便利だね。


 牛の肉を半分食べたところでやっとお腹いっぱいになった。


「お腹いっぱい…………よし、そろそろ行こっか。その依頼の場所ってここからどのくらい?」


 立って背伸びをする。あぁ、美味しかった。


「あともう少しってところだね。歩いて半日か一日ぐらいで着くと思う」


 そんな感じね。じゃあ、一回野宿挟んで休憩して万全な状態で戦いに臨むって感じでいいかな。


「わかった。早速歩き始めよっか」


 そして目指すはゴブリン退治して人間の町へ!

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