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第四話 悪人殺して獣人少女助けてみた

「『フェイズダウン』―—『ウェポンジェネレート』―—」


 同時に発せられたそれは失敗することなく成功する。(『デバックモード』は発動していない)


 四人いる猿共の背後の空間と私の目の前の空間がつながるように裂け目が発生する。


『フェイズダウン』によってできた裂け目は復讐への第一歩を踏ませてくれるように薄く白く光っている。


 そして自分の両手の先にはくすんだ銀色を放つ鉄甲(メリケンサック)が装着されている。


 別に鉄甲にしたいと思ったわけではなく、ただあいつらの顔面をぼこぼこに殴ってやりたいと思ったら『ウェポンジェネレート』がそれに答えてくれた感じだった。


 右手を顔の前に持ってきて何度か開いたり握ったりを繰り返す。


「違和感が微塵もない…………それにしても――」


 よく二つの能力が同時に使えたな…………


 まぁそんなことは今はどうでもいい。


 私は一生の敵である人間を見据える。


「覚悟していろよ…………」


 裂け目に入る。そうしたら景色は一転、目の前に自分より少し大きな男性の背中が見える。


 深く深呼吸する。牛と違って明白な意思がある。しかも物凄くずる賢い。


 私が今からこいつらを殺すんだぁ…………


 そう心の中思った瞬間口がにやけてしまう。私はもう普通のエルフじゃなくなっているらしい。


「ねぇ、人間のお兄さん達。何してるの?」


 後からやさしくそう尋ねると、一瞬ビクッとした人間が振り向いてきた。汚らわしい目を向けないでほしい。


「お嬢ちゃん。どうしてこんなところにいるのかな?」


 真ん中にいる男性がそう言ってきた。その後ろにいる獣人の女の子は何がどうなっているかわからない表情をしている。


「えーとね。あることをやりに来たの!」


 人畜無害そうに振る舞い無邪気な笑顔を向ける。もちろん欺くためだけど。


「そうかい。ほれ、よかったらお兄さんたちと遊ばないかい?」


 はぁ、本当に反吐が出る。近づいてくる人間に対して表情はまだ変えない。


「うーん。どうしよっかな」


 一歩、また一歩近づいてくる。あと少しで…………


「そんなこと言わずに。お兄さん達がいいところに連れて行ってあげるよ」


 舌なめずりをしている。あぁ、早くやりたい…………


 獣人の女の子は頭に情報が追いついたのかさっきよりさらにびくびくし始めた。でも大丈夫、もう安心してほしい…………


 ――もう間合いに入ったから。


 私は隠していた手を拳にし、思いっきり振り上げる。


「…………は⁈」


 一番近い猿の顎に直撃したと思ったが手ごたえがない。というか


 ――もろすぎて何も感じなかった。


 人間の頭は胴体から離れて中空を舞う。顎の部分は粉々になり口の中の上顎がよく見える。あぁ、血しぶきが清々しい程に気持ちいい…………


 胴体の方は首の部分から大量の血を出しながらその場で少し立っていたと思うと膝からがくんと倒れた。


 うつ伏せに倒れたそれを足で踏む。そうしたらとんどでもない高揚感が味わえた。


 この一体だけで体中は返り血だらけ。だめだ、笑いが堪えられない。


「ははは!すみません笑ってしまって。でもしょうがないですよねぇ!」


 後々気付いたが、この時すでに私の理性は半分ほどなくなっていたみたい。


 落ちていく頭を地面にぶつかるまで眺めてから今度の標的を選ぶ。


「こんなの嘘だぁ!」


 1人、猪突猛進してくる馬鹿がいた。よしこいつにしよう!


 手には剣がある。実力はある程度あったチームなのだろうか、剣も普通の鍛冶屋で売ってそうなものではなくオーダーメイドみたいな感じだった。


「そんなに走らなくてもすぐお仲間のところに行けますよ」


 そう言って睨みを利かせる。でも速さは変わらない。


「『フェイズダウン』―—」


 そいつの目の前に裂け目を作る。あの速度だともう回避不能だろう。


 バチンッ!


 小さくそうなってからその人間はまるでもともと本当にそこにいたかのように消える。


「他の人間共、今からいい景色が見れるよ」


 ゴクンの唾を飲み込む人間共。少ししてどこからか叫び声が聞こえる。


 人間達はどこからと探すが私はまっすぐ上を見る。


 一点の曇りなしの快晴に黒い点が見える。それはだんだんと大きくなり…………


「おい、あれアレンじゃねぇのか⁈」


 人間共も気づいたのか上を見上げなら名前を呟いてる。


 まぁ、気付いたとしてももう手の打ちようはないけど


 断末魔ともとれるその叫びが数秒聞こえたと思ったら地面から振動が伝わる。


 そう、不時着したのだ。


「ははは!いい経験になったみたいだね」


 もう聞こえないだろうけど。


 人間の体は原型が分からないほど潰れていて、上半身のあらゆる肉から真っ白な骨が突き出ている。


 衝撃で飛んだ血は少し離れていた獣人の足元まで届く、それをみた女の子は力が抜けたように倒れる。少し刺激が強かったかもしれない。


 人間の下半身に関してはもうどこにもなく砕け散って周りに散らばっている。へぇ、腸ってあの高さから落ちたらあんな感じに伸びて出てくるんだぁ。いい勉強になったなぁ。


 腸以外にも心臓は破裂し、肝臓と肺は骨でくじ刺しになっていて、それ以外は跡形もなく潰れ他の肉や血に交じっている。


 壮観だ。つい頬に手を置いて惚れ惚れしてしまう。


 ついに一人の人間が吐き出す。これほどまでにいい景色なのに…………


 二つの死体を横目にみてまっすぐ残りの二人の人間のところに向かう。


「金が欲しいんだろ?な、な?いくらでも挙げてやるから見逃してくれねぇか?」


 吐いてない方の人間が何か言ってきたが聞く気になれない。どうも汚れた人間の言葉はよく聞こえないなぁ。


「『ウェポンジェネレート』―—」


 私ひとりじゃ持てなさそうな大鎌が出てきた。まさにこれが欲しかった。そう、断罪のために…………


 ピシッ


 時間にして0.1秒以下。人間の首が鋭利な鎌によって切られる。


「え?俺どうなっ――」


 鋭すぎて切られたことに気づいてないみたい。だけどその言葉が終わる前に完全に首が落ちる。


 1人目と同じ結果だが唯一違うのが顔の表情。一人目は涙を浮かべながら白目をむいていたのに対し、二人目は無表情だ。最後の最後まで希望にすがっていたのだろう。


 吐いてしゃがみこんでいた人間がこちらを向く。その顔には恐怖によっての涙が浮かんでいて体がずっと震えている。


 私は武器を解除しその人間に近づく。


「なぁ、人間。お前は奴隷か?」


 他の人間に比べてあまりにも服がぼろすぎる。荷物もこの人間が一番持っているし傷も多い。この傷は動物じゃなくて人間によるものだ。


 小さく何度も頷く人間を見てふと考える。このときはもう理性は戻っていた。


 私は別に憎い人間を殺したいだけであって人間によって痛めつけられた人間を殺す趣味は持ち合わせていない。


「はぁ、よく聞いてほしい。私は君を絶対に殺さない。そして君はこれからは自由だ」


 同じ境遇として優しく言った。


 その人間は私のボロボロの服を見て何を考えたのか緊張していた顔を緩める。


「あ、ありがとうございます」


 半ば走るようにどこかに行ったその人間を最後まで見届けてから振り返る。


「あの気絶している獣人の女の子、どうしよう…………」


 その前にこの血だらけな場所をキレイにしなきゃ

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