第三話 便利な能力使って牛殺ってみました
裂け目でいっぱい楽しんでいたら時間はもう夜。太陽が下がりきって空気が程よく涼しい。
「この肉塊どうしよう」
足元に落ちている五個の肉塊をどう処理するか考える。もと人間がこうなったと思うとざまぁとしか思えない。
「後々実験してみますか」
『フェイズダウン』を使いまくって気づいたことは三つあった。一つ目は瞬間的な移動に特化していること。異次元に行かなくても目に見える、または具体的に想像できるところならば裂け目を目の前に召喚して触るだけで移動ができるということだった。すごくないですか?
二つ目はカバンみたいに収納できるということだった。試しに裂け目に木の棒を入れて、少し移動してから裂け目を覗くと木の棒がすぐ真下にあったから、多分どんなところから入れてもすぐに取り出せるかもしれません。便利すぎますね!
三つ目は異次元と異次元外の時間の経過はどちらも動いていないということ。どういうことかと言うと、石などを外で投げてからすぐに裂け目に入ると石が空中で止まっていて、かといって異次元でも石を投げると途中で止まってしまいました。
つまり、異次元にいる限りどこの次元も時が進まないということです。これが一番やばい気がする…………
二つ目の特徴を信じて肉塊を手で触らずそのまま裂け目に入れる。汚れてる人間の残骸なんて触りたくありませんよ。てへっ
「よし、これでいいかな。そうしたらこれからどうしましょう」
真っ暗になった空を見上げながら手を顎につけ考える。あ、流れ星!願い事願い事。えーと、人間が死にますように!これでよし。
「そうだ!人類を殺そう!」
いい目標ができた気がする。でも、優しい人間はどうしよう。
「うーん。まぁ、その時に何とかなるでしょう。私、完璧!」
楽観視を徹底して生きていくからこういうのもありだよね?そういえば、あの人間が肉塊になった理由がいまだにわからないんですが…………多分私の能力だと思うんだけどいまいち記憶が…………
「まぁいいか!今日はもう寝よう」
お母さんを埋めた近くの木に登り眠り始めた。
「スヤァ…………」
時は過ぎて次の日の正午あたり。
グゥゥ
「お腹が空いた。そういえばお母さんと一緒に逃げる前日から何も食べていなかったなぁ」
腹の虫がさっきからずっとなっている。手でさすり周りを見渡す。
二日目の快晴に気分はいい感じだがお腹が空いて力が出ない。
便利な能力がないのかとスキルの能力一覧をもう一度見る。
「意味はよく分からないけど絶対物騒なものばっかだなぁ…………ん?『デバックモード』って何だろう」
比較的安全そうなそれを起動する。
「『デバックモード』―—っ⁈」
視界が一瞬黒白になったかと思うといつも以上に色鮮やかになる。視界の変化に驚く暇もなく目の前に青い半透明の何かが出現する。
「地図?でも立体的ですね」
それにはここの地形が表示されていて、その中心には青い点―—多分私のことが書いてある。
私を中心として周りに赤い点がポツンポツンと何個かある。
「これはすごい。試しに一番近い赤い点に近づいてみようかな」
私が動くにつれ地形図も動く。
「あれは…………」
数十秒歩いて赤い点の正体が分かった。
「生物に反応しているのかぁ」
少し離れたところにいる草食動物が動くと赤い点も動く。
「でもこれで食料はなんとなりそう」
『フェイズダウン』を使い裂け目に入り近づく。こうすれば相手側は一瞬で近づいたように感じる。こっちの心の準備のためにも早くいきすぎないようにわざわざ裂け目の中で歩いているんだけどね。
「使えそうなのは…………これかな」
ある程度近づいたら、急に草食動物の頭上に表示が出る。
「なんて書いてあるんだろう?『レイジングカウ』?多分この動物の名前かな」
名前以外にも動かないその動物のいろんなところが一部蒼くなる。頭や心臓付近の胸あたり、関節など…………
「もしかして弱点?『デバックモード』すごいなぁ」
ほうほう、と感心してから手を広げゆっくり大きく深呼吸をして他の能力の発動の準備をする。
「よし!はぁぁ!」
異次元から出た瞬間に能力を発動する。
「『フリーズエラー』!」
牛っぽい動物が草を食べながら停止する。時が止まったように…………
「すごい。本当に凍ったように止まった」
未だ「エラー」と言う意味が分からないがやっぱり使うものだね。
止まった牛を少し眺めていたら、体の一部がずれているような気がした。と思ったらそれは他を侵食するように広がっていく。
「やばい、解除!」
牛は解除したにもかかわらず硬直しながら横に倒れてしまった。でも、体のずれは直っている。
口元を覗いてみると泡を吹いている。完全に気絶したらしい。でもこれは好都合、痛みなく殺せそうだ。
まって、殺す道具がない。どうしよう…………『ウェポンジェネレート』?武器生成ってこと?
「物は試しよう!『ウェポンジェネレート』!」
欲しいのは手軽な鋭いナイフだといいけど…………ピッタリじゃないですか。
目の前で生成されたのは銀色で光沢を放っている金属で手持ちが皮で覆われている刃渡りが手ぐらいの長さのナイフが出てきた。
よし、これで牛の大動脈を切ってと…………え⁈頭ごと切れたんですけど…………
「必要以上に鋭いみたいだね」
短い感想を述べてから牛の解体に取り掛かる。奴隷の時に養豚場で働かされていたからなんとなくできる。
肉以外を『ウェポンジェネレート』で生成したシャベルで埋める。
よし、早速この肉を焼きますか!火起こしもやらされまくったから楽勝にできる。
肉を『フェイズダウン』でしまって木の枝を取りに行く。
「誰かぁ!助けてぇ!」
どこからか女性の大きな声が聞こえる。走って向かうと森と草原の狭間の道で女性一人にたいし、男性が複数人で詰め寄っている様子が見えた。
人間同士の争いなら放っておくかなと思ったら――
「助けなんて来るわけねぇだろ獣人の小娘。いいから早く股開けっつってんだよ。痛くしねぇから」
人間の男性の発言を耳にし、頭の糸がプツンと切れた。
――あいつらは殺すべきだ。
私は素早く『フェイズダウン』と『ウェポンジェネレート』を同時発動する。




