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第二話 母を埋めた後になんか能力見つけました

 パッと目が開く。目の前には一点の曇りなしの青空が広がっている。


「私は………死んでしまったの?」


 そう疑問を口にしてしまったが、起き上がった瞬間その考えが覆される。


「………お母さん!」


 目の前にうつ伏せで倒れているお母さんを見つけ駆け寄る。


「お母さんってば起きて。ねぇ、お願いだから起きて。ねぇ…………」


 何度も揺らすが返事は返ってこない。信じたくない。でも現実は残酷だ。


「うぅ…………」


 手に付いた赤い鮮血を目にし抑えられない涙が溢れてくる。


 お母さんの顔を見ると完全に白く青ざめていて脈は一切ない。


「なんでぇ…………どうしてぇ」


 声にならない嗚咽が喉から漏れ出た。もうどうすることもできない。お母さんはこの世を去ったのだ。


 ――憎き人間のせいで


 ふと、ここにいた人間はどこに行ったのか気になる。


 周りを見渡す限り普通の森。風の音しか聞こえない。


「あれは――」


 でも、すぐ目の前にある赤い何かに目が行った。


 少し近づき近くにあった木の棒でつついてみる。


「肉?でも何の…………」


 綺麗に真四角のその何かは肉のような柔らかさがあり、押すと血のような液体が漏れ出てくる。


 周りにもいくつかあり全部で五個だった。ついでに一か所に集める。


 ふと仮説を思いついた。


「肉があった場所と数が昨日の人間共がいた位置と数と同じ…………もしかして」


 ――人間が肉塊になった?


 でもすぐに疑問が浮かび上がる。そう、いったい誰がやったのか…………


 通りすがりの獣か正義を持つ生命体か…………


 けど、流石にこんな感じにするのは残酷じゃ、ない、のかな?…………あれ


「悲しくも可哀想だとも思えない。それより高揚感や感動を感じる…………」


 人間に対する悲しい気持ちが一切湧かない。自分の胸に手を置いてなぜだろうと考える。


 …………………。


 …………。


 ……。


 よく分からないけど別に大丈夫かな。悲しい時こそ楽観視した方がいいかもしれない。


 振り向いて仰向けになっているお母さんの方に向かう。


「今埋葬してあげるからね」


 もう悲しくならないよう自分の胸に拳をぶつけて切り替える。


 無心で地面を掘る。近くの太い枝を使ったりして。


「よし、このくらいでいいかな」


 半日かけてちょうどいい穴を作れて、そこにお母さんを入れようと引っ張る。


 チャリン


 お母さんのポケットから一枚のコインが落ちてくる。何かと思ってそれを拾い上げる。


「娘に神様の祝福あらんことに」


 コインにはそう書かれていた。また涙がきそうになったが必死に抑える。もう泣かないって決めたから。


 普通ならここで形見として持っていくだろう。でも私は違う。なぜかって?


 ――神を憎んでいるから


 こんなことを起こしたのは人間のせいだが、それを知ってか知らずか何もしなかった神をもう信じることなんてできない。


 母と一緒にそのコインも土にしまう。


 そしてお祈りはせず沢山の花を置いておく。中には母が好きだった黄色い花も置いといた。


 焼けた橙色になっていく空を見上げながら次の行動を考える。


「そういえば昨日。頭に響いた声は何だったんだろう」


 自分が殺される直前に起きた現象について考える。たしか、称号が何とかスキルが何とかいっぱい言っていた気がする。


「たしか………『虚誤蟲(エラーバグ)』」


 そういった瞬間目の前に青い半透明の板が浮かぶ。驚きで尻餅をついてしまった。


「いたた。なにこれ、ガラスかな?でも文字が書いてある」


 この世界にはないかくかくした文字が書いてある。でもなぜか読めてしまう。


 個体名:アマリス


 年齢:15歳


 種族:エルフ


 レベル:-1


 魔力:50


 体力:23


 攻撃力:#%!?


 防御力:19


 機動力:31


 称号:『?!#%』


 スキル:『虚誤蟲(エラーバグ)』能力:『シャットダウン』『再起動』『ブルースクリーン』『ノイズガード』『フェイズダウン』『リバースコード』『クラッシュコード』『フリーズエラー』『デバックモード』『エラーログ』『メモリーオーバー』『ウェポンジェネレート』『バグ』



 色々書いてあって頭が混乱しそう。特におかしいのはレベルというのと攻撃力というのと称号というのかな、基準も意味も分からないけど、レベルっていうのがゼロを下回っていたり、攻撃力と称号に関しては文字さえ読めないし。


 スキルって言うのは知っている。貴族の人間達が教会に行ってもらえるという情報だけだけど。


 それにしても能力の意味がさっぱり分からない。全部で13個あるけどこれから使っていけば分かるよね!


 試しに何か使ってみようとする。多分口で言えば使えるはず。


「―—『フェイズダウン』」


 右手の手の平に意識を集中させて試しに選んだものを呟く。


「…………っ?!」


 急に右手の上の空間が歪んだ――というより切れてずれてしまった。


 慌てて手をどかすが切れ目はまだそこにある。試しに木の枝を投げてみよう。


 バチンッ!


 まるで吸い込まれるように消えてしまった。少し楽しいかも…………


 いっぱい木の枝を集めてくる。1つ、また1つと投げていれる。


 また集めようとして空間の切れ目の横にある石を取ろうとする。


「あっ!」


 地面に落ちていた肉塊に気づかず足を引っかけて転んでしまう。


 そして最悪なことに切れ目に真っすぐぶつかる。その瞬間悟ったように目を閉じる。


「…………え⁈」


 次に目を開けるとそこはさっき見て言た光景を全体的に薄暗くしたような光景が広がっていた。


 コロン


 地面にはさっきまで切れ目に投げていた無数の木の枝があり、傷などは一切ついていなかった。


「もしかして…………」


 入ってきた切れ目―—というか裂け目がなかったので新しく作ろうとする。


 今度は手のひらじゃなくて少し遠くに…………よし!


「『フェイズダウン』…………できた!」


 さっきよりは大きめに作られたその裂け目に向かって歩き出す。


 自分の考えが正しければ――


 パチンッ!


 景色は暗かったところから色彩たっぷりのいつも通りに戻っていた。


「すごい…………でもこれ何に使えるんだろう」


 能力の凄さはわかったけど、どれほどかまだいまいちだった。

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