閑話一 人生勝手に終わらせてみた
はぁ………疲れた。
「俺、明日も生きていけるかなぁ」
学校帰りの途中。ふとそう考えた。
まぁ、ポジティブが俺の長所だし元気で生きますか!
歩いていると向かい側から来た人にぶつかってしまう。あぁカバンを落としてしまった。
「すいませ――」
「どこ見て歩いてんだよ!」
厳つい年上のヤンキーが胸ぐらをつかんでくる。
「これは骨折したかもなぁ。慰謝料よこせよ」
まただ。今回は周りに人がいるからもしかして…………
「そこの君。何をしているんだね?」
太っ腹な警官が話しかけてくる。それを見た瞬間ヤンキーは一目散に逃げていく。よかったぁ。
「ああ!待て!」
警官なのに遅い。だけど業務を遂行してくれるだけましか。
「今回も警官に置いてかれた。しょうがないし行くか」
カバンを拾い上げる。一応名札を確認しておく
「桜鷹高校三年の?!#%。よしあってる」
少し前はこの一瞬で盗まれたからなぁ。
「はぁ…………今日も不幸は続くのか」
夕日を眺めながらそう考える。まだ家にも帰ってないし気をつけなきゃ。
毎日不幸続き。昨日は自転車に轢かれ、一昨日は教科書をいくつか盗まれた。まぁどちらも最終的には慰謝料やらなにやらくるんだけどね。
そもそもの話、不幸が起きなければいいんだけどなぁ。
俺思うんだけどさ、絶対に常人じゃ耐えられないぐらいの日々を味わっている気がする。
どうして生きていけるかって?そりゃ簡単だよ。ポジティブに楽観的に生きていけばいいだけ。
両親に殴られても、学校でいじめにあっても、何が何でも「しょうがない」で片付けることを意識してる。
まぁ死んでないだけましって感じかな。
何も起こらないことを願いながら足早に帰路を歩く。
ここから家まではあと五十分ぐらい。交差点もいくつかあると思う。
今思い出すとこんな不幸体質のせいで人に近づけなかったなぁ。つまり誰の役にも立ってないのか。ちょっと悲しい。
夕日の光はもうなくなりかけていた。いつもの店で軽く食事を食べてからもう一度歩き始めた。
「家にはあんまり帰りたくないなぁ」
まぁ帰るしかないんだけどね。野宿なんてしたらあの両親は殺してくるかもしれない。
「…………はぁ」
あぁ、ため息が出てしまった。ダメだダメだ。俺はもっとポジティブでいなきゃ。
いつものように幸せだったあの頃を思い出していたらもう太陽は完全に下がってしまった。
「明日は幸ありますように」
家に着く少し手前の交差点で俯きながらそう呟く。
…………?なんか道路の方からトラックのクラクションの音が聞こえる。
まず顔を少し上げるとそこには歩道用の信号が赤になっていた。そこで気づいてしまう。
一応と横を見ると、回避不可能の位置に暴走でもしてるのか超特急でこちらに向かってくる大型トラック。
「はぁ………やっと終わった――じゃなくてもう終わっちまうのか」
一瞬本音が漏れたがそれはどうでもいい。それより、俺の人生に意味があったのか知りたい。
考える暇もなくトラックは俺に当たる。痛い、痛い…………ただ単に痛すぎる。
「死って………こんな……感じ……なんだ」
意識が朦朧としてきた。一瞬感じた痛みももうない。わかるのは体のほとんどの骨が折れたことと血まみれってことぐらい。
「俺は…………やりたかった…………」
――誰かの役に立つことを
刹那、頭の中に声が響く。助けに来た人みたいではなさそう。
《受託しました。人間、個体名:?%#!の生命エネルギーを異世界に送ります。それに伴い人格を分離し、再構築したものも同時に送ります。この貢献により、人間、個体名:?!#&の魂は進化します》
送るって誰にだよ。まぁこの命が役に立つならいいけどさ。
《失礼いたしました。送り先は…………》
――エルフ、個体名:アマリスです。




