第79話 初めての裏切りと、愛玩妖精の涙
私が慌ててはじまりの部屋に行くと、ノッテはひとりぼっちで泣いていた。多分私にクリアしたイベントを知られないためノッテを置き去りにしたんだ。佐々木さんの初めての裏切り兆候である。
「ノッテずっと一人だったの。寂しかったの。アオの事好きって言ってごめんねえ。お別れいやだよう!」
彼女は一人の時村へ行かないように制限していたので一人でひたすらここで待ち続けていたのだ。
「ノッテ、抱っこしよ。お別れしないからね。ずっと一緒。おやつ食べて落ち着いて。」
私はノッテを抱きしめ、この小さな体温が自分の腕の中に確実にあることを確認した。胸が張り裂けそうだった。可哀想な事をした。
『ノッテとの絆1 犬猫飼養アドバイザー資格』
『イベントノッテとの絆2』
"地球でノッテイベント発生して慌てて来てみたらアオどこに居んの?!ノッテ泣いてる!何日ノッテを放置したの?!"
"りお。すぐ帰るから待って。"
転移陣で帰って来た佐々木さんはギャン泣きのノッテを見て驚く。カリクが急いでノッテと私に走り寄る。
「ごめん、ノッテ。寂しい思いさせた。」
「泣かせたのは私が原因でもあるけど、せめて連れて行ってあげて欲しかった。今イベント中なの?」
私はノッテの背中をさすりながら言う。
「イベントじゃないよ。りおが原因ってどういうこと?」
嘘だ。東の探索イベントで無限ループをしていたと坂本さんが言ってた。ノッテに言われたくないから「イベントじゃない」と否定したのかも。
私は疑いをぐっと堪えてノッテの気持ちを優先させる。
「ちょうど、ノッテと厳しい話をしたところだったから、私と会えないのは自分のせいだと思ったみたい。私が話の内容を口止めしたせいでもある。ノッテ、あの話、アオにもしていい?」
「いいよう。何でも言う事きくし、もう好きって言わないから仲間でいさせてよう。寂しいのやだあ。」
ノッテはしゃくりあげながら私にしがみついた。
「ノッテがアオの事好きだって言うから、ノッテがお嫁さんになりたいなら私はノッテとお別れするって言ったの。アオに置いて行かれて私達両方から捨てられたと思って寂しくなったみたい。」
「ええ?!そ、そうなの?」
「ノッテは、子供じゃない。ちゃんと女の子なの。私達が子供扱いしたからアオとの距離感が分からなかっただけ。アオを好きになると困るからあえて厳しい事を言ったの。でもタイミング悪すぎた。」
例えて言うなら、外国人の大人の女性にカタコトだからと抱っこして撫でて一緒に寝ていたという事だと愛陽は言うけど、永遠は全くそうは思っていなかったみたい。
『それは愛陽の主観でござろう?ケットシーはもともと愛玩妖精でござる。何歳でも関係ないでござるよ。恋愛感情があっても結婚できる訳は無いし、その付き合い方を主であるアオと莉緒が選んだから拙者から何も言う必要は無いと思ったでござる。』
初めての異世界カルチャーショックである。
『アオはノッテの主ではありません!主である莉緒が、ノッテと個人として付き合いたいと言ったので、子供扱いをやめる様進言したまでです。それにノッテは愛玩妖精ではなく仲間です!』
愛陽がいつになく厳しい口調で永遠に言った。
『すまぬ。そこは拙者がアオに弁える様に言うべきであった。仲間と言ったのに置いて行ったのもすまなかったでござる。』
佐々木さんは私にしがみつくノッテの横に来てしゃがみ、ノッテと目線を合わせた。




