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第8話 HPとMPが混入した井戸端会議

憂鬱のゴミ出しである。

イベントではない。

「お父さん、朝ご飯適当に食べといて。ゴミ出してくる」

「ありがとう。気を付けてな」

私は家着用ワンピースに着替え、缶とビンを別にまとめ、エレベーターで降りる。


エレベーターを降りると佐々木さんが。

「おはようございます」

佐々木さんはめちゃくちゃ驚いている。

「ここに住んでおられましたか!お怪我は大丈夫ですか?持ちましょうか」

「いえ、大丈夫ですよ。どこもどうもないです。カリク君元気ですね」

「ええ。ご迷惑おかけしました。普段はそんな事ないんですけど、気に入った人には急にああなるんです。気にいる基準も分からないんですが」

そうか。カリク君には二度と会うまい。私は昔から犬に好かれすぎるのだ。犬が寄ってこない日と言えば、漂白剤を使った日くらいだ。


佐々木さんは童顔丸顔の可愛い系男子。でも思ったより背は高い。170はあるかな。肌は、少し日に焼けているにもかかわらず健康的な明るさで、その栗色のマッシュヘアと相まって、本当に「ひまわりのような」印象だ。

いや、待て。この無邪気な笑顔が自分の可愛さを理解していないわけがない。あざと可愛い系イケメン確定である。


『とりあえず好みは理解しました』

いや違うよ?!彼は私の好みでは無い。

『え。そうなんですか?』

そうね。どっちかと言えば弟枠。

『歳上ですけどね』

いや年齢知っててびっくりだわ。

『もちろん。あなたと接触する可能性のある周囲の人間(セーフティーゾーン含む)の基本情報は、常に更新していますから』

怖っ!!

『ツッコミのテンポが秀逸ですね!参考になりました!』

いやボケだったんかい


二人でゴミ捨て場に向かって歩く。前に集団が。うわー。やだな。早く来たのにこんな時間から居るのかよ。

「どうかしました?」

佐々木さんが立ち止まった私を振り返り言う。

「いえ!」

私は深呼吸し、にっこり顔を作る。

「おはようございまーす。先日はお騒がせして申し訳ありません」

笑顔。笑顔だ。


「あら、関屋さん、あの後大丈夫だった?」

と横井花恵。

「具合悪いって知らなくてキツく言って悪かったわ」

と江本さん。

「自治会も無理しなくて良いのよ。市報配るだけだから、私が代わりにやってあげるわ」

と川口さん。


はあ?ゴミ捨て場井戸端会議女子どもがえらい優しいし。次々と激励の言葉がかけられ困惑する。なにやら虚弱キャラになってしまっているらしい。江本さんの目が一瞬、佐々木さんの方向をチラリと見た気がした。


「いえ、与えられた仕事はちゃんとやります。お気遣いありがとうございます」


佐々木さんがにこやかな顔で割り込んでくる。

「おはようございます。皆さん、ここはゴミ捨て場の入り口なので、少しだけ横にそれて下さると有り難いです」

救世主佐々木様である。


私がゴミを捨てていると佐々木さんがゴミ捨て井戸端女どもに囲まれてひまわりの様な笑顔で話している。

彼はチャーミングイケメンなのでもはやゴミ捨て女どもの格好の餌食だ。


横井花恵(31) HP36

川口八重(32) HP29

江本知子(24) HP41

佐々木蒼太(24) HP67MP5


は?!MPあるんですけど?!


ええ。どういう事か聞きたい。聞きたいけど、全く関係なかった場合変人だと思われちゃう。まさかゲーム内キャラ?佐々木さんがただの金持ちのボンボンではないかも知れない……

私の背中に冷たい汗が伝った。

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