【裏話9】メンヘラ演技と静止画スキル。無自覚な悪女莉緒
坂本隆二(リュー/香坂流星)
俺は関屋さんに会うなり疲れた顔で微笑んだ。
「おはよう、莉緒さん。毎日会えて嬉しい。」
君だけが俺の癒し、そう演じたつもりだったのだが、嫌味と取られてしまった。
いやこの子俺の事心配しすぎでしょ。ならちょっとループ自粛すれば良いのに。
『アオが第一で、自粛はできないんだ。なんかこの子も自己評価低そうだよね?』
いや低くは無いだろ。相当に気が強くてプライドが高そうじゃないか。
「私も会いたかった。仕事捗ってる?」
関屋さんは屈託なく微笑む。
ちょ、不意打ちギャップ演出やめろww待て、この思わせぶりが社交辞令だって?!タチの悪い無自覚系かよ。
(坂本さん好感度上がりすぎて怖いんですけど。)
いや、君の好感度も上がりすぎて怖いからね?!
「莉緒さんのお陰でしばらく遊んで暮らせそう。時間無限すごいな。」
「でもね、坂本さんメンタルやばくなってきてるから本当に気を付けて。今日はお仕事お休みしてリフレッシュしよ。」
関屋さんは俺を元気付けようと拳を握るデスチャーをした。え、めっちゃ健気。
「そうだな!じゃ気晴らしにサイクリングはやめてバスでお城でも見に行く?」
よし、今日はデートだ。どうせアオは異世界だ。バレやしない。
『ハッキングスキルには気を付けてよ?盗聴はリューが本家だけど、あっちも何らかの監視スキルあると思った方が良いから。』
ええ。何それこれ以上縛りきついと困るんだけど。
「そだね。11時半に一旦帰らなきゃいけないんだけど。」
ぐっは!wwここで突き放してくるとかwwしかも遠出できない様にアオに先手打たれてたwww
「ははは。やべー。危なかった。勘違いするとこだったわ。莉緒さんマジで柏木さんとか比べ物にならねー。素でやってるのが本気で凄いわ。俺の観察眼掻い潜って来るとかガチすぎる。」
『リュー好感度ダウン』
(はあ?!なんだそれ!今なんで柏木さんに比べられた?!ガチって何が?!)
「プッw何その顔w自分で分かってないし。」
『リュー好感度アップ』
(ちょ、情緒不安定か!!)
「じゃあ午後行こう。午前中は二人でネットカフェで仕事。仕事こそ俺の存在意義!」
(おい!危ない発想になってるぞ?!)
『緊急イベント メンヘラ演技で力の限り莉緒の気を引け!』
ええ。ちょ、何そのタイトル。
『莉緒たんがメンヘラ大好物なんだ。普通盗聴の時点で気付かない?上に立って世話を焼く事で自己評価上げたいタイプ。マナビも莉緒たんを世話焼いて自己評価上げてる。』
ええ。この子に世話焼かれるの?嫌なんだけど。
"ねえ。アイディアがあるんだけど。"
"んん?"
俺は気のないフリでキーボードを叩く。異世界に打ち込む事で必死で自分を支えているフリだ。何を提案されても無駄アピール。
君が考えつく様な事は既にしてるっての。
"その消えるから無駄って考えが病んでる。残す為に自分がやらない様な行動したらネタにならないかな。坂本さんポジションの人出して、エアリアルの閑話かスピンオフで、坂本の泡沫みたいの書いたら?記憶消えるのに抗って面白い行動しまくるの。"
"ほー。それは面白そう。けど外に出る時間原稿書くペース落ちるからなあ。やっぱりロスかなあ。"
おっと!良さげなアイディアに思わず素になりかけた。
"うーん。外に出た方がネタは転がってそうだけどなあ。引きこもりじゃ地球パート書きづらくない?"
"そうか。最近…確かにネタ切れ"
でもないけどな。マンション盗聴は再開したから。盗聴器の数も増えて今は10だ。常にマックスまで仕掛け、必要な時は要らない分を削除することで凄まじい速度で熟練度が上がる。
"じゃ決まり。でも毎日の自分見てよけい病むなら別の方法考えよ。心配なの。あまりしんどいなら無限やめよ?ね。"
彼女は俺の前腕に手を添え、訴えかけるような瞳で俺を見上げた。
ちょwwやめろww俺を誘惑するなww言い方がメンヘラ慣れしてるのがまたムカつくwww
"ちょ、関屋さんわざとだろ?!マジで怒られるぞ?!言いつけてやろうか。"
俺がそう言うと関屋さんは急にいつもの冷めた美人顔に戻った。
"坂本さん、言いつけるの無し。あの人私が絡むと優先順位分からなくなるから。』
そして、さっきの優しくて可愛い顔とは打って変わって、俺をしっかりした強い目で見る。
"私坂本さんにに全く好意は無いけど、坂本さんの能力がめっちゃ必要なの。"
ぶはっ!きたよ突き放し攻撃!依存させて突き放す有名なDVの手口じゃねーかwそのやり口でダメンズを量産する訳だな?!面白すぎるわwwしかも自分で気付いてないとか罪作りな女すぎるww
"だからツボついてくるのやめろって。そういう利害ハッキリしてるとこ俺超やばいんだわ。"
しかもマナビたんが優秀すぎるのだ。まさか読心を持っているのか?!
『彼は遠回しに価値観が合うと言っていますね。恋愛感情が無くとも素のままで上手くいく相手だと思っているのでは?』
なんなのこの二人の掛け合い。漫才?
『これはマナビたん、無自覚天然を装う莉緒たんにツッコミ役をやらされてるね。』
"何で自分の好感度アップタイミング分かるの?"
"告知してるからに決まってるだろ?でないとふいにイベント起こったら危ない。"
(まじかー。坂本さん切り捨て警戒しすぎ問題。)
『今のメンタルを相談できる相手が莉緒とアオしか居ないんですよ。落ち込んでるから好感度上がりやすいみたいですが、惚れると切り捨てられるのは自覚してるみたいですよ?』
いや俺メンタル結構丈夫だからね?マナビたんもお人好し仲間か?
『リュー自分で気付いてないだけだって。気を付けて。闇魔法がメインとか闇が深すぎる』
ええ?!闇魔法ってそういうやつなのか?!
関屋さんはなんと俺に静止画スキルを共有してきた。
"え?良いの?アオダメだって言ってたし"
"自分で覚えた事にしてよ。それあれば少しメンタルマシでしょ?"
あ、有り難い!!
"ありがとう。もう少し頑張れそう。"
"いや頑張りすぎたら病むからね?"
"ありがとな。"
ちょっとほんわかした気分に浸っていたら関屋さんはおもむろに報酬らしきスマートウォッチをインベントリから出して装着し始めた。来たよ突き放し攻撃。普通今ここでやる?
『好きになっちゃダメだよアピール。アオ一択は本心だから恋愛ごっこ楽しみましょ的な?』
うわー。傷付くわー。でもめっちゃ助かる。利害一致しすぎ。俺も異世界一択だから。
『好感度ダウンと顔が合ってないよ?それどういう技?!』
けどどうやら彼女はうまく使いこなせないらしい。ナビに聞くも職業依存らしい。莉緒はニートだからな。なるほどね。ならアオも警戒すべきだな。
"関屋さん、場所代わってくれる?ちょっと壁にもたれたいわ。"
"大丈夫?寝不足なの?"
"大丈夫。寝不足は職業病だから。"
俺は仕事しながらさりげなく腕がぶつかったフリをしてスマートウォッチに盗聴器を仕込んだ。




