第68話 緊急事態!メンタル崩壊のリューと静止画スキル譲渡
今日は日曜日。私が地球で過ごす日。
佐々木さんは坂本さんの様子を私に言いたがらないので連絡して会うことに。
「おはよう、莉緒さん。毎日会えて嬉しい。」
ついに坂本さんが嫌味をかましてくる様になった。朝のサイクリングでは確かに会っているけれど、彼にとって毎日でも私にとっては毎日ではない。彼の記憶は毎日消えていて、知らない小説が彼のパソコンに増え続ける事に、彼はそろそろ耐えられなくなってきたのだ。
「私も会いたかった。仕事捗ってる?」
私は嫌味を受け流し社交辞令。これは彼が望んだ事だ。
「…あ、ああ。」
『リュー好感度アップ』
は?!
『素直に受け取った様です。言葉選びに気を付けて。』
坂本さん好感度上がりすぎて怖いんですけど。
「莉緒さんのお陰でしばらく遊んで暮らせそう。時間無限すごいな。」
「でもね、坂本さんメンタルやばくなってきてるから本当に気を付けて。今日はお仕事お休みしてリフレッシュしよ。」
「そうだな!じゃ気晴らしにサイクリングはやめてバスでお城でも見に行く?」
『リュー好感度アップ』
ちょ!なんで?!
『ナチュラルに気遣いの言葉をかけるのやめてあげて下さい。彼のメンタルも大事ですけど、弱っているところに付け込むのは良くないです。』
別に付け込んではないわ!!
「そだね。11時半に一旦帰らなきゃいけないんだけど。」
「ははは。やべー。危なかった。勘違いするとこだったわ。莉緒さんマジで柏木さんとか比べ物にならねー。素でやってるのが本気で凄いわ。俺の観察眼掻い潜って来るとかガチすぎる。」
『リュー好感度ダウン』
はあ?!なんだそれ!今なんで柏木さんに比べられた?!ガチって何が?!
「プッw何その顔w自分で分かってないし。」
『リュー好感度アップ』
ちょ、情緒不安定か!!
「じゃあ午後行こう。午前中は二人でネットカフェで仕事。仕事こそ俺の存在意義!」
おい!危ない発想になってるぞ?!
『緊急イベント リューのメンタルを守れ』
ええ…めちゃくちゃ不穏なタイトル。
二人でペアシートに。
"ねえ。アイディアがあるんだけど。"
"んん?"
坂本さんがエアリアルの魔法設定を纏めながらおざなりに返事をする。恐るべきスピードで文字が打ち込まれている。めちゃくちゃタイピングが早いのだ。
"家にWEBカメラを付けたりレコーダー持ち歩いて自分がどう過ごしたかを保存したらどうかな。"
"どうせ仕事してるから音声も何も無いし無駄だろ。"
"ずっと部屋で仕事?今みたいに出掛けて外で仕事したり、公園や海でタブレットで仕事したりできない?"
"しても記憶消えるから無駄だって。"
"その消えるから無駄って考えが病んでる。残す為に自分がやらない様な行動したらネタにならないかな。坂本さんポジションの人出して、エアリアルの閑話かスピンオフで、坂本の泡沫みたいの書いたら?記憶消えるのに抗って面白い行動しまくるの。"
"ほー。それは面白そう。けど外に出る時間原稿書くペース落ちるからなあ。やっぱりロスかなあ。"
ちょっとだけ興味を持ったみたいだけど、言いながら坂本さんはだんだん虚ろな目になる。
"うーん。外に出た方がネタは転がってそうだけどなあ。引きこもりじゃ地球パート書きづらくない?"
"そうか。最近…確かにネタ切れ"
"じゃ決まり。でも毎日の自分見てよけい病むなら別の方法考えよ。心配なの。あまりしんどいなら無限やめよ?ね。"
『リュー好感度アップ 愛情アップ』
"ちょ、関屋さんわざとだろ?!マジで怒られるぞ?!言いつけてやろうか。"
いやいやいや。勝手に好感度上がり散らかしてるのそっちだから。自制して?
"坂本さん、言いつけるの無し。あの人私が絡むと優先順位分からなくなるから。私坂本さんにに全く好意は無いけど、坂本さんの能力がめっちゃ必要なの。"
私は釘を刺す。
『リュー好感度アップ』
はあ?!今ので上がる意味?!
"だからツボついてくるのやめろって。そういう利害ハッキリしてるとこ俺超やばいんだわ。"
言ってる意味が全くわからない。私達の間には利害以外存在しないだろう。
『彼は遠回しに価値観が合うと言っていますね。恋愛感情が無くとも素のままで上手くいく相手だと思っているのでは?』
いや利害が一致してるだけで価値感は全く合わないわ!
"何で自分の好感度アップタイミング分かるの?"
"告知してるからに決まってるだろ?でないとふいにイベント起こったら危ない。"
まじかー。坂本さん切り捨て警戒しすぎ問題。
『今のメンタルを相談できる相手が莉緒とアオしか居ないんですよ。落ち込んでるから好感度上がりやすいみたいですが、惚れると切り捨てられるのは自覚してるみたいですよ?』
なる程ね。
私はリューに静止画スキルを渡した。
"え?良いの?アオダメだって言ってたし"
"自分で覚えた事にしてよ。それあれば少しメンタルマシでしょ?"
なんでダメなのか意味分からない。
『ループ中の記憶を残されるのが嫌なのでしょう。』
理由を聞いても意味がわからん。
"ありがとう。もう少し頑張れそう。"
"いや頑張りすぎたら病むからね?"
"ありがとな。"
『リュー 好感度アップ 愛情アップ』
『報酬 スマートウォッチ リュー好感度大幅アップ』
私はおもむろに報酬のスマートウォッチを取り出して装着した。おお。各種イベント確認にわざわざスマホを取り出さなくて良いとはなかなか高性能。ここまで良いものが出るとは坂本さんのメンタルはかなりやばかったのかも。突発ではなく緊急イベントだったしな。
だけど装着してすぐ、 通知が多すぎてうんざりした 。イベントの発生情報 、好感度アップのログ 、スキル熟練度の報告 ...。
愛陽、これ、どうやったら使いこなせる?
『どうと言いましても、スマホと同じ様にとしか』
"は?!優しさだと思ったらまさかイベントだったのか?!
"うんまあね。"
"俺めっちゃ騙されたんだけど?!危うく絆されるとこだったわ!くっそ悪女!"
『リュー 好感度ダウン 愛情ダウン』
"てかこれ、どうやって使うの?"
"は?どうって、普通に使えばいいんじゃないの?"
"ええ…。"
なんかちょっと嬉しそうな坂本さん。
静止画スキルが余程嬉しかったのだろうか。
メンタルが守られた様で何より。




