第66話 異世界情報を餌に、猛スピードで新作を執筆する小説家
エーテーシーには農地が少ない。
塩害で作物が育たないのだ。
元々、大麦、大豆、キャベツ、アイスプラント、アスパラガス、ほうれん草は元々育てられている。
以前アトソーヌで貰った種、小豆、大根、ブロッコリー、トマト、これらは全て耐塩性が高い。良かった、はじまりの部屋で中途半端に育てなくて。
「海水農業というのがあるんだ。」
彼の書くジャンルが異世界ファンタジーなので、そういう情報収集はよくするらしい。
エーテーシーでは仲間宣言で住民との絆をアップし、錬金術と魔法を教えて少しずつ村人を育てている。
私は農家の皆に話を聞きながら土魔法使いや錬金術師達と協力して農地を作っていく。
私達が全部やる方が簡単なのだが、住民達と協力しないと、維持できない。
イベント以外の時に時間が進むのだから、この村だけでできる様になって貰わないと困る。
お昼に佐々木さんと合流してご飯だ。
「最高か!!!」
海ぶどうとマグロの丼。
なんと、海水で育てる米があるらしいのだ。その米にもち麦を混ぜて炊いたものにまぐろと海ぶどうが乗っている。
漁師さんは結構逞しいらしく、魔法を使って漁をするという。彼らはステータスも高い。
生の魚だからもちろん食べる前にクリーンはする。私達は魚醤より普通のお醤油が好きなので佐々木さんが持ち歩いている湯浅醤油をかけていただく。
「うまっ!」
「美味しいね。」
海ぶどう大好きなんだけど食べる機会が無いのだ。だからめちゃくちゃ嬉しい。帰りに買って帰りたい。
「アイスプラントも好きなんだけどね、あんまり大量に買うとここの人たちが困るじゃない?野菜ただでさえ少ないからさ。」
「そうだね。塩トマトも早く作りたい。僕好きなんだよね。塩分が良くないのは知ってるけどさ、やっぱり好きなもの食べたいよ。」
ご飯を食べ終わり、佐々木さんは支払いの為にコインを出す。
「どしたの?」
私は、じっとコインを見つめていた佐々木さんに声を掛けた。
「いや、安いなと思って。これだけ美味しくて価値に見合わないよね。」
「安くても美味しいものはあるよ。」
ご飯を食べてから、佐々木さんは仕事に戻る。ここでは時間が経つから交代で地球に戻って時間を戻し続けても病まない。けど、坂本さんは大丈夫なのだろうか。
知らないうちに書き上がっていく原稿に、耐えられるのだろうか。
そうして何日かエーテーシーで過ごして、あらかた農業が始められる様になり、私は植物魔法をかけて回っていると、佐々木さんが慌てた様子で走って来た。
「りおりお!ついに第一章が書き上がった。」
「はあ?!早くね?!」
坂本さんは一日悠久のエアリアルを書いたら保存して佐々木さんに渡して、三日アニメ化している方の作品の原稿を書くスタイルだ。こちらは絶対に疎かにしてはいけないからだ。
だからエアリアルは普通はそんなペースで書き上がる筈が無い!!
「いや、いくら何でもおかしくない?」
「実は僕ね、香坂流星に取材されちゃった!全部話したよ!異世界のこと!!」
坂本さんは作品を餌にして情報 を引き出した。彼は裏切りをしているという自覚 すらない 。あまりにも無防備で恐ろしい 。
どうやら最初の異世界イベントはそのまま書くらしい。今後イベントが起こらない場合三章以降は創作になる。
私達は二人で朝に戻る。彼はインベントリの坂本さんスペースにメモリーを入れた。
そして異世界にとんぼ返りする。




