【裏話7】「俺達の作品」盗撮犯から仕事仲間へ、香坂流星が仕掛ける自己肯定感向上策
坂本隆二(リュー/香坂流星)
時間無限をするにあたって俺は自分の部屋に盗聴器を付けたが、時間が戻るのでデータは残らなかった。こうなると、時間進めると分かってる時でないとWEBライターの副業ができないんだわ。小銭稼ぎができない。
収入減るのは地味に痛いな。
夜闇、スキルに熟練度の概念ある?
『権限がありません。』
あるのね。スキルは熟練度又はイベント分岐で派生する?
『どちらかは場合による。』
詳しく言い当てないと情報公開されない訳?
『情報により条件があるんだ。』
なるほどね。成果を確認できなくても実行するだけで熟練度上がる?
『上がる!リュー天才すぎ。』
なら派生で習得した時即告知する設定にして。
俺は引き続き自室盗聴する事にして、自転車を持って憔悴した顔でエレベーターから降りる。
「坂本さん、おでかけですか?」
「ああ!佐々木さん!ちょっと気晴らしに走りに。」
俺は無理に笑顔を作って元気を装う。罪悪感に苛まれるがいい!
アオは正直者だから、俺がウエア着て軽装で自転車持って降りてくるだけで走りに行くと思い込む。マジックバッグを普段から荷物入れにする事で増えたアイテムは分かりづらくさせる戦法だ。
憔悴した表情で出かける事でアオが俺にストレスを与えていると思わせる。だが俺のメンタルはそんなに弱くはない。パワハラとストーカーで散々鍛えられたからな。落ち込む暇あったら次の手考えるから俺。
実家に寄りお古のタブレットを入手。宅配は実家に届く様にした。ちなみに爆買いしても受け取ってマジックバッグに入れてしまえば所持金が戻るのかと思えば、入手したものに関しては所持金は戻らない。マジックバッグに入れないと得たものは消える。
ちなみに所持金をマジックバッグに入れていてもリセット前に得た金はどこかへ消える。そういう稼ぎ方はできないのだ。それをやると引ったくりや強盗してリセットとかやる奴出てくるからな。
人が死んでリセットしたら戻る?
『権限がありません。』
あんま考えたくはねえけどな。
『考えない方が良いよ。』
ペナルティとかある?
『あんまり悪い事する様だと全ての権限を失うから気を付けてね。』
こわ!
例外は食べ物だ。腹に入っても体がリセットされるから体重が増えない。活動エネルギーにはなっているがアオの無限ループに付き合わされて食材に金を払わされ日が経たないから収入がいつまでも無いのでは普通の人間なら破産してしまう。これ作った人は無限ループが一番のチートだと理解しているな。
「ごめんよ母さん、マンションの宅配ボックス狭くてさ。はいこれ。今月分。」
俺は現金を封筒に入れて手渡す。今月分から手渡しにした。
「いつもありがとね。」
「今日兄貴んとこは?」
「今日は行かない。せっかく隆二が来てくれたんだし。」
「急に来てごめんな。久しぶりの母さんの飯うまいわ。」
親孝行もできて一石二鳥だな。どうせ俺は明日も同じ行動をするんだろう。母親の好感度は鰻登りだ。
新しいタブレットで盗聴器とカメラを追加購入したり、別のマンションの監視カメラの映像を盗む。とにかくハッキングスキルをアオより上げたい。マンションのWi-Fiを使うとバレるからカフェや実家で取材活動だ。
『リュー、あっちはプロだからIT関連で勝つのは無理!』
と言っても俺はシーフなんだよな。
パソコンのデータをスキルで隠蔽できたら良いんだが、それはまだできないみたいだ。
俺は時間無限に便乗させてもらう対価として、自分のネームバリューを使って魔法の実装と動画の宣伝を請け負う、原稿料は要らないと伝えた。貰ったものには対価は払う主義だ。
念話だと時間がかかるから、アオへのメッセージを別のメモリに入れて渡す事にしたのだ。その中に考えた悠久のエアリアルという作品の案を入れた。
アオと俺の作品の話をした時、アオが俺のコアなファンで作品をリスペクトしている事は理解した。ちょっとした描写に詳しすぎるのだ。
俺は実はエアリアルのあらすじを考えて書きためていた。盗聴とほぼ同じ内容なのに逆ハックされた時にこれを削除されてはいなかった。
おそらくアオは俺の作品をリスペクトしている。改変の可能性は低い。
アオがもし作品を盗み見ているなら、新作が自分達の話で、俺が初めて書くラブストーリーに興味津々な筈だ。俺は一般人であるお前が俺の新作に関われるんだぞというエサをぶら下げた。とにかく主導権を握られたままでは動きにくいのだ。
その代わり、エアリアルは良いがまほスキだけは公開前に読まないでくれと俺の作品に対する思いを訴えて頼みこみ、その日からまほスキに日付を書き込んだ。ちなみに俺は作品を先に読まれてもパクリ、改竄、ネタバレさえしなければ別に何とも思わない。アオの性格なら読んでしまった作品は必ず買う様な気がする。あいつ、自分を策士だと思っているが、思ったより正直者のお人好しなのだ。
アオは、まほスキを盗み読んでいる事を俺に告げられないから、疑われている事を理解しつつ強気には出られなくなる。そう思っていたのだが、この男、異様に嫉妬深い。どうすれば俺が関屋さんには手出ししないと伝えられるだろうか。
"リュー!おはよう!今日は時間進めるから。"
ループ前後に念話をくれるから、その時にちょっとした会話はする事にしているが、時間が戻ってもアオとの好感度は下がらないらしい。もっと俺と話したいと思わせたい。アオを地球で過ごさせる事で更に勇者との好感度を上げイベント分岐を増やしつつ執筆時間を増やせるのだ。
"おう。おはよう。なあ、エアリアルの事なんだけど。盗聴した内容だけじゃストーリーに深みが無いんだよ。取材させてくれね?"
"え?取材?僕に?"
"そ。インタビュー。"
一般人はこういう言葉大好きだろ。お前の話が俺の作品になるんだ。俺は必死にアオの好感度上げに邁進する。
アオは俺の時間を確保する為に二日に一度と言っていた地球時間を毎日に変更した。思った通り、こいつは俺自身ではなく香坂流星と話したいし過ごしたいのだ。
だがそこから踏み込んでいく。
香坂流星の中身を知っているんだという優越感に浸らせてやろう。ついでにお前の自己肯定感も上げる。お前は自己評価が低すぎる。過剰な嫉妬はそこから来るんだろう。俺が更生させてやるからな。
『イベント 俺達の作品 第一章 進行中』
俺はできた第一章をメモリに入れてアオに渡す。
"第一章が完成した!俺達で書いた小説をアオに真っ先に読んでもらいたいんだよ!"
イベントタイトルをリップサービスに盛り込む。
"ぼ、僕達って。"
"そうだろ?これは俺達の作品だ。"
"僕リューを理不尽に虐げてるのに、こんな僕に香坂流星の作品に関わらせてくれてありがとう…まだ関屋さんとの事、信じる事できなくて、ごめん。"
『アオ 好感度アップ』
やっぱりこいつは正直者だ。
"信じてくれるまで待つよ。"
アオは作品作りに関われた事にいたく感動していたので、更なるサービスだ。上がれよアオの自己評価!お前の生きづらさを解放してやるぜ!
"俺今まで人との関わり絶ってきたけどさ、やっぱり人と作品作るの楽しいわ。俺達、パーティメンバーなだけでなく、一緒に作品を作る仕事仲間だよな?お前も同じ気持ちだと思うのは俺の自惚れかな?"
『アオ 好感度アップ』
"こちらこそ、香坂流星に、リューにそんな風に思ってくれるとかめっちゃ感激なんだけど。




