第61話 変身魔法ゲット!「リューになるから罵って」
はじまりの部屋である。
花さんと坂本さんはパーティ登録をしてもここには来られない。
彼らは地球での私達のパートナーなのだ。
「莉緒さん。」
「は?!?!坂本さん?!?!」
『変身魔法ですね!やはり素晴らしいです!思惑通りリューは役立ちましたね!!!』
「いや坂本さんが香坂流星だって知ってたなら早く言ってよ?!僕めっちゃリスペクトしてる小説家を手下にしちゃったからねぐへへ。」
「やめてw坂本さんの顔でぐへへとかww」
ほんとやめて。その顔で変態の顔しないで。
『わざとですね。怨みが深いです。』
と思ったら佐々木さんはいきなり消えた。
「はぁ?!何で急に帰ったの?」
「違うよりおりお。透明化ゲットしたんだ。」
そう言って佐々木さんが不意打ちで私の手を取った。驚いて強張る。
佐々木さんは目の前に坂本さんの姿で現れた。
「明日昼休憩ランチデートしよ。」
「え、さっそくで引くわ。クレカ使用禁止で」
坂本さんが捕まっちゃうからね。
佐々木さんは私の両手を持って真剣な顔で言った。
「ねえ。莉緒さん。好きだよ。キスしよ。」
「えっ!!は?!何言ってるのアオ。」
「ブッブー!今は隆君と呼んで!恋人同士の練習だから!ね、しよ。キスの練習。」
「はあ?!その顔で迫ってくるのやめてよね!!きもっ!」
「きもっとかwやばい!爽快!もっと罵ってwwストレス解消にいつでもリューになるから!」
何できもって言われて爽快なの?!怖いんだけど!!まさか新たな扉開いたの?!ほんとにその顔のイメージ壊れるからやめてくれないかな?!私が坂本さんに夢中になっていないことを、こんな歪んだ方法でしか確認できないとか、どんだけ子供なの?
『良かったですね。今のは返さないのが正解だったみたいです。』
なんなの!やりづらいんだけど?!
ちなみに坂本さんはガチ好みの顔なので全くキモくはない。ちょっと何考えてるか分からないところはあるし盗聴器仕掛けるくらいだから性格は結構悪そうだ。
悪い男は魅力的だとよく言うが私の好みの問題ではない。ないったらない!異世界に不安要素は要らない。悪い芽は摘んでおきたい。つまりイベントで坂本フラグが立つと困るから派手に折ったのだ。
『めちゃくちゃ言い訳してきて正直引いてます。顔が好きアピールが徐々に激しくなりつつありますね。人間顔ではありません。』
顔以外全く好きじゃないけどね!とにかく私は佐々木さん一択。坂本さんは仲間としてはイマイチというかかなり信用できない。
変身と透明化を貰ってノッテとカリクと練習してたら佐々木さんが呼びに来る。
「りおー。ごはんー。」
「はーい。」
私達は新しい家のキッチンに。
「ええ!なんで中華そばなの?!太るよ?!」
「太っても好きだよ。りおりお。結婚しよ。」
「アオの顔で坂本さんごっこやめてよ!怒るよ!」
佐々木さんがガーンという顔をした。
「けんかだめー。」
ノッテは佐々木さんの横に行って椅子に登って頭を撫でた。
『今のはちゃんと返さないといけないやつだったみたいです。』
『あの悪ふざけの後では仕方ないでござるよ。』
わっかりづら!!!
「新居記念プロポーズだったのに。」
「いや中華そばでプロポーズとかとんこつの臭いでムード台無しだわ!」
だいたい新居建ててからプロポーズとか、公開プロポーズに匹敵する断りづらさがあるぞ?!これは圧力ではないのか?!卑怯だぞ!
OKでもNOと言いたくなる卑劣さだ。
『OKだとついに認めましたね?』
そりゃそうでしょ!彼が一番能力が高い!絶対に手放さないぞ!!
『…また始まった。』
え?!何が?!
「ノッテ、ラーメンがまずくなるから先食べな。」
「わかったー!」
ちなみにノッテのラーメンは特別性。
カリクとノッテ用の鶏を茹でたあとのスープで塩を入れない麺で作ってある。
少しの麺に、丸く縛って茹でてスライスした豚ロースが大量に乗ってある。
いわゆるチャーシューメンの様なものだ。
味見したけどあんまり美味しくない。
動物はこれで良いんだと佐々木さんは言う。
ノッテは最近私達と同じものを食べたがるのだ。
猫ではなくケットシーなので摂り過ぎなければ塩分も香辛料も炭水化物も何食べても大丈夫なのだがこれらは嗜好品だから特に必要でも無いのだとナビは言う。ノッテはよく動き魔力をたくさん使うので適度にすれば肥満の恐れはないらしい。
「ごちそさまー!あそんでくるー!けんかだめよー。」
そう言ってノッテは部屋を出て行った。
私は黙って食べる。
「ごめんよ。ちゃんとやり直すから。」
佐々木さんはクリーンで周囲の香りを払った。
「莉緒さん、好きです。僕と結婚を前提に交際してください。」
「私ら親に交際反対されてんの。」
私は即座に返す。
佐々木さんは黙る。
暫くしてから佐々木さんが口を開いた。
「ここは異世界だから誰も反対しないよ。」
私はピンときたのでわざと声に出して言った。
「永遠、そっちイベント出てるなら告知して。」
『新居でプロポーズ 進行中でござる。』
「アオ、私も好きだよ。やっと二人の家で一緒に暮らせるのほんとに結婚したみたいで嬉しいね。これからもずっと一緒に居てね。」
私はあえて棒読みした。
「ありがとう。莉緒さん。ずっと一緒にいよう。」
佐々木さんは、まるで心から望んだ宝物を、偽物の箱で受け取ってしまったような、ものすごく複雑な顔で言った。だけどこれで異世界でまでフラグが折れる危険は無い。ずっと宣言で追加報酬希望。
『先取り報酬 イベントプロポーズ ペアシルバーリング サイズ自動調整』
凄まじくいらねえ。
ちなみに今のは佐々木さんが悪い。わざとふざけて言ったのだ。先に坂本さんごっこしたのもわざと。ようするに、こういうことをイベントに言わされるのが嫌で、どうしても真面目には言いたくなかったのだ。
私は立ち上がる。
「今日はエーテーシー。仲間宣言と魔法指導と錬金術指導。」
「分かったよ。」
佐々木さんはあからさまに不満気な顔で立ち上がる。
その態度にムカついて、私は思わず素になってしまう。
「あのね佐々木さん、言いたくないの分かるけど、こういう一生の事をふざけて言ったら女は傷つくもんなんだよ。どんだけ子供なの?!不満ならイベントとかしなくて良いよ。そんなに嫌なら全部フラグ折れば?一人でも来れるんでしょ。」
「そんな事言わないでよ!お互いそんな事できないって分かってる癖に!」
「言いたくないのは否定しないんだね。異世界の為だから仕方ないね。彼氏の次は旦那さん役でご苦労様。この際指輪の交換もしときますか?」
私はテーブルの上にさっき報酬で出たばかりのペアシルバーリングを叩きつける様に置いた。
佐々木さんはわざとらしく大きなため息をつく。
「こういうのは、僕の本気のタイミングで、君の心からの返事が欲しかったんだよ。まだ今じゃないと思った。現に関屋さんは、僕がふざけたとはいえ即座に断ったよね?」
「それは佐々木さんがふざけたからでしょ?」
ヒートアップしそうになり、お互いに一度黙った。




