第60話 噂をコントロールする、坂本氏との偽装ロマンス
坂本さんと横井さんは、正式に仲間になった。
絆の為に全員があだ名で呼び合う関係になったんだけど、坂本さんは一回だけりおと呼んでイベントクリアしたっきり念話ではずっと関屋さん呼びだ。私にも念話では名前で呼ぶなと言う。
裏切りを警戒されているのを理解しているのだ。
ちなみに彼らのスマホは異世界仕様になったけどナビはあまり会話に突っ込んではこない。
坂本さんのナビは夜闇、横井さんのナビはもなか。
私達はできた配布物が入ったコンテナボックスをテントに運んだ。そこへ焼き鳥ドリマナールのトラックが。
ふふふ。コッコのお肉をひたすら集めて錬金術で作った焼き鳥だ。このトラックは異世界仕様トラックだが、交通事故は決して起こさないし万が一轢かれても異世界には行かない。坂本さんがちょっと轢かれたがっていたのは内緒だ。
管理人さんが自分の人脈を使う様に佐々木さんも知り合いが居たら注文して良いと言ったのでこの焼き鳥を配ってお金儲け。
ほんとは管理人代理は人脈作りの勉強の為なんだけど私達は早く自立したいのだ!!
「みなさーん。お菓子貰ったら次は焼き鳥並んでくださーい。」
各住人に佐々木さんが声をかけて自治会員が列整理をした。
余りのお菓子が入った箱に見張りをつけて交代で休む。
「莉緒さん、座ろうか。」
「うん。」
彼の指先が、不自然にならない絶妙な距離感で、私の背中にそっと触れた。まるで、周囲の視線から私を守るための見えない盾のように。
佐々木さんが自立できるまでは坂本さんが彼氏の代わりをする。病的な母親の執着や悪意のある噂から私を守る為に佐々木さんと横井さんが決めた。
佐々木さんが昨日の件から急に大人になったのだ。マンションでは佐々木さんは私を無視する。
「ねえ莉緒さん。ちゃんとお父さんと仲直りした?今日来てないけど。」
周りの人がちらりとこっちを見た。
マンションから泣きながら飛び出して行った事が何故か噂になっているのだ。あの時周囲に人は居なかったと思ったのに。
「お父さん今日仕事なの。ちゃんと話したよ。誤解は解いた。噂はしょうがないけど、私は大事な人だけ分かってくれれば良いよ。」
少しずつさりげなく、近くへ座る住人。
桜の写真を撮ろうと木を見上げてカメラを構える住人。
「俺も噂の被害者だから鵜呑みにはしない。それに彼はさ、地位があってライバルが多い。だからこそ、周囲から狙われやすい君を守るために、一旦距離を置いたのは賢明な判断だと思うよ?」
彼の口調には、一切の迷いがない。
彼らは桜の写真を撮るフリをして耳をそばだてる。
「うん。愚痴聞いてもらってごめんね。」
「愚痴とかいつでも聞くよ。君のことは他人事とは思えなくて、ずっとこの機会を待っていたんだ。やっと話せて嬉しかった。」
「ありがとう。坂本さんがちゃんと話し合えって言ってくれたから、お父さんと仲直りできたよ。」
これは私の本心からの感謝だ。この感謝が、彼の計算の中の報酬であるような気がして、少しだけ背筋が冷えた。それでも、彼の完璧な善意の仮面は崩れない。
「これからも何でも相談して。失恋につけ込むみたいなやり方で信用を失うのは本意じゃない。でも、君の隣に立てるのは今しかない。ちゃんと俺が支えになるから。」
「うん。私も努力する。気持ちちゃんと返せなくてごめんね。」
「真面目すぎ。でもまあ、俺も好きになってもらえる様に努力する。そろそろ仕事戻る?」
「うん。きちんと真面目に役員やって信じてもらえる様に頑張る。」
「ああ。俺もそうするよ。まずは信用を取り戻そう。」
佐々木さんは今ハナさんと親しげに話しながら何号室がお菓子と焼き鳥を取りに来ていないかリストを確認して配りに行く計画を立てている。坂本さんがハナさんに声を掛けて私達と交代する。佐々木さんは私達とは一切目を合わさず離れた。ハナさんが佐々木さんを追いかけて桜の下で談笑を始めた。
私は今日の柏木さんの事を念話で言うと、花さんはすぐに皆に共有して警戒を促す。
"ああいうタイプ、男性は騙されやすいけど気を付けて。"
"ええ。花さん、まだそうと決まった訳じゃ"
"いやー俺そういうの分かるタイプだから大丈夫。でもお子様のアオは夢がガラガラと音を立てて崩れていくやつだな!寝込むなよ!"
"えぇ。僕柏木さんにあんまり興味ないんだけど。"
"好感度上げる発言してなかった?"
"ほんと?!好感度上げるのは結構だけど、あなた優良物件だから騙されない様にね?!このマンションのアイドルなんだから、自覚してね?"
めっちゃ柏木さんの悪口広めたみたいで罪悪感半端ないんですけど!
『報酬 マンションお花見 つくね串100本 イベント検定資格 パーティメンバー絆アップ』
ちょwwももとねぎま売ってつくね手に入れたんですけどwww使い所がねえwww死蔵だなww
"これからはマンションの事は仲間全員で協力プレイだ。僕ちゃんと親から自立できる様に頑張るから。"
と佐々木さん。
"私は役員ではないけど、お節介キャラが定着してるから、そのノリで1年間自治会をサポートしながらアオの信頼を上げて二人がまた付き合える様にするわ!"
とハナさん。
"俺は関屋さんの虫除けになる。アオが復縁できるまで他の男は全部追い払うよ。俺異世界しか興味無いし、この複雑なゲームを『完璧な結末』へ導くためなら何だってやる。君に手を出さないのは、僕のプライドだ。"
と坂本さん。
"私も、役員の間にドリマナール地球支店の営業でお金貯めてきちんと自立できる様にするから。1年間皆協力してね。"
"僕もWEBと動画でしっかり稼ぐ。リューは協力して!"
"もちろん!この三角関係、最高のプロットだ。その代わり、小説のネタに使わせてよ?"
"皆で頑張りましょう!"
四人の方針は、私達二人の自立だ。




