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第19話 佐々木蒼太と貸し借りなしバトル

ピンポーン

「はーい!」

「佐々木でーす」

宅配じゃなかった!!

「お裾分けでーす!!頂き物のまりひめなんですけどぉ」

ええ!この人の距離の詰め方怖い!この人、笑顔で恩を売るのが得意なんだ!


「ちょ、ちょっと待ってねー」

私はビニール袋二つにりんごと玉ねぎを別々に入れた。りんごは他の野菜や果物を早く傷ませちゃうからね。


玄関に置かれた箱の中には、紅くて艶やかな高級イチゴがぎっしり。一パックだけでも高そうなのに、それを4パックも入れた箱を押し付けようとしている。

「佐々木さん。こんな沢山貰えません。とりあえず1パックで良いので」

「ええ。うち親父糖尿病なんですよ。うちにあともう二箱あるんですよ。助けてくださいよ」

まりひめ三箱くれる人ってどういう相手だ!

「うちも父親が糖尿一歩手前なんですよ!」


ちなみにいちごの糖質は一個0.9g、5Kcalなのでそんなに高くはない。だが二人暮らしのうちでは消費期限の問題がある。


「ではこれお返しの玉ねぎとりんご」

「ええ。ちょ、りんごの方がカロリー高いじゃないですかあ。だめですって。玉ねぎだけ頂きます」

詳しいな!いちごは31Kcal、りんごは54Kcalだ。糖質は知らない。


「じゃありんごやめてトマトにしましょう」

と言ってキッチンに戻りトマトとキャベツとブロッコリーを段ボールに入れて持ってくる。

「えええ。多い多い。どうしようこんなに。増えちゃった。ていうかこれ持って走れるって関屋さん何なんですか?」

佐々木さんがめっちゃ引いている。


「これと鶏胸肉食べてたら問題無いんで毎日お父様に食べさせてあげてください!私力持ちなんで管理人室まで運びます」

「いやいや。そんなわけにいかないですって。ちょっと台車持ってくるんでしばらく置いといて下さい。気を使わせて申し訳ない」


この人絶対貸しを作って終わりたいマンだ。

私もそうだからこれは永遠に終わらないバトルになってしまう!しかも二回目の時カリクは大人しかったから別に私は怖い思いをしていないのだ。

私は過去に「貸し」をタネにプライベートに踏み込まれた経験がある。絶対に対等な関係を維持しなければ。佐々木さんの「親切」は、笑顔のトラップだ!このお返し合戦、絶対に負けられない。


『イベント いちごを持って公園にいきましょう!』

おい待て!!あからさまだな!!!この短期間で、これだけイベントが連発するのは異常だ。好感度アップ、イベント報酬、ナビの指示。これは偶然の接触じゃないのかも知れない。

よし、ならば受けて立とう。ミッション達成を最優先する!効率よく好感度を稼ぐぞ!


「あのう。佐々木さん」

「はい?なんでしょう」

「このいちご持って公園にピクニック行きません?」

「ええっ!!良いんですか!!やばいめっちゃ嬉しい!」

ええ!佐々木さん友達いない系ですか?私もだけど。

「マジで?ホントに?やったー!」

と、彼はまるで幼い子供がおもちゃをもらったように興奮している。この歓喜の反応、社交辞令じゃなくて本気だ。友達いない系確定である。


「じゃあ洗うんで、管理人室で待ってください」

「いや!うち二箱あるんでうちから持っていきます!絶対にそれ持って来ないで下さいね!!ここで消費してください!」

「ええ!それじゃこっちが減らないんですけどお!」


これさ、貰ったって父親に言わなきゃいけないからインベントリ入れられないんですよ!!

とにかくいちごを冷蔵庫に入れて野菜のダンボールをさげて管理人室に。


「ええ!なんで非常階段からこのダンボール持って降りて来たんですか?歩くのめっちゃ早くない?しかも汗ひとつかいてないとか!」

いや、ダンボールはさっきインベントリから出しました!

『持って降りるのは危ないですからね!』

佐々木さんはめっちゃ引いている。


「任せてください!鍛えてるんで!」

「いやいやその体格でどう考えてもおかしいって。関屋さん虚弱体質じゃなかったんですか?!」

だから違うと何度も言ってますが!!


私達は二人で公園へ。

なんと、佐々木さんはいちごを使い捨てパックに入れてくれてある。一個一個へたを切ってピックを刺し、練乳ポーションを付けてくれてあるのだ!!信じられるか?!ポーションだぞ?チューブではなく!さすが金持ちだな!!


「これ、母がこうやって冷蔵庫に積んであったやつ二つ持って来ただけなんで」

私が練乳ポーションを眺めていると佐々木さんは苦笑した。


「いちごくれた人がそれを5袋もくれたんです。そういう物のくれ方する知り合いが居まして。僕ら三人家族だから毎回消費に困っちゃって」


たまに居るな。相手が消費するペースじゃなくて、自分があげたい金額で生ものとか平気で渡す人。


さては貰った相手にバレない為に私という面識の無い相手を選んだな?

「むふ。おいし。あまーい。練乳無しで良いわ」

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