第99話 愛の確かめ ――完璧なハッピーエンドの作り方
「セクハラ受けてたんだって?」
「は?!え?」
リューはのじまんちで話した内容を全ては私に言わなかった。だが実はリューとパワハラの話になった時、セクハラですごい嫌な思いした事を私は泣きながら話したらしい。でも襲われた訳でもないからどうしても言えず、社内いじめに病んで、仕事を辞めた。
リューはそれをその日のうちに文字に残し後日アオに話したという。だから車の練習で威圧して泣かせた事や、泣かせておいて抱きしめて慰めた自分が許せなくてその日はどうしても触れたくなかった。
私の事、地球では仕事を与えて養いたかったし、あのダンジョンに篭った時は夫になるなら絶対に国王になって私を守りたいと思って必死だったけど、話を聞いて自分が下につく事を決めたらしい。
「そういうんじゃないんだけどね。それにセクハラはそんなに凹んでは無いよ。私が病んだのは多過ぎる仕事量になんだ。ミスを連発するダメな自分が許せなくて、自信を無くして、虐げられても当たり前だって思ってしまった。けどそれは正常な判断力を欠く程の仕事量を押し付けられたからだって今なら思えるよ。」
「車で怒鳴った事ごめんよ。それに、僕が君に貢いだのは、お金で圧力をかけただけだったんだ。だから君は僕に対していつも反発しながらも気を遣って引け目を感じていたんだね。息苦しい思いさせてごめん。」
アオは幼少期から、何か上手くできた時、いつも親に物やお金を与えられてきたらしい。だから、嬉しいとか、好きとか言う気持ちを伝える時につい物を与えてしまう。それしか愛し方を知らないからだ。
「親が子供に対して分かりやすい報酬で達成感を育てる事が悪いとは言わないよ。でも友達や恋人とお金で繋がると、お金が無くなったら別れる事になるからそれは悲しい事だと思う。人は貰えてたものが貰えなくなると不満を感じるものなの。一般的に友達にお金をあげるのが非常識なのは、やっぱり不都合があるからだと思うよ。私何が悪いとかうまく伝えられなくて地球でお別れする事になってごめん。異世界では、ずっと一緒に居てほしい。」
「うん。分かりやすい言葉で教えてくれてありがとう。今理解したよ。僕も君とずっと一緒に居たい。これからはきちんと話し合おう。地球で自立できる様になったら、改めて君にプロポーズするよ。それまで地球の君のことはリューに任せるけど、絶対変な事しないでね。」
「しないよ。彼は私には絶対に手を出して来ないし、私は結界を張れる。大丈夫だから安心して。」
「良かった。しないの断言してくれて嬉しい。信じてる。好きだよ。莉緒。」
「うん。私も。」
アオは酷く悩まし気な顔で私を見つめた。
唇に、温もり。
『アオ 絆アップ』
『アオ 愛情アップ』
大切に、大切に確かめる様に。
『アオ 絆アップ』
『アオ 愛情アップ』
何度も。何度も重なる。
『アオ 絆アップ』
『アオ 愛情アップ』
ねえ。イベント告知ありがとうね。
ナビ任意の方が私には合ってるみたい。このままでお願い。
彼女は教習所で指示した時、抜け道をついて全ての告知をナビ任意のままにしてあったのだ。
『了解。どういたしまして。』
『アオ 絆アップ』
『アオ 愛情アップ』
『イベント 本音の語り合いと愛の確かめ 報酬 パーソナルカラー検定モジュール1資格 うるおいリップグロス100本 レザーチョーカー5個 18金ピアス3個 アオ愛情アップ 親密度大幅アップ 』
『アオ 絆アップ』
『アオ 愛情アップ』
私は彼の肩を軽く三度叩く。
「そろそろ戻ろ。一応国王と宰相だからね。」
「あっ。ごめ。つい。」
「いい。嬉しかったから。」
私達はこれから、仲間達と異世界を発展させていく。だけどそれは、地球で私が自立して暮らす為なのだと優先順位を切り替えた。
アオは薄々予感がしているのだ。
はじまりの部屋が私の私有地である事。
エーテーシーに創造魔法の形跡があるのに異世界人が他にいない事。
私はテオになってはいけない。
恐らく全て終わった時に私たちに残るのは、魔法でもスキルでもなく、各種技能、資格。
これからの私達の冒険は、技能を身に付ける旅になる。
アオは管理人室のドアを開け一歩踏み出し、笑顔で振り返って私に手を差し伸べた。私は決意を胸に、せめて今はファンタジーの世界を満喫しようと、アオの手を取り歩き出す。
広場には、村人達に囲まれて、珍しくはにかむ仲間の姿が目に映った。
アオ編、最後までお読みいただきありがとうございました! 二人の絆がようやく形になり、作者としても感無量です。 ……ですが、この物語のジャンルは、サイコロジカル・ラブサスペンス。 次話、坂本編。……本当のゲームはここから始まります。




