第90話 恐怖の坂道発進と、優しさのブレーキ
坂本さんは緊急停止はやらなくて良いという。
「とにかく咄嗟の時は考える前にブレーキ全力で踏んで。今日は時間無いからパニックブレーキはまた今度慣れてからな。」
最初は普通にコースを回り、信号と交差点右折の練習。彼は横に乗ってるだけでコース指示しかしない。ダメ出しとかしない。
「よし、ウインカー出して、ここ右折。」
私の大嫌いなクランクだ。
「大丈夫。失敗しても乗り上げるだけだし、いざという時パニックならない様に今失敗に慣れとけ。」
「わ、分かった。」
「萎縮すんな。むしろどんどんぶつけて乗り上げろ。」
「ちょw意味わかんないww」
坂本さんに指示されたタイミングでハンドルを切り何とかクランクを抜けた。
「次は指示しないから。こら、その緊張顔ブサイクだからやめる様に。マイナス一点ね。」
「何それww顔で減点されるの?ww」
「むしろ一番重要だろ?ww」
笑わされて気楽な気持ちで走り出したのにいきなり乗り上げる。
「大丈夫大丈夫。バックの練習できてちょうど良いし。」
私は指示通りコースに戻る。
「でも顔芸したからマイナス一点ね。」
「顔芸とかww」
クランクが慣れて、カーブでいちいち止まらなくても行ける様になったので、S字に。
「今度俺指示しないから、自分でやってみ?」
「うう。分かったよ。」
「はい顔マイナス一点。」
「ちょっとw」
そして何と!S字一発クリアである。
繰り返すも一度も乗り上げない。
「よしよし。いいぞ。慣れて来た。じゃあちょっとバックとUターンの練習したら2周回ってその後坂道な。」
楽しくコースを回って因縁の坂道発進。
「わ、わー。下がる!怖い!」
「大丈夫大丈夫。ブレーキ踏んで。」
「う、うん。」
「下がったらすぐブレーキね。失敗した時被害を抑えるのも大事だから、その練習しとこうか。」
「分かった。」
助手席に佐々木さんが付けたままのブレーキを坂本さんは踏む。
それを合図無しで離して下がりそうになったら私がブレーキを踏む。こんな練習貸切でないとできないし、地球では教習所でないと坂道発進の練習はできないから重点的にだ。
少し慣れたところでいよいよリベンジ。
「クラッチはできてる。アクセルは強めね。」
そして何とかクリア。
「な。慣れたらできるだろ?心配すんな。お前坂道以外で俺にブレーキ踏ませてねーから。」
そうなのだ。坂本さんはブレーキを踏まない。
『貸切だから事故の心配はありませんからね。』
それから、イベントをクリアしない様に線のないとこで縦列駐車の練習、曲がり角バックで車庫入れの練習して終わり。
「よしよし。あとはアオにイベント手伝ってもらえ。今夜は優しくしてもらえよ?」
「ちょww変な言い方しないでwww」
受付で練習が終わった旨話してお金を払う。
助手席に乗り込むと、天の声告知が。
『ドリマナール出店予約を取ろう。ドリマナール出店斡旋サイトでキッチンカー出店予約を取れます。』
と愛陽。
『キッチンカー営業計画書を三人で作ろう。ドリマナール出店斡旋サイト予約時に提出する計画書を莉緒、みつきと作るイベントです。』
と夜闇。
「みつきとこも出てるかなあ。」
「計画書は三人名義のイベントだし、レシピが彼女任せだから声かけてみよう。」
「私達はメシマズコンビだからね。」
「いや、一緒に住んでて飯どころか親の弁当まで全部アオに任せてるとかびっくりだわ。嫁として大丈夫なのそれ?そこを何とかしろってイベントじゃね?」
「夫婦には色んな形があると思うんだけどね。」




