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魔女っ子デネブちゃんの魔法講座

魔法理論をこね回しています。

興味のない方は飛ばして問題ありません。

「実技の前に座学ね」

とデネボラが言うので、宿の個室でテーブルを囲んで講義を聞くことになった。

 参加者は勇者と聖女、それぞれの付き添いとして俺とシスター・フィリスである。

「聖女ちゃんとは初めましてだね。私はデネボラ。魔法の先生だよ。デネブちゃんって呼んでね」

「あ、えと、モモネと言います。よろしくお願いします」

「じゃあ早速だけど、二人とも魔力についてはどのくらい知ってるかな?」

 聖女と勇者が顔を見合わせる。

「私達の世界には無かったので…不思議な力としか」

「使おうとすれば出てくる、体の中に流れてる何か…かな」

「そうだね~、一般的な理解はそんな感じだね。体の中にもあるし、外にもある。魔法を使う時には、術者の体の中にある魔力を用いるのが普通。ところで心身二元論って知ってるかな?」

「聞いた事あります。人は心と体とが組み合わさって出来てる、みたいな?」

「おー、モモネちゃん、よく知ってるね〜。その通り。人間を始めとする多くの生き物は肉体と霊体、すなわち実体と非実体が重なり合い、補完し合う存在なの」

 デネボラが銀の杖で空中に文字を書く。

『肉体=実体 霊体=非実体』

「霊体も色々な分類があって、魂と呼んだり、心と呼んだりするけど、ざっくり言うと、人を構成するパーツのうち、そこに有るのに目に見えないし、さわれもしない物を言うのね」

「え? でもダンジョンでゴーストとか精霊とか、見えたよ? 触りはしなかったけど」

「いいところに気づいたね勇者くん。そう、ダンジョンでは見えるんだよね。なんでなのか、分かるかな〜?」

 期待を込めた眼差しを向けられ、聖女が恐る恐る口を開く。

「違うかもしれないけど…魔力がいっぱいあるから、とか?」

「大正解〜」

 デネボラがパチパチと手を叩く。

「魔力が介在する事によって、実体と非実体とが干渉し合えるようになるんだよ。ダンジョンは魔力濃度が高いから、霊体を目視しやすい環境なんだよね」

 また空中に杖で文字を書く。

『実体 ⇄ 魔力 ⇄ 非実体』

「魔力は実体でもあり非実体でもある、両方の性質を持っていて、双方の仲立ちをする物だと考えられているの。さて、この魔力の使い方だけど」

 デネボラは空中に人の形を描き、その左右に文字を書いた。

 『聖』『魔』

「大きく分けて2種類あるのは知ってるよね。モモネちゃんと勇者くんが得意な神聖魔法と、私や天才くんが得意な古代語魔法。この2つのうち神聖魔法は霊体に偏っているの。発動するのもコントロールするのも術者の心とか魂とか、霊体部分に依存してる。要は願えば叶うって感じで、ふわっとしてるのね」

 デネボラは『聖』の横に『魂』『心』と書いた。

「それに対して私や天才くんが使う古代語魔法は実体に偏ってる。発動するのは指先とか手のひらとかの肉体の一部または杖などの物体。コントロールするのは知性や理性、いわゆる頭脳の働き。勇者くんが苦手な量的制御は発動時の肉体の動作や神経によるの」

 『肉体/物体』『頭脳』と書き足される。

「霊体にも肉体で言う筋肉や神経に相当する仕組みが有って、肉体と連動してるんだけど、勇者くんは神聖魔法に関わる部分がすごく発達してる。そして古代語魔法に関わる部分はあんまり発達してなくて、肉体との連携が取れてない部分が多い。たとえて言うと、すごい腕力で重たい物持ち上げられるのに、指先は不器用で針に糸が通せないみたいな感じかな」

「不器用…」

 勇者がじっと手を見る。

「えっと、それってどうしたら直るんでしょうか?」

 聖女の質問。

「簡単だよ。君たちはまだ若いから。これからいくらでも発達させられる。これは憶測なんだけど、勇者くん、召喚前は瞑想とかお祈りとか、精神的な活動に時間を費やしてて、体を動かして遊んだり鍛えたりはあんまりしてこなかったんじゃないかな?」

 勇者がハッとしたように顔を上げる。

「誤解しないでね? それが悪いって事じゃないよ。心を鍛えるのも大切な事だよ。古代語魔法を使うには、心以外も鍛える必要があるってだけの話なの」

 勇者は俯いて小さく『はい』と答えた。

「最小限の発動は出来てるんだから、量的制御もすぐに出来るようになるよ。デネブちゃんと一緒に魔法神経を鍛えていこう! まずは魔女っ子体操から始めるよ!」

「魔女っ子体操…」

 勇者よ、目線を送られても俺は助けてやれんのだ。

 まあ恥を捨てればなんとかなる。

 道連れ(モモネ)もいるし、まあ頑張れ。

「天才くんと神官さんも一緒にやらない? 楽しいよ」

「用事を思い出しましたので」

 巻き込まれてたまるか。

 身を翻したところをガシッと掴まれた。

 見ると右肩を勇者に、左肩をデネボラに、袖口をシスター・フィリスに、足首を聖女に掴まれている。

 逃がさないってか。

 シスター・フィリス、貴女まで。

 ていうか聖女、何故おまえは足元に縋り付いている。

「本当は暇だよね?」

「やってみれば勉強になるよ〜」

「これも役目かと」

「行かないで。一人で逃げないで」

 4人分の圧が凄い。

「…少しだけですよ」



 がっつり付き合わされた。

 

 

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おじゃまします! 通りすがりの技術者です。  魔法理論いいですね。ファンタジーの中に組み込まれる架空の技術体系。そういうのに萌えます。  魔法を「なんでもできる」にしてしまうと、だいたい話が破綻して…
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