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召喚

『そこにヤツがいる』


 その言葉を合図に一斉に動いた。


 勇者は同じ場所をひたすら刺す、抉る、刺す、抉る、ドスドス刺してガシガシ抉る、一瞬たりとも手を止めない。

 切り口はたちどころに塞がるが、埋まった所をまた抉る。

 ガンファンクル本体に攻撃は届いていない。

 でもそこにいる。

 だから斬る。


 聖女は聖杯に祈りを込める。

「聖杯、お願い、魔王を捕まえて!」

 聖杯から溢れ出す光の帯がゴーレムを閉じ込める檻となる。

 なりゆきで勇者も一緒に閉じ込められているが、気にしない。


 シスター・フィリスはあらかじめ設置しておいた魔道具を起動する。

「アンカー、起動します」

 その数、128個。

 魔王城を取り巻くように敷設されている。

 それらが一斉に稼働する。

 一つ一つの魔道具からワイヤーが射出され、ゴーレムに打ち込まれる。

 元々は土木工事等で使われる固定用の魔道具だ。

 一本のワイヤーがおよそ1トンの荷重を支える。

 魔力に影響されるから、魔王城にどれだけ効果があるかは分からないが。


 全ては『魔王城が動き出した場合、魔王の位置を確認して行う』と申し合わせておいた行動だ。

 魔王を一点に釘付けにするための。


 そして俺は足元に魔法陣を展開している。

 この時のための特別製の魔法陣だ。

 光栄に思えよ、ガンファンクル。

 これを作るのに学会秘蔵のレア素材を惜しみなく投入、デンバー私塾一門と助っ人数名が徹夜だぜ。


『む? 若造、何をする気か知らんが、無駄な事だぞ。そこの剣士は我が防衛機構を突破できない。死霊術で操ろうにも、我が体はデーモンズ・キング・ジョーと一体。この巨体と膨大な魔力を上回れる筈もない。小賢しい女どもが一時的に動きを止めたところで、死霊術師の弟子如きに何ができる。貴様らの魔力が尽きれば終わるぞ』


 長話の好きなおっさんだな。

 しかし肝心な所でヤツは勘違いをしている。

 この魔法陣は死霊術のものではない。


「気分良くしゃべってる所を悪いが、俺は死霊術師の弟子ではあるが、死霊術師ではない」

「僕も剣士じゃない。勇者だ」

「私も小賢しい女じゃありません、聖女です」

「悪魔よ滅びよ」

『誰が悪魔だ。今の世に勇者などいるはずがない。ましてや聖女と同時召喚など不可能、あり得ない、既存の方法ではどうやろうとも』

「技術は進歩してるんだよ、お前が引きこもってた間にな」


 しゃべってる間に俺の術が完成した。

 足元の魔法陣が複雑なリズムで輝きを放つ。

 音の魔道具が叡智の女神に捧げる賛美歌を奏でる。

 シスター・フィリスがそれに合わせて何やら口ずさんでるが、それは別のカミサマの聖句なのでは?

 張り合わないで下さい。


「ヤヌスの扉は開かれた。世界の理を知ろしめす偉大なる叡智の神アルテナの名において術者サーモ・アリーナムが命ずる。元導師ジョナサン・ガンファンクルよ、その全霊をもって速やかに我が前に現れよ」


 俺は天才だ。

 誰が何と言おうと。

 世界の壁の向こう側から選び抜かれた魂を引っ張って来れる男だ。

 すぐ目の前にいる霊体を召喚できないわけがない。

 ヤツのフルネームに始まって個人情報を調べられるだけ調べた。

 居場所の正確な座標も分かった。

 最悪の場合、デーモンズ・キング・ジョーが自律型または遠隔操作された子機で、ガンファンクルは別のどこかに隠れているという可能性もわずかにあったが、それはたった今否定された。

 もうヤツは逃げられない。

 

 出てこい、ガンファンクル!

 閉じこもった殻の中から眩しい太陽の下へ引きずり出されろ。

 俺は…………召喚術師だ!


「『霊体召喚(サモンゴースト)』!!」

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