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そこにヤツがいる!

 勇者VS魔王、第2ラウンドは泥仕合の様相を呈していた。

 何故なら、双方とも近接戦闘の心得が無いから。


 ド素人なんだよ、二人とも!

 戦士ではない俺の目から見ても分かるわ!


 生まれて初めて手にした剣が聖剣だという勇者。

 

 剣の使い方が分かっていないので、勇者の戦い方は身体能力とバフ、そして武器性能に物を言わせたゴリ押しである。

 相手が歴戦のつわ者であれば簡単に捻られてしまうだろう。


 一方、魔王ガンファンクル……が操縦しているであろうゴーレム、デーモンズ・キング・ジョー(どうでもいいけど長えなこの名前)。


 ダンジョンという名のラボに死ぬまで引きこもり続けた、究極のインドア派魔法使いであるガンファンクル。

 こいつも格闘術なんか習った事ないだろう。


 ド素人同士の戦闘なので、技術的には見るべき所がない。

 ただのスケールの大きい喧嘩である。


 そもそもガンファンクルはゴーレムに武器を持たせていない。

 指先のコントロールが難しいとかなんかそんな理由なんだろう。

 ゴーレム自体がデカいから、リーチも重さも十分ではあるのだが。

 素手では戦い方の幅が狭まるのは否めない。

 槍でも持たせておけば何かが変わっただろうに。


 結果的に、左右の腕を振り回して殴りかかるしか出来ないゴーレムを、勇者がかいくぐって斬りつける、というパターンを延々繰り返す事になる。


 ゴーレムの拳は大振りばかりで当たらない。


 一方、勇者の攻撃は的がデカいから当たるが、全て再生機能で無効化されている。 


 共に相手にダメージを与えられない状態。

 長期戦にもつれ込んだら、生身の勇者が不利だが……?


『おのれ、生意気な! 剣士風情がちょこまかと!』


 そろそろガンファンクルがキレそうだ。

 奥の手があるなら出してくるだろう。


「なんかしてくるぞー。バフ切らすなよー」


 まあ俺はヤツらから距離を取って、比較的安全な場所から観察してるだけなんだが。

 一応、いつでも動ける準備はしている。


 聖女は勇者を応援しながら、魔王城から飛び散る欠片を引き寄せてアイテムボックスに回収している。

「私、悟ったよ。掃除とは汚れの移動。汚れが付いててほしくない場所から、汚れてもいい場所へ、汚れを移すんだよね。浄化も同じなんだよ。魔力の偏りを取り除いて、有るべき場所へ移す。これが極意だね」

 と語りながら。

 大丈夫か、なんか疲れて変なモノ見えてないか?


「さすがは聖女様、ご慧眼です」

 シスター・フィリスは勇者へのバフに徹している。

 掛けるタイミングや術の選択が絶妙に上手い。

 冷静沈着な判断力といい、抜群の安定感だ。

 決定打には繋がらないけどな。


『デーモンズアロー!』


 魔王がなんかしてきた。  

 魔力の矢らしき物を飛ばしたようだ。

 勇者の結界に弾き返されてるけどな。

 多分、人間に当たったらシャレにならない威力なんだろう。

 ……少し位置をずらして、聖女の斜め後ろあたりにいようかな。


『デーモンズビーム!』


 ムカデの尻尾からの光線発射だ。

 これも当たれば危なそうだ。

 当たればな。

 勇者の結界は本当に丈夫だな。

 外からの攻撃は一切通さず、中からの攻撃は素直に通す素敵仕様だ。

 いいなあ、俺も神器持てたらなあ、カミサマに好かれてないから無理だけど。


『デーモンズカッター!』


 ゴーレムの腕が刃物に変わった。

 刃が高速で回転し始める。

 あれが当たれば砦の城壁くらいなら穴開けられるんじゃ?


 ただし、拳で殴って当たらないものは、刃物に付け替えても当たらない。


『おのれ、ちょこまかと!』


 一周して同じセリフにに戻ったな。


「じっとしてたら殴られるんだから、避けるに決まってるじゃん」


 勇者の攻撃。

 ムカデの脚から背へ駆け上がり、甲冑の脇腹を斬る。

 もちろんその切り口はすぐに修復されてしまうのだが…。


 今、何か見えた。


「勇者! もう一回同じ所を斬れ!」

「えー、狙ってやるの難しいなー」

「いいからやれ!」

「失敗してもよければ、やるけど」


 ごちゃごちゃ言いつつ、勇者はもう一度斬りに行った。

 多少ズレたが、ほぼ同じ場所。

 その切り口に見えた物で俺は確信した。


「魔王の居場所が分かったぞ! 右脇腹だ! そこにヤツがいる!」


 勇者が斬った切り口から一瞬見えたのは、水筒やら手袋やらが並べられた、ガンファンクルのラボだった。

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