テスト
ケンさんが提案したテストは、サトゥにとって今までの修行とは一線を画す挑戦だった。
それは魔力を外に放出するというものだった。
これまでの内なる魔力の操作とは異なり、外に魔力を放出するのは格段に難しく、今まで以上の集中力が要求された。
「ただ木の葉の端を破るだけのテストだが、これは魔力操作の高度なテクニックだ。慎重に、焦らずに取り組むのだ」
サトゥは木の葉を手に取り、緊張を抑えながら指先で軽くつまんだ。
目を閉じ、静かに呼吸を整えた。
(集中…)
と心の中で呟きながら、魔力を指先から木の葉の端へと導くことに集中した。
最初の試みでは、木の葉に触れている指先にわずかなビリビリとした痺れを感じたが、見た目には何の変化も現れなかった。
「何度やっても同じか…」
とボヤキながら、ふと思った。
「そもそもなんで魔法が使えるんだ?こっちの世界に転移したからなのか?」
「それとも転移した影響で体の構造に何かしらの変化が生じたのか?」
などと考えていると、集中力が切れていることに気が付いた。
再度深呼吸をして自分を奮い立たせた。
「集中しろ、細かいことは後で考える。今はこの一点に全てを集中させなければ。」
ケンさんは静かに見守りながら助言を続けた。
「魔力は精密な操作が必要だ。感じる痺れを指針にして、さらに魔力を細かくコントロールするのだ。」
サトゥは何度も繰り返し、集中力を更に深めた。
「もう少し…もう少しだ…」
自分の手の動きを注意深く観察し始めた。
指の微細な振動、手のひらから放たれる熱、それらすべてを感じながら、魔力の流れを慎重に調整していった。
「魔力は流れる水のように…静かで、しかし力強く。」
と心の中でイメージを描きながら、微妙な調整を加え続けた。
時間が経過するにつれ、サトゥはようやく魔力の微妙な流れをコントロールし始めた。
そして、何度目かの試みの後、ついに木の葉の端が「ビリッ」と破れた。
「やった!できたぞ!」サトゥは驚きと喜びで叫んだ顔には疲れとともに、達成感が溢れていた。
ケンさんも内心で驚いていた。本来ならばこのような精密な魔力操作は、年単位の修行が必要なはずだった。
しかし、サトゥは短期間でそれを達成してしまった。
(彼には想像以上の才能があるのかもしれない…)
とケンさんは心の中で感嘆した。