サバイバルの難しさ
朝、空腹に駆られて森をさまよい始めた。木の実や根だけでは、どうしても空腹が満たされない。高い栄養価を持つ食料源を求めて、小動物や鳥を探し始めることに決めた。目を凝らし、耳を澄ませ、小さな動きや音に敏感になった。
「何か捕まえられるかな…」
今まで野生動物を捕まえたことなんてなかったが、今はそうも言ってられない。
数時間の探索の後、ようやく小動物を発見した。その動物は、ウサギのようだが、耳が三つあり、体も一回り大きい。
「なんて不思議な生き物だ…捕まえられるか?
「それ以前に、食べられるのだろうか?」
動物の動きを注意深く見て、どのように近づけばよいかを計画した。
「そっと、そっと…」
風の音や自分の呼吸を意識しながら、身を低くして忍び寄った。木の葉を踏まないように慎重に足を運んだ。しかし、動物は警戒心が強く、僅かな物音にも敏感だった。
最終的には、木の枝を踏んでしまい、パリッという音が響いた。その瞬間、動物は驚異的な速さで飛び跳ね、僅かな時間で茂みの中に消えていった。
「ああ、逃げられた!」
一瞬のうちに、捕獲の機会は失われた。
手ぶらで立ち尽くし、失望とともにサバイバルの厳しさを改めて感じた。
時計が無いので正確な時間はわからないが、おそらく時間は昼過ぎ。
身体を温め、食料を調理するために火を起こさなければならない。
「火打石があれば…」
周囲を見渡したが、そう都合よくあるわけもない。
レンズを使って太陽の光で火を起こす方法も考えたが、そもそもレンズがない。
「やはり、摩擦熱で火起こしするしかないな」
佐藤は火起こしに適した棒と板を探し始めた。乾燥した、しかし強度のある木を見つけることは、予想以上に困難だった。
「この棒でいけるかな…」
何本かの棒を試してみたが、すぐに折れてしまったり、湿っていたりした。ようやく適当な棒を見つけたとき、少しの希望が心に灯った。
「これなら…」
乾燥した枯れ葉や枝を集め、これが火を起こすための燃料になることを願った。松ぼっくりがあれば最適だが、残念ながら見つけることはできなかった。
「さあ、いけるか…」
棒を板に擦り付け、速度と圧力を上げた。しかし、簡単にはいかない。手が痛くなり、擦り傷ができてしまった。
汗が滴り落ち、筋肉は疲れ切っていた。長い時間をかけて摩擦熱で火を生み出そうとしたが、煙一つでなかった。
「こんなに難しいとは…」
結局、火を起こすことは諦め、生の果実や根を食べるしかなくなった。
時が進むにつれ、空の色が急速に変わり始めた。風が強まり、暗雲が迫ってくるのが分かった。雨が間近に迫っている。
「早く避難しないと…」
急いで適当な避難場所を探し始めた。
最初に見つけたのは、大きな岩の下の空間だった。岩は風を防ぐには十分だったが、雨水が流れ込んでくる恐れがあった。次に見つけたのは、茂みに覆われた低い崖の下。ここは雨をしのぐのに適していたが、動物が潜んでいる可能性があり、危険を感じた。
「ここはダメだ…」
小さな洞くつを発見した。入り口は狭く、中がどうなっているかは分からなかった。奥に何が潜んでいるかも分からず、探検するにはリスクが伴った。
「ここなら…」
他の二つの選択肢と比べ、洞くつを避難場所として選んだ。洞くつの中は湿っていたが、外の風や雨からは守られる場所だった。
「少しでも安全な場所を…」
身を寄せる場所を確保した安堵感と、洞くつ奥に何がいるかわからない緊張感が入り混じりながら、夜を迎える準備を始めた。