夏祭りは誰と?
※『第4回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞』参加作品です。
――今年は良い思い出にできるだろうか?
高校生にもなると、自分の周りでは女の子と付き合うやつが増えて来る。それが歳上の人であれ、年下の人であれ、羨ましい事この上ない。
そんな愚痴が出るくらい、この俺高宮朔は、願う程その存在を造るのが難しいと実感していた。
夏祭りの前後なんていうのは、そういう類の事が起きてもよさそうなものだが、高校3年の夏になったというのにその兆候すら感じられない。
――今年もやっぱりダメかぁ……。
町の中には、夏祭りを大々的にアピールするポスターなどが溢れかえっている。それを見るたびに大きなため息が漏れた。
「なにしけた顔してるのよ!!」
とあるお店の前に貼られたポスターを眺めていると、店の中から声を掛けられた。顔をずらして声の正体を確かめると、クラスメイトの東山葵の姿があった。
「東山……なんでここに?」
「何でって……ここ、あたしの家だもん」
お店から出ている看板には、『東山食堂』という文字が書かれていた。
「マジか……」
「それで? 何をしけた顔してたのよ?」
クラスメイトとはいえ、3年になって初めて同じクラスになった東山とは、話した事はあるが、仲が良いとは言えない関係。こうして2人だけで話すというのも、ほぼ初めてのような気がする。
「コレだよ……」
貼られているポスターを、コンコンと拳で叩きながら、大きなため息を吐く。
「夏祭り? それがどうしたのよ」
「この時期になると、一緒に行くやつが居なくてな。声を掛けてもみんなツレが居るから断られるんだよ。それも毎年のようにな」
――自分で言って情けなくなるが、事実なので仕方ない。
その中にはフラれて一緒に行けないというモノも含まれている。
「なぁに? 一緒に誰かと行きたいの?」
「誰かとじゃなくて、彼女とな」
「へぇ~……」
俺の事を見ながらへにゃっと笑う東山。
「わたしが一緒に行ってあげようか?」
「あん? 冗談か? いいよ慰めてくれなくても」
「冗談じゃないんだけどね」
再び俺の事を見つめる東山。その瞳は真剣な光を帯びていた。
「どうして俺と……?」
「さぁ? どうしてでしょう?」
またへにゃっと笑う。
「ここまで言ったんだから、後は分かるよね?」
「え? ……なんだ?」
「自分で考えなよ。待ってるからね!!」
そう言うとぱたぱたと店の中へ戻っていく東山。振り向きざまに見えた耳が、真っ赤になっていた。
――俺がする事……。
今年の夏祭りは、俺次第でいつもと変わる予感がした――。
お読み頂いた皆様に感謝を!!
調子に乗って2本目を書き上げてしまった(^▽^;)
これもまた何気ない、どこにでもありそうな恋愛の1シーン。
甘ずっぺぇ~!! と感じてもらえたらそれだけでいいです。