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第三十四話

「レオンハルト様……、わかりました。私は必ず術を成功させます。シェリアを必ず救ってみせます」


 さっきまでの緊張が嘘みたいにスッとなくなった。

 頭の中がすっきりして目の前の景色がよく見える。


 レオンハルト様はそのアイスブルーの瞳で私を見つめており、ゆっくりと頷いた。


「おや、いい表情になりましたね。さすがは僕の助手です」

「レオンハルト様が冷静になれと仰るからですよ」

「言ってすぐにできるものではありません。自信をもってください。あなたはいい錬金術師ですし、シェリアさんにとって最高のお姉さんです」


 自信をもってもいいんだろうか……。

 うん。きっと持ってもいいはず。だって私はこの錬金公爵様の唯一の教え子なんだから。

 今ならなにもかも上手くいくような気がする……。


「それでは時間まで私はシェリアと話をしています」

「構いませんよ。いってらっしゃい」


 私はシェリアのもとへ向かった。

 なんせ、せっかくあの子と再会したのに現状の把握と錬金術の勉強でほとんど積もる話ができなかった。


 時間まで少し話して、もう少し気分をリラックスさせよう。



「シェリア、入ってもいいかしら?」

「お姉様? どうぞお入りください」


 シェリアのいる客室に私は入る。

 彼女のロザリオはさらにひび割れて、その黄金の輝きを失いかけているように見えた。


(もうくらいは少し保ってくれそうね)


 私の作った“破邪のロザリオ”を首にかけているシェリアはベッドに腰掛けていたので、私は隣に座る。


「もうお勉強とやらは終わったのですか?」

「ええ、終わったわ。安心して、シェリアを助ける準備は万端だから」

「はい。安心しました」

「あら、随分とあっさりね」


 にっこりと笑って私の言葉をそのまま信じるシェリア。

 この子ったら、本当に安心しきっているみたいね。


 私は自信を持つのに少しばかり苦労したのにシェリアはちっとも不安そうな表情は見せない。


「もちろんです。だってリルアお姉様が助けると仰ったのですから。お姉様は必ず約束を守ってくれる人です」


 なぜか昔からシェリアは私のことを慕ってくれている。

 だからこそ姉らしくこの子の信頼を裏切らないように努めてきたのだが……。


 ゲームでもずっとシェリアは私のことを信じていた。魔王として対峙しても彼女は最後まで私とともに故郷に帰ろうと手を尽くしてくれていたっけ。


 シェリアは大した姉バカだと思う。だからじゃないけど、この子はずっと可愛いままだ。


「ねぇ、お姉様。覚えていますか? 私が聖女になった日にかけてくれた言葉を」

「もちろん覚えているわよ。ちょっと格好をつけすぎたかも、と思っているけどね」

「そんなことはありません。私はあの日の言葉を生涯忘れないと思っています」


 シェリアが聖女なるべく神託を受けた日。私は彼女の好きな薔薇の花束を渡して、お祝いをした。 

 その日は私も少し浮かれていたのだろう。今考えると少し恥ずかしい言葉をかけたのだ。


『私はこれからあなたの先輩として、ずっと目標であり続けられるようにする』


 なんとなく姉として、彼女に尊敬されたままでいたくて……後姿を追ってほしくて。そんな言葉を口にしたんだと思う。


 シェリアに格好悪い姿は見せたくなかったとも思っていたかも。

 別にシェリアが私を超えたとしてもなんとも思わないのだが……、私は私にそうありたいと言い聞かせたのだ。


「ごめんなさい。お姉様……」

「えっ?」

「私は妹としてお姉様を追い続け、立派な聖女にならなくてはならなかったのに……それを放棄して逃げました」


 彼女はうつむいて謝罪した。

 この子は昔から行動力のある子だった。

 きっと自分のことよりも私のことが気がかりで国を出たのだろう。


 それが聖女として正しい行動なのかどうか私にはわからない。でも……。


「シェリア、あなたが私を想って動いてくれた。私にはそれがたまらなく嬉しいの」


「お姉様……」


「あなたはどこまでいっても私の自慢の妹よ。聖女としてどうするかは体を治してから考えたらいいわ」


「……ありがとうございます。私、きっとお姉様のように強くなります」


 目を潤ませながら笑うシェリア。 

 さて、そろそろ時間だ。これから私はこの子を錬金術で救い出す。 


 鼓動の大きさが段々と大きくなる。だけど、その緊張すらも私は飲み込んで最愛の妹との目をジッと見つめた……。

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