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⑹『リアリズムの繁栄』
⑹『リアリズムの繁栄』
㈠
「うつし世はゆめ よるの夢こそ真」と、江戸川乱歩は言ったが、それに近い感覚で、生きている人々も大勢いるだろう。夢の中で、いつも居る場所、夢の中で会う人々、夢の中での、結婚、夢の世界は、本当に難しく出来ていて、不可思議の極みであると言える。
㈡
処で、この夢のリアリズムとは、真に奇怪なものだが、リアリズムが繁栄するならば、夢の中の世界も、リアリズムに満ち溢れている。実際、飛行機で墜落する夢があったり、洪水で自分が家ごと流され、水中で溺れる夢があったりして、其れはまさに、リアルに自己に迫ってくる訳である。
㈢
よるの夢こそ真、であるならば、人間は一体、何処で生きている時が、本当のリアリズムを体感しているのであろうと、一種の不安にも駆られるのである。何度も小説を執筆して書き直す様に、我々の映写機もまた、何度もリアリズムを見ることを、繰り返しているのであると言えよう。