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次の日、目が覚めると既に太陽は上っていた。小屋に布団などなく床にそのまま横になっていたが意外とよく眠ることができた。
「んー結構寝たな腹も減ったし罠かかってるといいな」
俺は小屋から出ると昨日仕掛けた罠を見に行った。始めに仕掛けた場所につくと罠は作動していなかった。
「仕掛けた場所が悪かったかな」
始めに設置した場所は獣道もなく動作確認をしようと思い開けている場所に設置していたため動物に気がつかれたのだろう。
「初めから上手くいったら苦労はねーよなつぎだつぎ」
俺は昨日の内に3か所に罠を仕掛けた。一つは簡単な場所だったが残り二つは違う。
川に繋がるように草が倒れ獣道が出来ているのを見つけそこに仕掛けたのだ。期待を胸にその場所に向かうと遠くからでもはっきりと(グオーグオー)と鳴き声が聞こえた。見るとそこには大きな猪のような動物が掛かっていた。
「よし!成功だ」
俺は遠くから慎重に石槍を構えた。ゆっくりと背後から近づき首元に一突きした。
確かな手ごたえを感じしばらくすると暴れていた猪は力尽きた。
「重っ!こいつ一体何キロあんだよ」
俺は石ナイフを抜き頭の中で食糧のイメージをすると手に建築の時に感じた魔力を感じ自然と解体のやり方が分かった。
「ゲームでは簡単に食料が手に入ったけど頭のイメージを使うとこうなるのか」
「解体とか困るかと思ったけどこれはゲーム様々だな」
80キロほどあった猪は順調に解体され内蔵、肉、皮に分けられた。内蔵はそのまま放置し皮は今後色々な物に加工できるとゲームシステムが教えてくれている。肉は食用として十分で一週間は困らないだろう。骨も加工次第で多くのアイテムが使用できるらしい。
「肉だけでもかなり多いな」
解体して小さくなっているとはいえ大きな猪は一度で拠点まで運ぶことは出来ない。そこで優先して食用の肉を持って帰り始めの肉は昨日の焚き火の残り火から再び火を上げ上につるした。火の上だと燻製になり保存が効くからだ。二回目は今日食べる分は残し他は燻製にした。皮は拠点の壁に干して乾燥させておくことにした。骨は今回は使えそうな部分針や返しがついていて鋭く加工できる部位以外は放置した。無事に回収が成功し拠点に帰還した。
そして今日食べる用の肉を枝に刺し焼いていく。(グゥー)俺の腹がなった。肉が焼け油が焚き火に落ちるたびにとても香ばしい匂いが俺の鼻を刺激した。それに反応して腹が今か今かと唸っている。
「あー早く食いてー」
何度か枝を回しながら全体的に火が通るようにじっくりと焼いていった。表面に焼き色がつき表面がカリカリとしてきたのが分かるようになってきた。
「そろそろ焼けてきたな」
俺は猪肉を火から外すと一番分厚い部分にかぶりついた。
「…」
食べた瞬間の俺にもはや言葉はいらなかった。俺は目を閉じて味に集中した。獣臭さは全くなく口の中いっぱいに肉の旨味をたっぷり吸いこんだ肉汁があふれ出した。脂肪は分厚いのにくどさはなく甘い肉汁と肉の旨味が脳を支配した。噛むたびに肉汁が溢れて止まらない。俺は食べ終わるまで笑みが止まらなかった。
「あー食った。今まで食べた肉の中で一番旨い」
しばらく食後の余韻に浸っていた。しばらくたって今日やるべきことを考えていく。
人間が生きていくために必要な物は衣・食・住である。現時点で住と食に部分は大丈夫だ。食は定期的に罠を仕掛ければ大丈夫だし、いずれ畑を作り作物によって安定した食を得たいと考えている。しかしだ。
「俺、服無くねさすがに汚いしまずいよな」
現状の服事情はとても悪い。転生した時に着ていた服が一着と昨日猪から取った毛皮を処理したもの。毛皮に関しては服と呼べるのかも怪しい。転生前の地球では太古の人達が毛皮を巻き付けていたのを教科書で見たことがあるが高度な文明の中で生活してきた俺は耐えられるだろうか。
「服作るかてか俺そもそも服作れるのか?」
頭の中で考えると製造者とは上位のスキルだったのだろうか物を作るという面においてあらゆる情報が入っていた。
「これはチートだな」
情報の中から色々整理していく。
「綿繊維や羊の毛に蚕かなるほどな」
現状何か手に入れば魔力で布が作れるし糸も作る事が出来る。回りを探せば何か見つかるかもしれない。
「そういえば倒れていた場所から反対に山があったなもしかしたら羊やこの世界の動物で布作れそうなやついるんじゃないのか」
さっそく俺は準備に入った。石槍に石のナイフを持ち拠点を出る。それから川に沿って歩き浜辺まで出てきた。それから倒れていた場所まで歩いていく。
「せっかく海もあるし釣りしたいな塩が取れたらもっと猪肉が旨いんだろうな」
海という食材の宝庫があり調味料である塩のことを考えながら浜辺を進む。綿花ももしかしたら咲いているかもしれない。どういう場所に咲いているのか詳しくは分からないため回りに目を向けながら探すことにする。ある程度歩くと山はだいぶ近くまで迫ってきていた。その時遠くの浜辺で何か大きなものが少し動いた気がした。この世界でまだどのような生物がいるのか分からないため用心して進む。
「ん?何かいるけど...倒れてる?」
よく目を凝らすと人型のように見えた。急いでかけていき半分ほどまで行って考える。
「言葉って通じるのか?そもそも味方かな海賊とかだったらどうしよ」
自分の言葉が通じない不安や身に危険が迫るかもしれない恐怖が頭をよぎり躊躇しながら進んでいくと。
「ゲッホゲッホ」
「ハァハァ」
むせる音と共に苦しそうな息遣いが聞こえてきた。
「これはまずい」
不安や恐怖を忘れ急いで駆け寄るとそこに倒れていたのは…
「エルフ?」
特徴的な耳の形、整った顔、美しい金髪スタイルも抜群で全てにおいてこれ以上はありませんと言われても頷ける美しさがそこにはあった。
俺は始めてみたエルフにしばらく見とれていたが、エルフの少女の苦しそうな息遣いに我に返った。
「オイ大丈夫か!俺の声が聞こえるか」
呼びかけても返事はなく意識もはっきりしないそれに海水で体が冷えているのかブルブルと震えている。とても会話が出来る状態ではなくそもそも言葉が通じないかもしれないが拠点まで連れて帰り看病をしなければならない。一刻も早く体温を上げないと死んでしまうため急いで抱き抱え拠点まで走った。
「しっかりしろよ」
俺は慎重にあまり体を揺らさないように最新の注意を払い安心させるため声をかけながら拠点まで急いだ。
拠点につき焚き火の前で横たえて体を温める。
「服濡れてるしごめん」
俺は心を無にして服を脱がせ、小屋から毛皮を取ってきて被せた。海水に濡れた服は近くに干しておくことにした。しばらくすると容態は安定してきたのか呼吸もしっかりとしている。
「スースー」
「もう大丈夫かな」
「暖かい飲み物用意しないといけないけど…」
飲み物を飲ませようと思った時ある事に気がつく
「家カップとかねーな」
少し考えて木のカップが作れる事に気がつき丸太置き場へ向かった。
「これちょうどいいな」
手頃な木を見つけ魔力を込めながらナイフで削っていく。ついでに自分の分も作りながら焚き火に戻る。まだ鍋がないためカップに入りそうな石を焚き火の中に入れて焼き石を作る。カップに水を汲んで焼き石を入れたらお湯になるだろう。
「せっかくだからお茶みたいにしたいな」
俺は近くの森に足を運び体に良さそうな薬草を積んだ。
「よしこんなもんか」
ある程度集めてから拠点に戻る。そして様子を見に行くうっすらと目が開いていた。
「気がついたかい?言葉は分かる?」
びっくりさせないように声をかけるが反応は無かった。まだ疲れていて意識をしっかりしていないのだろう。俺は体をゆっくりと起こしてからカップに薬草を入れてから焼石で温めてからゆっくりと飲ませる。
「体が温まるよ飲みな」
エルフの少女はゆりと頷き口にお茶をゆっくりと流した。どうやら言葉は通じたらしい。ひとまず安心した。そして安心させるべく声をかける。
「ここは安全だよ歩ける?
まだ疲れているだろうから中でゆっくりお休み」
言葉に安心したのか彼女は目を閉じ眠ってしまった。仕方がないので毛皮で体を包み抱き抱えて小屋の中に運んだ。とりあえずは一安心だろう。
「これからどうするかな考えてもしょうがないな」
今後のことは起きてから話合うことにして様子を見ることにした。
「とりあえず服はまた今度だな」
安心したら腹が減ったのでとりあえず朝に焼いた残りの肉を食べた。いつ起きるか分からないため今日は周辺から薬草や木の実を採取したり木の食器を作って過ごした。
「今日は疲れたし寝るか」
夕方まで作業していたが体に疲労感も感じていたため早めに寝ることにした。
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