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話を終えたシャークが廊下で待っていると先ほどの受付の子がやって来た。
「シャークさんこちらです。」
確かティファニーさんがリッタに案内を任せると言っていたが、この子はリッタというのか?シャークは受付の女の子の後をついて行きながらもいつ声をかけようかドキドキしながらついて行った。
「こちらです。どうぞ」
しまった!いろいろ考えていたらついてしまった。どうする?しかも目の前には何やらものすごく大きい建物が建っている。今までスラムか船でしか生活していなかったシャークにいきなりこのような場所に泊れと言われても何がなにやら分からない。
「すまないんだが俺はこういう場所に入ったことが無いのだが色々と教えて頂けないだろうか。それを君はなんて呼べばいいんだ?」
シャークは勇気を振り絞って声をかけてみた。なるべく冷静にいつも道理に落ち着いてを心掛けたが上手く話せただろうか。
「あっ!すみません私はリッタと言います。よろしくお願いします。それで何が分からないのですか?えっとそれだけでは私も何が分からないかもわからないのですが」
リッタに困った顔をされてしまった。しまったあまりにも色々とあり過ぎて自分の頭が爆発しそうだ。
「えーとだな。つまり俺は今までスラムのぼろ家か船の狭い部屋で寝泊まりをしていたんだ。だから何も分からんのだ。ここの皆は普段どのような生活をしているんだ?」
「なるほどそういうことですか分かりましたでは中に来てください説明しますね」
「あぁすまない」
良しまずは一歩前進だ。シャークはリッタの後ろをついて歩いていった。
「ここはコウキ様が建てられたんですよ。だから隊員の皆さんが宿泊する時に使う拠点なんですがね。とても大きいので沢山の隊員の方が寝泊まり出来るんですよ。」
「確かに凄いなこれは」
港が発展していくにつれて初めに作った拠点もドンドン改築されていった。どうやらここはコウキの別荘ということで見栄えを良くしようという意味もあるようだ。そのため中はかなり綺麗な作りとなっている。またコウキは港と村を行ったり来たりするので親衛隊が泊まれるようにかなり広い作りとなっているのだ。そのどれもがシャークの目には新鮮に見えた。
それからリッタは食堂から風呂ばと案内していき最後に部屋に案内された。
「本来ここは3人部屋だそうですが今日泊まる方はいないそうなので自由にお使いください。それとこのレバーを捻ればいつでも水が出ます。お風呂は夜食後の時間に入れますよ。それと食堂ですけど先ほどの部屋に行ってもらえれば食べられますかね」
「あぁそういえば朝から何も食べていなかったな。」
シャークは朝の会議をしてからそのまま泳いで島にたどり着き報告をしていたため昼食も取っておらずかなり腹が減っていた。
グゥー今まで作業をしていたため空腹感もあまり感じていなかったのだが意識すると急に腹がなってしまった。
「えっ!なにも食べてないんですかそれに結構な距離を泳いで来れれたのですよね?」
「あぁそうだな2、3時間は泳いでが島に戻って来るのに緊張していてな。あまり空腹感も湧かなかったよ。」
「それは大変でしたね何は食べられますか?」
「そうだな何があるんだ?」
「そうですねこの時間では食堂はやっていませんしえっとシャークさんはそのお金とかお持ちですか?」
「金?そんなもの持っていないぞ」
「ですよね…分かりました。食堂で待っててください」
待っているように伝えるとリッタはどこかに行ってしまった。仕方がないので言われた通りに先ほど案内された食堂に入ると席に腰掛けた。なにも分からないまま座っているとリッタが戻って来た。しかも手には何やら持っているようだがかなり旨そうな匂いがしている。
「これ良かったら食べてください。リザードマンの村で育てているエビを使ったスープと後はパンです」
「いいのか俺は金は持っていないぞ」
「はい大丈夫です。こういう時コウキ様なら関らずこうすると思うので」
「すまないでは頂くぞ」
シャークは運ばれてきたスープをすくうと一口飲んだ。すると口の中にエビの香ばしく旨味たっぷりの出汁の聞いたスープが脳に強烈な刺激を与えた。エビの旨味の後に野菜の甘味も感じられる。そして胡椒のアクセントがたまらない。
「旨いなこれ!」
シャークは腹が減っていたということもあり一気にスープを食べていった。プリっとしたエビの食感や大きめに切られた野菜も食べ応えがあってたまらなく上手い。あっという間に食べてしまった。
「喜んでもらえて良かったです。お代わりもありますよ」
「本当か貰うよ」
それからシャークはものすごい勢いで食べていった。今まで海賊飯しか食べたことのないシャークに取ってこの味はかなりの衝撃があったのだ。海賊飯とは大鍋に具材を適当に切って煮込むというもので味付けは塩のみ。最近ではコウキ様に頂いた物資で調味料もある程度は合ったのだが使い方が分からなかったため基本的には適当に入れるだけでしっかりとした味付けとの料理は初めて食べたかもしれない。
「ふぅー食べた食べたこんなにうまい物は初めて食ったよ。旨かった」
「喜んで頂けて良かったです。作ったかいがあったというものです。」
「これはリッタが作ったのか凄いな!」
「そんなことありませんよ。料理くらい出来ないと生活できませんか」
「しかし良かったのか?沢山食べてしまったのだが。それに俺の事怖くないのか?」
「えっ?どうしたんですか急に」
シャークは今までの緊張がほぐれたのか腹が満たされて冷静になったのか一気に不安が込め上げてきた。自分は元海賊なのだ。しかも自分の場合サメの魚人というのは見た目が怖いから普通に働くことが出来ないという外見上の理由でスラムに行ったという過去がある。それを忘れてこんな少女と話すなど怖くはないのだろうか。
「知らないのかもしれないが俺はサメの魚人だ。しかも元海賊だ。今までさんざん悪さをしてきたし今更正義ぶった所で何も変わらないだろう。現に昼間だって俺は裏から港に上がったんだ。俺達は厄介者さ。そんな奴と絡んでいたらリッタあんたも変な誤解をされるかもしれない。」
「なんだそんなことですかこの島には元海賊の方だっていっぱいいますよ。それにサメの魚人はどう関係あるのですか?」
「自分で言うのもなんだがな顔が怖いだろ?それで周りの人を怖がらせてしまうことがあるんだ。だから俺はあまり人前に立つことは出来ない。まぁそれも言い訳なんだがな」
自分で言っていて悲しくなってきたがこれはしょうがない事なのだ。こんな自分でもブラックは拾ってくれた。その恩も返さなければいけない。しかし自分だって普通の生活に憧れていた時期もあったのだ。それを思うと悲しくなる。
「なんだそんなことで悩んでいたんですかシャークさんは可愛いですね」
「俺が可愛いだと?」
「はいこの島では見た目で悪口を言う人なんかいませんよ。そもそもこの島には色々な種族の方がいるんですから外見で判断なんかしませんよ。それにシャークさんはかっこいいと思いますよ。」
「本当か!」
「はいサメって海のモンスターの中でもかなり強い個体ですよね。ということはシャークさんはそれだけ強いってことです。それにかっこいいと思いますよ。」
「嬉しいなありがとう。」
シャークは色々と救われた気持ちになった。それと同時にこの子のために島を守りたいと思えるようになった。
「今日はすまなかった色々と教えてもらってありがとう」
「いえ大丈夫ですよ。まだ何か困っていることはありますか?」
「いやもう大丈夫だ。助かったよ」
「そうですかでは私も行きますね」
「あぁまたな」
シャークそのままリッタを見送るのだった。
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