一つの呪い
私を購入するといった男は組織の男に連れられてどこかに行った。
それを見ていると後ろから私を毎日起こしに来る男が来た。
彼は私に「付いてこい」と言うと今までに通ったことのない道を進んでいく。
その進んだ先に見えてきたのは少し黒ずんでいる部屋だ。
部屋の中に男が入っていったので私付いていく。
中に入るとツンと鉄の錆びたにおいがする。
目立つものは端っこにある手錠と鎖とイスとその反対に置いてあるかまどだ。
「ここに座れ」
彼が大きなイスを指さして言った。
私はそれに座る。
すると彼が近寄ってきて私の両足を縛る。
その後にイスと胴体と右腕を一緒に縛った。
「口を開けろ」
彼が猿ぐつわを持ってきてそれを私の口にぎゅっと付けてくる。
その後、彼はかまどに歩いていき、長い二つの棒を使って真っ赤で辺りの景色を歪ませる物体を持ってきた。
「お前にはこんな高速をしなくてもいいのかもしれないが……。ふぅ、苦痛はこれで最後だ。お前の主人が良き人であることを願うよ。さぁ、左手を出してくれ」
私の顔を見ようとしたものの、彼はそのセリフを言い終わる前に視線を落とす。
私はそれを見ながら命令通りに左手を伸ばした。
男は私の左手を思いっきり掴むと彼が持っているあの赤い物体を私の手の甲に押し付ける。
――ジュウウウウ。
私の左手から湯気が出て肉の焼ける臭いがしてくる。
数秒押し付けていたそれを男はゆっくりと取った。
そのまま私の左手に出来た火傷の後を見た彼は顔を歪ませた。
そして私の顔を軽く覗いてくる。
「すまんな」
彼は何故か私に謝罪をした。
「何でしょうか?」
私はその謝罪を不思議に思い男に尋ねてみた。
「いや……。左手は動くか?」
私は左手を開けたり閉じたりした。
若干動かしにくさを感じるけども特に問題はなさそうだった。
「はい。異常はございません」
私がそう言うと彼は「そうか」と言い、私の拘束を解いていった。
そして再び手を出せと言うので出したら彼は私の左手に包帯を巻いた。
その後にこの部屋を出た。
来た道を戻る途中に男がふと口を開く。
「分かっていると思うがお前を購入したあの男がお前の主人だ。大丈夫だと思うが決して逆らうなよ? 奴隷が逆らったら処分される。お前の命はあの男の物なんだ」
足を進めながら彼は言った。
彼が言ったのは教育されたことのある内容だ。
当然そんなことは分かっている。
「存じております」
そう返したら彼は一度足を止めて、再び歩き出した。
「それから手を、焼き印を隠すなよ? 隠して外へ出たらトラブルにあう可能性が大だからな」
彼はそう言って歩く。
私は「かしこましました」と返事をしながら彼に続いて歩いた。
歩いて行って、次は真っ白な綺麗な部屋に通された。
その部屋の中には私を購入した男が居た。
「お客様、大変お待たせいたしました。無事に奴隷の焼き印が完了しました」
組織の男がそう言った。
「分かった。ありがとう」
私を購入した男が私に近寄ってくる。
「さぁ。行こうか」
彼は私の左手を出してきたので私はその手を握ろうとする。
私が左手を出した途端に左手を引っ込めて右手を出してきた。
「そうだったね。ごめんね」
彼は何故か謝罪をした。
この謝罪はさっき黒ずんだ部屋にいた時にあの男が私にした謝罪にそっくりだった。
私は何故彼らが私に謝罪をするのか理解できない。
私は疑問に思いながらも彼の右手を握って握手をする。
すると彼は見たことがある懐かしい表情をしながら「行こうか」と言う。
私はその表情を思い出そうとするけど何かによってかき消される。
そして私は私のご主人様に付いていく。