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物語に飢えている  作者: 黄田 望
1/1

第0話 【定番】

この作品に興味を持っていただきありがとうございます!

 

 学校のチャイムが鳴り、終礼を終えるとすぐに鞄を担ぎ、俺は友人達に一声かけて学校を後にした。

 何故、そんな慌ただしく学校を後にしたかというと、今日はずっと待ち望んでいたコミックスの最新刊が発売される日なのだ!

 前回では主人公がずっと連れ添ったヒロインが最大の敵でありライバルだったキャラに誘拐され取り戻す直前で話が終わってしまった。

 よくある王道冒険ファンタジーの漫画ではあるが、読者を引き込ませるストーリーが人気となり、定番ではあるが大人気なのだ。

 ついにはアニメ化まで決定して来期の人気アニメは決まったも同然だ。

 

 他にも今日発売のライトノベルや漫画もある為俺は道端で早歩きをしながら自分の財布の残高を確認する。

 漫画を買う為だけにバイトをしているのでそれなりに財布の中身は高校生にしては豊富だった。


 「さぁ! いざ新刊おたからを取りに!」


 ・・・と意気込んで行きつけの本屋に入ったのだが、新刊コーナーには売り切れの張り紙と入荷待ちのポスターが貼られていた。

 俺は人目を気にせず地面に手をついて気を落とした。


 「だがしかし! 最近のネットワークをなめるなよ運命の神よ!!」


 本屋に出ると俺はポケットからスマホを取りだした。


 「ハロー ググール! 近くの本屋を検索!」


 ピポンッと機械独特の音が鳴るとしばらくして数件の本屋に関するデータが表示された。


 「フハハハッ! たった一軒の本屋に新刊が売り切れる可能性など計算内だわ! 俺がその程度で楽しみにしていた漫画を放棄すると思ったら甘いわ神様! さぁ行かん! 新たな物語の元へ!」


 数時間後、表示された本屋全件に向かった結果、求めていた本は一冊も手に入らなかった。


 「おかしい・・・おかしいぞ・・・一体どんな因果律で俺が求めている本だけ売り切れになるというのだ。 流石にすべての本屋で売り切れているというのは計算外だ・・。」


 すでに自分が来たこともない地域まで来たにも関わらず手に入れられなかった俺は肩を落としながら帰路についた。


 「うぅ・・・辛い・・・新しくて面白い物語が見れないのが辛い・・」


 人生が退屈だ・・・とは言わない。

 高校では勉強が中学と比べて授業のスピードが速くついていくのも難しく、バイトでは初めての労働で慣れない事ばかりだ。

 やるべきことはいくらでもあり、学ぶべき事は無限に存在する。

 そのすべてが楽しいとは言わないが、決して退屈ではない事は確かだ。


 しかし、偶に現実が嫌になる事も多々ある。

 勉強が嫌になったり、バイトが辛くなったりして逃げだしたくなる。

 そんな時、俺は物語を見る。

 恋愛・冒険・ミステリー・ファンタジーと言った現実ではありえない世界に溶け込む事が好きなのだ。

 本やアニメを見ているとそれに夢中になり、頭の中で自分もその世界観にいるような感じになる。

 だから俺は漫画の新刊やアニメのリアルタイムは出来るかぎりその日に見て楽しみたい。

 

 フッと前を見ると、見るからに初々しい学生のカップルを発見した。

 その二人を遠目で眺めながら俺は二人の経緯を勝手に想像した。


 幼馴染ではあるがお互い近い存在過ぎてこの間まで異性として見ていなかったのに、高校に上がってからお互い意識し始めて色々とすれ違うことがあったが、ようやく男の方が告白して結ばれて今、照れながら手を繋ぎ帰路についている。


 「畜生・・・羨ましいなぁ~・・リア充爆発しろ。 そして永遠に幸せになれバカ野郎ー。」


 目に涙を浮かばせながらボソッと小さい声で言うと、聞こえてしまったのかカップルとすれ違う寸前に「ど、どうも。」と会釈された。


 男の方はイケメンであり、体格もしっかりしている事からスポーツ万能で学校ではモテモテなのだろう。

 女の方は髪が長くて顔が見えにくかったが、会釈する時に前に垂れた髪を耳に引っ掛ける時に見えた素顔は見るからに可愛い。


 「クソ・・・ビックリするほどお似合いカップルじゃねぇかよ。」


 俺は二人の背中を見送り自分も家に帰ろうとした時、足元にハンカチのような物が落ちていた。

 見るからにまだ汚れていないハンカチは恐らくさっきのカップルのどちらかだろう。

 俺はそれを拾い上げ近くの信号で立ち止まったカップルにハンカチを渡しにいった。


 「すいませ~ん。 このハンカ―――あぶない!?」


 駆け足で近づいた為すぐに二人の所まで追いついた瞬間だった。

 急にトラックが道路に突っ込んでくるのが見えた。

 男にほうもそれに気が付いたのか彼女の手を後ろに引っ張った・・が、その彼女を庇った行動で自分が逃げる態勢に入れていない。

 トラックが男に突っ込もうとした瞬間、俺は男の首袖を引っ張り放り投げた。



 ―――プツッ―――


 その後、カップルが俺に手を差し伸べながらを目を見開いている光景を最後に、俺の意識はまるでテレビの電源を落とす様に切れた。


最後まで読んで頂きありがとうございます!

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