テンペスト
起きてみるとそこは洞窟だった。
「スラさん、どうなったの?」
「スズキよあれを見てみろ。」
スラさんが言う方を見るとそこには白い少女がスラゴンと戯れていた。びよーんと伸ばされるスラゴン。あれ、いいのか?
「スラゴン……」
「そっちじゃないだろう!」
「わ、わかってるよ!どうやら体は取り戻せたみたいだね」
「ああ、しかし、スズキとスラミが気絶してな。かれこれ1時間くらいかな」
「え!ちょっとスラ私に変なことしてないでしょうね?」
「「うおっ、起きてたんかい!」」
当然のスラミの介入に驚く俺とスラさん。
「おい、俺がお前の体に興味があるわけないだろう!」
「それはそれで失礼よ!」
はあ、夫婦漫才見てる気分だ。
「あら、全員起きたのね。じゃあ、ちょっといいかしら?」
精霊が俺たちに話しかけてきた。
「なんだい?」
「お礼がしたいんだけど、何か希望はあるかしら?」
「あー、そういうことか。それなら特にないかな?スラさん達ある?」
「「ない(プルン)!」」
「ということで」
「いや、それでは私の気が収まらないという者よ。うーん、そうね、なら風魔法教えちゃおうかしら?」
精霊の魔法……テンプレなら最強の類だが……。
「どう思うスラさん?」
「風魔法はスラミしか使えないんだ。スラミはどうしたい?」
「そうね、正直私の風魔法は単体ではゴブリンを倒すのに精一杯というところだし、攻撃魔法なら教えてほしいかも」
「なら、決まりね。私が知りうる中で最強の風魔法を教えるわ」
「ありがとう!」
「じゃあ、さっそく教えるわね。その魔法の名前はテンペスト。すべてを薙ぎ払う風魔法よ。スラミちゃんの魔力量なら扱えるはずだから頑張ってね!」
「ええ、じゃあ、どうやって教えてもらえるのかしら?」
「魔法がイメージによるものであることは知ってるわよね?だから、私のイメージをあなたに送るわ」
イメージを送る?どういうことだ?俺たちは精霊の言葉の意味がよくわからなかった。
「あら、全員???って感じね。魔力のバイパスを利用するのよ。こうやってね」
精霊がそういうと、精霊の頭部から透明な管が出てきた。それはスラミの頭部へとつながる。
「あっ」
スラミは管がつながるとすぐに何かに気づいたような声を上げる。
「すごい、イメージが頭に浮かんだわ」
「それがテンペストよ」
「凄まじいわね。本当に私に使えるの?」
「Aランクの魔力があるんだもの使えるはずよ?もっとも、Aの中でも幅はあるから何回も連発は無理と思うわ。まぁ、試しに打ってみて」
そういうと精霊はパチンと指を鳴らす。すると風が吹きあがり、洞窟にある岩が縦に二メートルほど積み上げられた。
「これ、一見するともろそうでしょ?でもね結構すごいのよ。スラさん、ファイヤーボールを全力で撃ってみて。」
「ああ。ファイヤーボール」
パン
ファイヤーボールが岩に当たるとすぐに消滅した。一方で岩には焦げ一つついていない。
「これは私の肉体が使ってた風の防御方法を活用したものよ。相当な威力がないと破壊は出来ないわ。
じゃあ、テンペストどうぞ!」
「え、ええ」
そういうとスラミは魔力を高めている。皆がスラミに注目する。
「テンペスト!」
スラミがテンペストを唱えると、強烈な風の渦が生まれる。そしてその渦は高速で岩に当たっていく。
ズガガガガガガ!
風は何かを削るような音を発しながら岩に当たり続ける。風の渦は内部が乱気流のようになっており、凄まじい衝撃も発していた。
ズガガガガ、ズガン!
そして、風の渦はスラさんのファイヤーボールでは傷一つつかなかった岩を破壊した。渦は破壊しても止まることなくそのまま洞窟の外に飛んでいき霧散した。
「す、すごい」
「ああ、これは相当な戦力になるぞ!」
「でも、これ相当魔力を消費するわね、打ててあと一発が限界だわ。」
ぜぇぜぇと肩でスラミが息をしている。
「スライムのあなたが一発打てるだけでも相当なんだけどね……」
「でもありがとね。これでスラ達を助けられるわ」
「どういたしまして」
こうして、スラミはまた一つ強くなった。
ところで、闇の精霊はいるのだろうか。俺もそろそろ攻撃魔法を覚えたい。このままだと召喚士の俺が一番足手まといだ……。
スラミの新技に心強さを感じながらも、ちょっとだけ俺は寂しさが残った……。




