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呪われた宿

 転移陣による移動は一瞬で終わった。俺達は町の入り口と思わる場所に立っていた。ほのかにあの海独特の香りがする。


 「どうやら無事に着いたようだ」

 「そうだね。さあ宿を探そうか、日が暮れちゃうよ」

 

 俺達は門番にギルド証を見せるとシータウンへついに足を踏み入れた。王都ほど騒がしくはないが、日に焼けた人が多く力強い雰囲気がある。漁師や海辺で仕事をする人が多いのだろう。ここで日焼け止めクリームなどを日本から持ち込めば一財産築けるんじゃなかろうか。

 そんな馬鹿なことを考えながら俺はスラさんとともに宿を探していた。


 「ねえ、お兄さん達旅の人?」

 「そうだけど?」

 「もう、今日の宿は決まってる?」

 「いや」

 「そうなんだ!じゃあ、うちに来なよ!海産物を使った自慢の食事を提供するよ!」


 宿を探していると成人前くらいの褐色の女の子に声をかけられた。明るく朗らかな雰囲気がある好印象だ。おっと、女性につられて宿を決めるべきではないな。海産物か、ララもおすすめしてたし、いいかもしれない。でも、この町の性質上海産物なら何処の宿でも食べれそうだよね。食堂もあるだろうし。


 「スラさんどう思う?」

 「娘よ値段はいかほどだ?」

 「一泊一人5000Gだよ」

 「スライムの使い魔がいるんだがどうだ?」

 「大丈夫だよ、その代わり一匹3000Gだよ。スライムなら部屋を汚さないなら部屋で一緒にいても大丈夫だよ。」


うーん、少し高いかな?スラさんはどうなんだろうか。


 「スズキ、俺はここでいいぞ」

 「そうだね、ここにしようか」

 「やった!二名様ごあんな~い」


 スラさんがいいなら良いかな?という事で俺も賛成。そのまま調子のいい宿の娘に俺たちは案内された。少々不安だが……。


 「ここだよ」

 

 娘に案内されたのはザ・民宿という感じの宿だった。海辺の町で民宿、うん風情があってよし。第一印象は良好だ。


 「おうおう兄さん達、そこに泊まるのかい?やめといた方がいいぜ」


 俺が民宿に感動していると、後ろからガラの悪い男に話しかけられた。


 「ちょっとあんた何言うのよ!」

 「うっせーな、俺はそこのお兄さん方に話してんだ」

 「娘さん落ち着いて、でどういうことだ?」


 娘はぐむむという感じで男を睨んでいる。そんなことも気にせずスラさんが男に尋ねる。


 「その宿は呪われてんだよ」

 「お母さんが倒れてるのは呪いなんかじゃない!」

 「はっ、どうだか。それよりお兄さん方どうだい?俺が紹介する宿にしないかい?」

 「客を横取りしようとすんのかい!」

 「ぎゃーぎゃーうるせーなっ」


 そういうと男は娘さんに殴りかかる。


 ゴン


 「きゃっ……あれ?」

 「ちょ、お兄さんよ……」


 スラさんが顔面で男の拳を受け止めていた。普通の人にはできないが流石に防御Aの物理半減の男である。全く効いていない。


 「気が済んだか?悪いが俺たちはここの宿に泊まるよ。俺とお前の実力差はわかるだろ?さっさといけ」

 「へっへい。すいません、素直に帰らせてもらいます!」


 そういうと男は駆け足で逃げていった。へいって初めて聞いたよ。


 「お兄さん大丈夫?」

 「これくらい大丈夫だ」 

 「それよりも君のお母さんが呪われているとはどういうことかな?」

 「そ、それは……」


 ガチャ


 娘さんがスラさんに何か話そうとすると宿の扉が開いて男が出てきた。


 「お父さん!」

 「おお、ルル帰ったか。そちらはお客さんかな?」

 「はい、こちらに宿泊させていただきたいと思います」

 「家のうわさはご存じで?」

 「はい。丁度今聞きました」

 「そうですか、それを承知で泊まっていただけますか。ありがとうございます。精一杯サービスさせていただきます」

 「あのお父さん、この人たちに事情話してもいい?」

 「構わないよ、別に悪いことをしているわけでもないしね。お客さんも噂の原因は気になられるだろう。それよりもルルお客さんを外にあまり待たせてはいけないよ」

 「あっ、ごめんなさい。どうぞ」

 

 俺たちは宿に入ると店主がお茶を出してくれた。


 「で、事情とは?」

 

 スラさんがルルに尋ねる。


 「この町の幽霊の話は知ってる?」

 「ああ」

 「実はお母さんも幽霊を目撃しているの」

 「なんと。しかし、目撃者は多数。それだけで呪いなんて話になるのか?」

 「お母さんは幽霊にあった翌日から高熱にうなされているのかれこれもう3日。お医者様も原因がわからないって」


 なるほど、だから原因は幽霊と。幽霊に会って倒れる。うん、呪いという話になってもおかしくないな。


 「スズキよスラミならもしかしたら」

 「たしかに」

 「スラミ?」

 「ああ、知り合いに凄腕の医者?がいてね。その人なら治せるかもしれないよ?」

 「ほんと?」

 「あくまで可能性に過ぎないが」

 「それでもお願いできる?」

 「私からもお願いします。お金なら払いますので」

 「いえ、結構。その代わり最高の海産物の料理をお願いしますね」

 「ありがとうございます」

 「ではその人を呼んできますね」

「その方はこの街にお住みで?」

「いいえ、別行動しているんですよ」


流石に召喚を見せるのはまずいよね。


「では行ってきますね」

「よろしくお願いします」


そのまま俺達は一旦町の外れに進む。そして誰もいないことを確認するとスラミさんを召喚する。パァーと光が出るとそこにスラミさんが現れた。


 「あら、スラにスズキ何か用かしら?」

 「実は……」


 スラミに事情を話す。


 「なるほど、とりあえず最善を尽くすわ」

 「ありがとう」

俺達は宿に戻るとスラミを親子に紹介し、そのままルルのお母さんがいる部屋へと案内された。


 「お母さん入るね」

 「はぁはぁ、ルルそちらの方々は?」

 「お母さんを治療してくれる人達だよ」

 「治療?これが治るのかしら。お医者様でも匙を投げたのに」

 「任せなさい。私はそんじょそこらの医者とはわけが違うわ」

 「ふふ、じゃあお嬢さんに任せるわ」

 「ええ。じゃあ、まずは様子を見せてもらうわね」


 そういうとスラミさんはルルのお母さんに触診を始める。キュア系の魔法は治す状態異常を認識しないと効果を発揮できないのだ。


 「なるほど、これは魔力欠乏症ね」

 「え?でも魔力欠乏症ならお医者様でもわかるのでは?」

 「認識阻害の状態異常が付与されているのよ」

 「というと」

 「この魔力欠乏症は単なる魔力欠乏症じゃないわ、魔力を何処かに持っていかれているのよ。これをルルのお母さんにかけた相手は継続的に魔力を供給させたかったんでしょうね」

「なるほど。でもなんでスラミはわかるんだ?」

「私の能力のお蔭よ」

 

 そういえば彼女は状態異常を無効にするんだ。


「でも、医者がキュアを使えば治るのでは?」

「そういうわけにはいかないわ。キュアは状態異常を認識してはじめて効力を発揮するのよ」

「なるほど」

「ということだから、サクッと終わらせるわね。ハイキュア!」


 スラミさんが魔法をかけると、お母さんの方だが発光をはじめすぐに収まった。


 「どう?」

 「まぁ、体が嘘のように軽いわ、スラミさんありがとう!」

 「お母さん!よかった!」


 そういうとルルは泣きながらお母さんに抱き着いた。


 「妻を治していただきありがとうございます」

 「気にしないで」

 「お礼は必ず」

 「ちょっとスズキ、お礼を取るつもりなの?」

 「いやいや、うまい料理を頼んだだけだよ」

 「そ、なら私もご同伴できるかしら?こちらの世界の食文化も知りたいし」

 「もちろん、腕によりをかけてご用意させていただきます!」


 こうして、呪い?は解決した。

 

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