討伐作戦その3
バトルシーンは難しいですね。
俺達はゴブ太郎の様子に戸惑っていた。当初は苦戦を予想していたが今はそうでないからだ。
ゴブ太郎は目が虚ろでただただ戦う機会のように動いていた。こちらが攻撃しなければ攻撃しない。攻撃すればその攻撃に対しては反撃する。そんな単純な動きでスラさんとララに攻撃が当たるわけもなく。俺たちは終始圧倒していた。後衛陣は前衛二人が動きやすいように手出しはしていなかった。もっとも、いつでも援護できるようにはしているが。
「スラさんなんかこいつおかしくないか?」
「俺もそう思っていたところだ」
「あたしもだ。動きが単調すぎる」
「もしかして、こいつ洗脳とかされてるんじゃ。いや、ないか」
俺は日本での漫画でよくこんなシーンを見ていたせいかそんなことを呟く。
「いや、ありえるぞスズキよ」
「どういうことスラさん?」
「考えてもみろ、最近できた洞穴、定期的に討伐されるゴブリンこれらの事実からすればこの王都周辺でゴブリンキングにまで成長したとは考えられにくい。たしかにさっきのやつはハイをジェネラルにしていた。しかし、ならなぜジェネラルやキングをもっと作らない?さらにいえばキングの軍団をなぜ作らない?」
「つまり?」
「ここ以外から連れてこられた可能性があるということだ。あの男の獣魔という線も考えたが、あの目は主従関係があるとは思えない。一方でジェネラルの目は主従のそれだ」
「あたしも聞いたことがあるよ。闇魔法に奴隷化の魔法があるって」
「でもあいつ土魔法使いじゃ?」
「あいつが闇も使えるということも考えらえる。あとは協力者がいるかだ」
「協力者?」
「あいつがゴブリンで王都襲撃の計画を実行しようとする際に並行してやっていたことはなんだった?」
「人攫いだろ?あっ!」
人攫いの目的は大抵あれだ。
「気づいたか。そう奴隷だ」
「なるほど、人だけでなく魔物を奴隷にできるものがいると」
「ああ」
「まぁ術者がここにはいない以上さっさと倒すしかないがな」
「って、ことは撤退でなく撃退?」
「ああ、そうさあたし達であいつをやるよ」
『了解』
スラさんとララは斬りつけ、ゴブリンキングは動きが鈍くなる。大きなダメージを受けたときだった。ゴブリンキングの動きが変わった。ゴブリンキングは急下がり、持っていた剣を方に担ぎ大股で構え始めた。
「ん?」
「みんな気を付けて何かくる!」
俺が疑問に思っているとリリィが叫ぶ。
「ガー!」
リリィの警告とほぼ同時にキングはその剣を振り下ろした。
バーン!ドゴーン!
すると、剣を振り下ろしたとこから爆発が生じそれがこちらまで続いてくる。
バン、ボン、バン、ドガーン!
爆発はララがいるところで最大の勢いを出した。
「ぐぅ」
ララは直撃は免れるも爆風により大きく飛ばされる。
「ララ!大丈夫か?」
「ああ、なんとか。骨も大丈夫みたいだ。でも参ったね足をくじいちまったよ」
「スラさん、ヒールを!」
「すまんが、こいつを抑えるので手一杯だ!」
ララが、離脱した今スラさんがキングの攻撃を捌いている。それにララは、重傷ではない。危険を侵してまで回復するのも違うだろう。
ララの実力なら足をくじいてもハイゴブリンまではどうにかなるだろう。しかし、相手はキング。平均ステータスCと冒険者ならCかB級に位置する魔物だ。そんな魔物相手に今のララを無理させることはできない。
それにしても、先ほどまでの受動的な戦いとは異なりかなり能動的だ。今まで通りなら前衛はスラさん一人でも事足りた。
俺たちは、ここにきて火力要因のララが離脱せざるを得ない状況になったことで火力不足になっていた。
「ララ今のは魔法か?」
「たぶん。これは不味いね、あれはそう何発と耐えるのはきついよ」
ごくりと俺は喉をならす。
「ララ下がれ、俺とスラゴンでスラさんを援護する!」
「ララ、私がララの代わりに戦う。だからララは私の代わりに他のゴブリンの牽制をお願い。」
「くっ、情けないけど、今の私じゃスラの足手まといだ。素直に従わせてもらうよ」
そういって、リリィとララが役割を代わる。
「タロウ、スラゴンと共に動きを鈍らせて」
「わかった。スラゴン俺のサンドボールのあとにウォーターボールを!」
プルン
ザバッ、ビシャン
「ガー!」
目に砂の隙間に泥が入り込み動きが鈍くなるキング。
リリィは、キングの手をめがけてナイフを投げる。
ザシュッ
キングの指に傷をつけるも奴は剣を落とさない。それどころかまた剣を担ぎはじめた。
「くるぞ!」
キングはあの爆発攻撃を繰り出す。しかし、これを俺達はかわした。そして、爆風に紛れて俺は、黒霧をキングの視界を覆うように発動させる。
プルン
スラゴンはゴブリンキングの足に向かってウォーターボールを放つ。そして、そこにリリィが蹴りかかる。しかし、
「キャッ」
斬りかかるリリィをキングが足で蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされたリリィは大木に頭を打ち付けそうになる。
「リリィ!」
プルン
リリィが頭を打ち付けそうになった瞬間スラゴンがリリィと木の間に入り込みクッションとなった。
「ナイススラゴン!」
プルルン
全く俺より攻撃もできてサポートもできるいい仲間だよ!
「リリィ大丈夫か?」
「なんとか、でももう足手まといかも」
それはそうだろう。頭を打ち付けなったとはいえ、その小柄な体をゴブリンキングに蹴られて無事なかわけがない。
「あとは俺達に任せとけ」
「うん、任せる」
そういってリリィを下がらせる。
「スラさん、どうすりゃいい?」
「スズキ、時間を稼げるか?」
「お望みとあらば」
俺はニッコリと応える。きっとスラさんはこんなことを本来頼みたくはないだろう。
「すまない。頼んだ。俺はララ達と話がある」
「わかった」
俺は返事と同時にゴブリンキングにさんどボールを当てる。ギロリとこちらを睨むゴブリンキング。
俺の背中にツーっと冷や汗が流れるのを感じる。手にはじとっと汗をかく。
「ガー!」
雄叫びと共にゴブリンキングが走ってくる。
「マジ無理。おりゃー!サンドボールサンドボールサンドボールサンドボールサンドボールサンドボールサンドボールサンドボールサンドボールサンドボールサンドボールサンドボールサンドボール」
俺は走りながらひたすらサンドボールを連発する。ゴブリンキングに俺の位置を把握させないためだ。
体力魔力Aを舐めんなよ?砂漠行ったら思い出すくらいのトラウマ植え付けてやる!
「あれ?砂漠にあいつ行けたら俺まけてるってことじゃん」
細かいことは気にしないでおこう。
ひたすらサンドボールを投げているとウォーターボールが飛んでくる。スラゴンだ。そしてスラゴンそのまま俺の胸辺りに引っ付く。
「スラゴン合体だな!」
プルン
俺達はそのままちびちびとゴブリンキングの体力を削っていく。当たりは文字通り泥沼化してきた。
「がぁがぁがぁ」
「おいおい、もう体力の限界かい?」
ゴブリンキングは視界が塞がるなか俺を襲い、一方で俺はひたすら逃げた。
体力お化けの俺は平らな地面走り、ゴブリンキングは泥のなかを走った。
もう、ゴブリンキングの体力は限界だろう。
「スズキ感謝する」
「ああ、あとは任せるよ」
振り向くとそこにはスラさんのヒールで回復したララとリリィがいた。そして、三人は各々の魔法を構えていた。
「号令頼むよ!スズキ」
ニヤリと笑うララ。それに対して俺もニヤリ笑う。
「全軍!打てー!」
その合図ともにファイヤーボールが2発ウィンドボールが一発が打たれる。
火の玉がまずボンとゴブリンキングに命中するとそこに風の玉が加わり、ボンと青い炎となる。
「ガー!」
ゴブリンキングの悲鳴が辺りに響き渡る。そうして幾ばくかして火が収まるとぜぇぜぇと弱々しい呼吸をするゴブリンキングだけがそこに残った。
「さらばだ」
そういうとスラさんはキングの首に剣を叩きつけるように斬り落とした。
「ウォー!」
スラさんがキングを倒したことで雄叫びをあげる冒険者、一方キングが敗れ能力の恩恵を失うゴブリン達がそこにはいた。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/986445323/401196208
アルファポリスでは続きが読めます。ただこちらの方が推敲番なので内容が無いなり有ります
どのくらい手直ししたか等見てもらっても面白いかもしれません。
感想等お待ちしております。