プロローグ
俺は鈴木太郎。新卒社会人だ。俺は人材派遣会社で働いている。人材派遣は簡単ではない。きちんと派遣先で働いてもらえなければ派遣先の怒りを買う。
今日も派遣した人がバックレてそのことを謝罪に行くわけだ。もちろん龍屋の羊羹は準備してきた。
はぁ、今日も憂鬱だ。
そんなこんなで無事に謝罪を終えると俺は公園のベンチで缶コーヒーを飲んだ。本当はカフェでコーヒーブレイクと行きたいが、そんな余裕は俺の安月給にはない。
「はあー今日もエ〇マンはうまい」
俺のお気に入りは、某青い缶コーヒーだ。昔はもっぱらブラックだったが、今は同じ値段でも糖分が少しでもほしい。しかし、甘すぎは爽快感がない。そんな俺のニーズに応える逸品がこの青いエ〇マンなのだ。この方のためならなんだってするね。エ◯マンサイコー!
そんな感じで公園でコーヒーの余韻に浸っている時だった。
ピカー
急に光りだす体。
「え?な、何だよこれ!」
光が収まった瞬間俺は赤い絨毯がひかれた部屋にいた。
「王よ、成功しました!」
「よくやった。これでこの国も安泰だ」
「もったいなきお言葉」
「あの、すいません、ここはどこでしょうか」
「うむ、突然呼び出してすまんの異世界人よ。ここはエメラルド王国、儂は国王のブルー=エメラルドだ」
どういうことだ?
「すいません、ここは日本ではないんですか?」
「うむ。そちは我に呼び出されたのじゃ。そちにはこのエメラルド王国の危機の解決に協力していただきたい」
「は?あんた何言ってんだ?」
「貴様、王に対してなんと無礼な!」
「良いのじゃブラックよ。こちらが勝手に呼び出したのだ。我も特に気にせん。でだ、そちは協力してくれるのか?」
一旦頭の中を整理しよう。俺はここに召喚されたらしい。これは昔読んだラノベでよくある展開だ。まさか俺が呼び出されたということか。俺は日本人だ。戦いとかだと無力。ということは聞くことは二つ。危機の内容と帰れるか否か。
「王様、危機とは何ですか?また、私は帰ることができますか?」
「危機とはたぶん魔王の復活じゃ。そして、帰ることはできる」
「本当ですか?では帰らせてください。私は戦いなどしたことがありません。なので、力になれないと思うのです」
「すまんが、すぐに帰れるわけではない。頭の中で<契約>と唱えてみよ」
「え?それはどういう……」
俺は言われたことをしてみた。
<契約>
第一条 ブルー=エメラルド(以下甲)は鈴木太郎(以下乙)を異世界召喚した際、健康で文化的な最低限度の生活を保障する。
第二条 甲乙は互いにいかなる手段においても故意に危害を加えてはならない。
第三条 乙は王国の危機を完全に回避した際に帰還することができる。
は?なんだこれ。契約?俺そんなの結んだ覚えがないぞ?
「これはいったい何ですか?私はこんな契約を締結した記憶はありません」
「そちは召喚される直前、我のためならなんだってすると思っていたのではないのか?召喚のための魔法陣で契約可能だったのはそちだけだったのだ」
ん?召喚される直前?俺は青いエ〇マンのためならなんでもやるとは思っていたが……
青い=ブルー
エ〇=エ〇ラルド
マン=人、男性
は?まさか、これらを合わせると……
ブルー=エメラルド(男性)
ってこと?ふざけんなぁ!
「ちょっと待って下さい!俺が誓ったのは缶コーヒーにです。あんたではない!」
「かんこーひー?なんじゃそれは?」
この世界缶コーヒーないのかぁーーーーーー!錯誤の原因はそれかー!
「錯誤です。民法95条です。契約は無効です!」
「すまんが何を言っているかわからんし、一度契約を結んだ以上は破棄できん!さぁともに魔王と立ち向かおう!」
俺の契約の自由はどこ行った!
「う・そ・だ・ろ!」
こうして俺の異世界生活が始まったんだ。