序
ビルの屋上でフリル姿の少女が杖を片手に、異形どもが犇めく空を睨み付ける。その肩に乗っている真っ黒な猫らしき生物が、彼女へとびきりの笑顔で話し掛ける。
「はやく広範囲殲滅魔法ぶっ放して必見必殺だよ!」
「待て待て待て! こんなところでそんな魔法
放ったら、街中の被害が恐ろしいだろがっ!」
「ハハハッ! 世界の平和は犠牲の上に成り立っているのさ」
「黙れこの鬼畜腐れ外道! 取り敢えず確実に潰して行くぞ」
「えぇー面倒くさいなぁ」
「うるせぇ! 行くぞ腐れ外道!!」
杖を右手に持ち替えた少女は、屋上のフェンスに足を掛け颯爽とビルから飛び降りた。
『翼無き我が背に大空への自由を』
自由落下していく少女の背部に魔方陣が現れ、真っ白な翼を生やすとV字を描きながら天高く舞い上がる。
「いつもながらジェットコースター並に恐ぇ……」
若干顔を青くしながらも少女は前を向く。目の前には空を覆う程の様々な異形ども。
「さてと」
杖を持つ手に力を込めて気合を入れる。少女は口角を三日月型に引き上げると、無数の魔方陣を形成する。
「害虫駆除のお時間だ!」
「……どっちが腐れ外道なんだか」
腐れ外道は腐れ外道を呆れ顔で見つつ、嘆息混じりに呟くのであった。