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第32話 まともに動くわけがあるまい

 俺が錬金魔法と土魔法を併用させて作り出した新型のゴーレム〝アルファ〟が登場すると、あちこちから驚きの声が上がった。


「な、何だあれは!?」

「あれがゴーレムだってっ?」

「どう見ても金属でできてねぇか?」

「いや、そもそもゴーレムは別に必ずしも土である必要はない……けど、実際に金属製のゴーレムなんて見たこと……」


「これが俺のゴーレムだ。錬金魔法で素材を作り、動作は土魔法で行う。恐らく今まで誰も作ったことのないタイプのゴーレムだろう」


 ログウェルもしばし驚いている様子だったが、


「がははははっ! 冗談はやめたまえ! 金属で作られたゴーレムなど、まともに動くわけがあるまい! せいぜい歩くことができるという程度だろう!」


 いきなり大声で笑い出した。


「いや、走ることもできるぞ」


 俺はアルファを走らせてみることにした。

 たっ、たっ、たっ、と軽快に訓練場内を駆けていく。


「めちゃくちゃスムーズに動いてるぞ!?」

「しかもUターンした!」


 アルファが俺のところまで戻ってくる。


「見ての通りだが?」

「……な、なかなか面白い余興ではないか! しかし私の目は誤魔化せないぞ! やはり金属で作ったゴーレムなど、そんなふうに軽快に動かせるはずがない! きっと中に人間が入っているのだろう!」


 看破したとばかりに、ログウェルが断言する。


「だとしてもあんなに走れるか?」

「重い鎧を着て走るってことだろ……?」

「むしろそっちの方が難しい気も……」


 ログウェルの考えに異論が噴出する。


「もちろん重い鎧では不可能だ! ゆえにこれは薄い金属板で身体の周囲を覆っているだけなのだろう!」


 反論するログウェル。


「入っていないんだが」


 俺はアルファに命じ、両手で兜を持ち上げさせた。

 ガチャッ、という音がして頭部が外れる。

 当然ながら首から上には何もない。


「なっ? 馬鹿な……」


 愕然としたようにログウェルが呻く。


「誰も入っていないだろう?」


 アルファが頭を装着し直す。


「……小さな人間が入っているのか? いや、あるいは手品か……」


 ぶつぶつと様々な仮定を呟くログウェルだが、生憎とどちらも外れだ。

 だから中には誰もいないんだって。


 そのとき別の閃きが降りてきたのか、ハッとしたような顔になって、


「そうか! きっと強度に乏しい超軽量の金属で作られているのだな! それならば走ることくらいはできるかもしれない! がははははっ! なかなか考えたな!」


 中身がないことは理解してくれたようだが、未だに彼の推理は完全に明後日の方向に向かっているようだった。


「しかし残念だ! それではせっかく頑張って作ったというのに、私が作る世界最強のゴーレムから一撃でも貰えば、あっという間に壊れてしまうに違いない!」


 そう言いながら、いかにも残念そうにログウェルは首を振った。


「だがそれもまた勉強だと思って容赦してくれたまえ!」


 ログウェルのゴーレム――面倒なのでログレムとでも略そう――が、アルファへと襲い掛かる。


 両者の大きさはだいたい同じくらい。

 いずれも()()武器を持っていないため徒手空拳である。


 その場で待ち構えるアルファに対し、ログレムは走りながら拳を大きく振りかぶると、豪快に殴り掛かっていった。


 バシッ。


 アルファはログレムの拳を片手で受け止めた。


「……へ?」


 軽量だが強度に劣ると考えていたログウェルは、予想が大きく外れて目を丸くする。


 ふむ。

 このログレム、ここの地面の土を使って即興で作り出した割には随分と強固だな。

 拳もなかなかの重さだ。


 かなり圧縮しているのだろう。

 その辺りはさすが教員といったところか。


 しかし俺が錬金魔法で作り、アルファの身体を構成している金属に比べれば、遥かに強度が劣る。


「今度はこっちから行くぞ」


 アルファはログレムの腕を払うと、その身体に連打を見舞った。


 ズガガガガガガガガガガガッ!


 堪らず腕でガードするログレム。

 しかし防御されていても構うことなく、アルファは次々と拳を繰り出していく。


 ビシビシビシッ!


「な、なんだとっ!? 私のゴーレムに罅が!?」


 ログレムの腕に幾つもの亀裂が走った。

 ついには粉砕する。


「馬鹿なっ!? 強度の低い金属ではなかったのかっ!?」


 ログウェルが愕然と叫んだ。


「おいおい、あいつ先生のゴーレムより強いぞ!?」

「何者だよ、あの男!」


 まぁこの結果になるのも無理ないだろう。

 ここの地面の土から即席で作ったゴーレムに対し、俺のアルファはじっくりと時間をかけて製作しているわけだからな。

 後者の方が高い性能を持つのは不思議なことではない。


「ど、どうやらこの私も少しは本気を出した方がよさそうだな!」


 ログウェルは若干頬を引き攣らせながらもそう大声を響かせると、腕を失ったログレムを土へと返した。


「今度のゴーレムはそう簡単にはいかないぞ!」


 直後、地面から巨大な腕が生えてきた。

 さらに逆の腕、頭部、胴体、そして脚と、いずれも先ほどのものとは比較にならない大きさで出現する。


「で、でけぇ……」

「あんなゴーレムまで作れるのかよ……」

「あの先生、言うだけのことはあるよな……」


 それは身の丈十メートルに及ぶかという巨大ゴーレムだった。


「がはははっ! 今度こそ正真正銘の世界最強のゴーレムだ!」


 巨大ゴーレムがアルファに襲いかかった。


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