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第28話 わたしの人生、オワタ

「【超級職】《剣神》のリビングアーマー……」


 リリアが震える声でそう口にした。


「わ、私も聞いたことがあるっ……。黄金色のリビングアーマーは、あの幻の【超級職】《剣神》だと……!」


 目を見開きながら頷いたのはライナだ。


「じょ、冗談じゃねぇよおおおおおっ!? なんでっ……なんで俺がこんな目に遭わなくちゃなんねぇんだよおおおおおっ!」


 俺たちを罠にかけた青年が悲鳴を上げる。


 それをお前が言うのか。


「まぁしかし、お陰で期待以上の相手に遭遇することができた」


 まさか【最上級職】を越えて、いきなり【超級職】が出てくるとはな。


 まだ見ぬスキルに出会うという点では期待できないが、良い実戦訓練にはなるだろう。

 最近、()()()()の相手と戦えていなかったため、少々実戦の勘が鈍っている気もしていたしな。


「ちょ、アレルさん、戦う気ですか!?」

「? 当然そのつもりだが」

「む、無謀ですよ! いくらアレルさんでも! なんたって相手は【超級職】なんですから!」

「いや、そもそもあいつを倒さない限り、外に出られない感じだろ?」


 先ほどざっと部屋を見渡してみたが、どこにも出入り口の類いはなかった。

 恐らく出現する敵を倒し、初めて脱出できるタイプの部屋なのだろう。


「なっ……」


 ようやくそのことに気づいたのか、リリアは顔を真っ青にする。

 青年も絶叫した。


「つまり、ここはボス部屋ってことか!? なんでトラップの先がボスのところに繋がってんだよおおおおっ!?」


 そう言えばダンジョンについて、そんなことを聞いたこともあるな。

 ダンジョン内には、他の魔物とは一線を画する強さを有した強敵がいて、ボスモンスターと呼ばれていると。


「オワタ……わたしの人生、オワタ…………こんなことならもっと美味しい物たくさん食べておくんでした! イケメンの恋人を作ってイチャイチャもしたかった! うわああああん!」


 リリアも絶望して喚き出す。


「うるさい奴らだな。……む。来るぞ」


 黄金色の全身鎧が目にも止まらぬ速さで剣を抜き、横薙ぎに空間を斬った。

 出現した場所からは一歩も動いておらず、俺たちとは二十メートル近い距離がある。

 どう考えても剣は届かない。


「え? もしかして馬鹿アーマー?」

「馬鹿はお前だ、しゃがめ!」

「……へ?」

「っ!」

「なっ!?」


 俺の言葉に反応し、咄嗟にしゃがみ込む三人。

 直後、すぐ頭上を何かが猛スピードで通り抜けていった。


「一体何が……って、うおっ!? 俺の髪が!?」


 悲鳴を上げる青年を見遣ると、頭のてっぺんの毛だけが綺麗に刈り取られていた。

 ちなみに髪の毛は負傷判定されないので、加護は減らないし、回復もしない。


「い、今のは何ですかっ?」

「《剣神》のスキル、〈飛刃〉だな。斬撃によって生み出された衝撃を飛ばす技だ。見てみろ」

「ひぇっ!?」


 背後の壁には直接剣でつけたような鋭い傷痕が刻まれていた。


「あの威力、最低でも五十メートル先まで攻撃できそうだな」

「なんて出鱈目なんだ……!」


 む、動くぞ。


 ガキンッ!


 俺は黄金鎧の斬撃を受け止めた。


「いつの間にここまで!? まさか〈縮地〉ですか!?」

「違う。〈縮地〉の上位スキル、〈神足通〉だな」


 剣を弾くと、次の瞬間にはもう、黄金鎧は百メートルほど離れた位置にいる。

〈神足通〉を使える《剣神》にとっては、あれでも剣の間合いだった。

 なので、ぶっちゃけ〈飛刃〉など必要ないっちゃないな。


 黄金鎧が再び斬り掛かってくる。


 ガガガガガガガガガガガガガガッ、ギィンッ!


 剣と剣をぶつけ合った後、また距離を取る。


 ……なるほど。

 確かにこいつは《剣神》だな。

〈剣技・上級〉スキルとは、身のこなしも剣速も読みの速さも、何から何までレベルが違う。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよっ! な、何でアレルさん、普通に斬り合ってるんですか!?」

「?」

「いやいや、何を言ってるんだって顔しないでください! 《剣神》は剣技スキルを極めた存在ですよ!? 【最上級職】の剣士ですら習得できない、〈剣技・超級〉スキルを持ってるはずですから!」


 剣技スキルは、下から〈剣技・初級〉〈剣技・中級〉〈剣技・上級〉の三つあると言われている。

【基本職】の《剣士》や《騎士》などが習得できるのは〈剣技・中級〉まで。

【上級職】になって、〈剣技・上級〉を習得できる。


 だが幻とされる【超級職】の《剣神》は、やはり幻とされる〈剣技・超級〉を習得できると言われていた。


 言われていたというか、事実だがな。

 そもそも【超級職】は幻でも何でもない。

 間違いなく存在していた。


 目の前の黄金のリビングアーマーだって明らかに《剣神》だし、何より、


「俺の母さんが《剣神》だからな」


「「……は?」」


 リリアとライナの声が重なった。


「ど、どういうことですか……?」

「き、貴様の母親が《剣神》だと……っ? だが《剣姫》だったはずだ!」


 ふむ?

 そう言えば、言っていなかったか。


「俺の母さんの今の職業は《剣姫》ではない。《剣神》だ。【最上級職】から【超級職】へと転職したらしい」

「そ、そんな話、わたしも聞いたことありませんよ!?」

「《剣神》となったすぐ後に、この都市を離れたらしいしな。実家の方でも別に隠しているわけではないが、あえて言ってないからみんな《剣姫》だと思っているようだ」


 母さんは家族と静かに暮らしたい人だし、あまり人に知られるのを嫌ったのだろう。


「もちろん、俺は母さんから《剣神》のスキルをすべて盗んだぞ」


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