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第37話 初対面なのに

 どうやらセレスティアさんのゼミと合同で訓練を行うという。


「合同訓練っ?」

「面白そう!」

「王女殿下とお会いできる……」


 初めて知った人も多いようで、教室内が湧き立った。


「女王殿下の自主ゼミには噂の一年生も参加しているらしい。つまりアーク君も参加すれば、兄妹がそろうということだね」


 合同訓練か……。

 当然セレスティアさんも参加するだろう。


 酷い形で再会してしまったし、どんな顔して会えばいいんだろう。

 僕のことをどう思っているのかも分からない。


 レイラのことよりも、僕はセレスティアさんのことの方がよっぽど気になってしまった。







 あっという間に合同訓練の日がやってきた。

 都市外へ遠征することもあり、学院の授業が休みの日だ。


 まず武術科の参加者たちで集合して出発し、目的地で魔法科の参加者たちと合流することになっている。

 武術科の参加者は四年生が五名、三年生が三名、二年生が三名、そして一年生が一名の、合計十二名だ。

 たぶん魔法科とほぼ同数だろう。


 一応、各ゼミに一人ずつ、教員が同行してくれるそうだ。


「みんな準備はいいかい?」


 ディアスさんが改めて訓練の概要を説明してくれた。


「今回の訓練は、王都の西部に広がっているドルイドの森を探索することになる」


 ドルイドの森というのは、先日、魔法科のゼミで近くまで行ったあの森のことだ。

 かつて自然崇拝主義のシャーマンたちが暮らしていたことからその名が付けられたらしい。

 現在は人は住んでおらず、棲息しているのは魔物ばかりだという。


「先日も言った通り、テーマは魔法部隊との連携。いかにお互いを補い合いながら戦うことができるかが重要だ。独りよがりな行動は控え、いつも以上に周囲の状況をしっかりと見るようにね」


 ディアスさんの言葉に、皆が神妙な顔で聞き入っている。


「だけどその上で、ぜひ王女殿下に僕たち武術科の練度の高さを見せて差し上げよう!」

「「「はいっ!」」」







 ドルイドの森からほど近い場所で馬車が停止した。

 ちなみに魔物避けのお香を焚いているので、一度も魔物に遭遇していない。


 しばらく待っていると、魔法科の馬車がやってきた。

 中から見知った人たちが降りてくる。

 もちろんレイラに成り替わって参加していたため、大半は僕が一方的に知っているだけだ。


「殿下だ……」

「いつ見てもお美しい……」

「魔法科のやつら羨ましいよな……」


 武術科の参加者たちが見惚れている中、ディアスさんが一歩前に出て、深々と頭を下げた。


「本日はよろしくお願いします、王女殿下」

「ここは王宮ではないですし、そう畏まらないでください、ディアス。今日はお互い、同じ学院の生徒として頑張りましょう」

「ありがとうございます」


 ディアスさんは頭を上げる。


「わーい、アークだ~っ!」

「ちょっ!?」


 突然、横合いから衝撃を受けた。

 レイラが僕に抱き着いてきたのだ。


「やめろって、暑苦しい」

「えー、なんでー?」


 久しぶりにこうして一緒に冒険できるのが嬉しいのか、やたらとテンションが高い。

 みんなが生暖かい目を向けてきてるし、本当にやめてほしかった。


 と、そこで僕は目を丸くしてしまう。

 ボブヘアーの小柄な少女がいたからだ。


「初めまして。レイラから話は聞いているわ?」


 ワザとらしく微笑んでくるのはリッカだった。


「な、なんでいるの?」

「わたしも参加できることになったから」

「……」

「何でそんなに嫌そうな顔をするのかしら? 初対面なのに」


 そうだ、僕とリッカは初対面なのだ。

 ……初対面でなければならない。


「へえ、その子がレイラちゃんの双子のお兄さん?」

「確かにそっくりだな」

「髪の色なんてまったく同じね」


 魔法科の人たちが僕とレイラを見比べながら口々に言う。


「入れ替わっていても分からないかもね?」


 お、おい、リッカ!

 余計なことを言うな……っ!


 僕が睨むと、リッカはクスクスと意地悪く笑う。

 こいつがいるととても不安だ……。







 さすがに森の中に入ると、リッカが声をかけてくることはなくなった。

 自分の持ち場で真面目に歩いている。


「ねー、アーク、パパ元気にしてるかな~?」


 一方でレイラはさっきからずっと僕に話しかけてきていた。

 配置がすぐ近くだったせいもあるけど、そもそもこれくらいの森の探索など慣れっこなので、緊張感がないのだ。


「レイラさん、もう少し集中しなさい」

「えー? してるよ?」


 アリサさんから注意され、レイラは唇を尖らせた。


 実際、会話しながらでも、自然と周辺の気配を探ることはできる。

 なにせ寝ていても可能なぐらい、身体に染みついているからね。


「あ、あっちから魔物が近づいてくるよ」


 レイラは北西の方角を指さした。

 もちろん僕も気づいている。

 この気配の強さ、それほど強い魔物じゃない。


 周りはまだ誰も魔物の存在を感じ取れていないらしく、「本当に?」「何で分かるんだ?」という顔をしている。


「レイラさん、どの程度の強さの魔物か分かりますか?」

「そんなに強くないよ! たぶん。ね、アーク?」

「う、うん」

「~~~~っ」


 こっちを向いていたはずのセレスティアさんが、僕と目が合うなりなぜかすぐに顔を背けてしまった。

 や、やっぱりこの間の決闘のせいで嫌われちゃった……?


 僕はレイラを睨みつける。


「ふえ? 何で怒ってるの?」

「自分の胸に聞いてみなよ」

「……? 心臓の音しか聞こえないよ?」


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転生勇者の気まま旅
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― 新着の感想 ―
[良い点] 読み返してるところだけど、やっぱり面白いな。
[良い点] 面白いです 早く無双が見たい [一言] >女王殿下の自主ゼミには噂の一年生も参加しているらしい たぶん王女殿下の間違いですね
[一言] たくさん小説書いてて厳しいと思うけどもっと投稿頻度をあげてくれー
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