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6、私、魔王として仕事をする

先に言っておこう!

かなりサブタイトル詐欺だ!

超すみません!


 アスモデウスの作ったご飯を食べた後痛むお腹でベッドに潜り込んだ。

 お腹痛いときは、右向きでお腹をのの字で擦ると寝やすいと昔母から聞いた覚えがあるので試してみた。結果はよくならなかった。

 理由は明白で右向きや、のの字で擦るというのは胃や腸の向きが関係しているのだが、今の私は魔王でさらに闇の女神の子孫なので人間の体を基準にした休み方では意味がないのだ。

 

 ちなみに腹痛の理由はただの食べ過ぎだ。不味くて吐きそうというのはあっても胃にダメージがいくほどではない。というか意識が入れ替わるまではこれが好物だったらしいので、胃にダメージが行くならアスモデウスが食べさせてくれるはずがないだろう。

 

 私は痛むお腹でベッドに横になった。ふかふかで安眠が約束されているこのベッド。だがそれは眠れたらの話だ。私はお腹を抑えながらベッドの中で蹲り、トイレとベッドを往復する時間を過ごしていた。そして夜が明けた。

 

 クコォォ~!

 

 魔界の朝はグリンカムビという謎の鳥の鳴き声で始まる。なお、グリンカンビは最初の鳴き声を含めて計18回、一時間毎に鳴く鳥だ。

 その声は魔界の全てに届き、太陽のない時間感覚の狂いやすい魔界での時計代わりを務めている。

 

 

 

「魔王様!朝の支度のお手伝いに参りました!」

 

 最初の鳴き声がして三十分くらい経ってからだろうか。アスモデウスが来た。私は着替えを手伝ってもらう。もう顔を見てドキドキしたりはしない。何と言うか、がんばり屋の女友達といる気分になるのだ。そんな友達いたのかって?……いたよ!多分……

 

 その後、朝食を作るからとしばらく部屋で待たされた。私は昨日食べた魔界飯のことを思い出し、胃液が逆流するのを感じた。無理矢理抑え込んで吐くことはなかったけど。

 

 二度目の鳴き声が響いて少し経った頃にアスモデウスは朝食を持って戻ってきた。

 

「昨日の夜は豪華だったので味気ないかもしれません」

 

 そう言って出された料理はミネストローネのようなスープに、何の肉かはわからないけどスペアリブみたいな料理。そしてパンだった。

 

「まあ!」

 

 私は魔界飯を想像していたので、あまりの日本でも不自然がない程度の食事に感動のあまり声が漏れてしまっていた。

 アスモデウスはそんな事を気にした様子もなく料理を取り分けてくれる。

 

「いただきます!」

 

 私は手を合わせて言った。

 

「『いただきます』とは何のことですか?」

 

 あ、この世界で食事前に『いただきます』って言う文化はなかったね。これは失敗。

 

「夢の中に出てきた言葉です。食材となって失われた命。それを調理した料理人。この料理に関わる全てに感謝を祈る言葉でしてよ」

 

 これは私が必死に捻り出した言い訳だ。これ以上のものは思い浮かばなかったのだ。言葉遣いが変なのは今更なので言わないでほしい。私も直す努力はしてるんだよ!

 

 私は一人で黙々と食べた。日本のご飯よりは美味しくないにしても、昨日の魔界飯と比べると随分美味しく感じる。なんでシャルロッテちゃんのこっちが好物じゃないのか疑問だったので記憶を探ってみると、アスモデウスに気を使っていたらしい。

 

 ………シャルロッテちゃんも苦労してたんだなあ。

 

 私は一つ不思議に思ったことがあったので聞いてみた。

 

「アスモデウスは一緒に食べないの?」

 

 アスモデウスは私の給仕をするだけで自分はご飯を食べないのだ。私はアスモデウスちゃんと一緒に食べたい!

 

「私は魔王様がお食べになった後にいただきますので」

 

 アスモデウスは首を横に振った。

 魔王な私と、秘書としての彼女では身分に差があって一緒に食事などできないのだった。

 でも私は、どうしてもアスモデウスちゃんと一緒に食べたい。確か魔王になる前は一緒に食べていたのだ。

 

 とりあえず説得することにした。一応最終手段も用意してあるけどそれは使いたくない。

 

「食事というのは他の人と一緒に食べることで美味しくなるのです。だから私は食事を美味しくするためにアスモデウスと一緒にご飯を食べたい!」

 

 私がそう言うと、アスモデウスは困ったような表情をした。うーん、手応えはいまいち。もう一押ししてみようか。

 

「それに昔みたいに友達みたいな関係になりたいよ………」

 

 作戦1は理由、メリットの説明で説得を試みたが反応はいまいちだった。だから今回は情に訴えることにした。名付けて、泣き落とし作戦!

 そのままだって?細かいことは気にしなくてよくてよ!オホホ……

 

「ですが私は………」

 

 今の一撃で大分グラッときたみたいだ。最後の一押しが必要かな。

 

「ダメ?」

 

 私はアスモデウスの手を握り上目遣いで言った。今の見た目を最大限利用した可愛さ攻撃だ。元の姿なら絶対にやっていない。

 

「うっ…………」

 

 アスモデウスは頬を赤くして私から少し距離を取った。これは落ちたね。

 

 私の上目遣いはアスモデウスを説得するには充分に効果を発揮した。「コホン」と照れを誤魔化すように咳払いをした後、

 

「わかりました。私もご一緒させていただきます」

 

 と言って自分の分を皿によそり、私の横に座った。私は食事をしているアスモデウスをまじまじと見つめた。

 

「な、何ですか?そんなに見つめられると食べづらいのですが」

 

 アスモデウスは照れたようにもじもじする。可愛いよ~!萌え死ぬ!やはりアスモデウスは私の天使でファイナルアンサーだ!

 

「別に何もないよっ!」

 

 私は誤魔化すように笑ってから自分の分を食べた。

 

 

 

 

「ごちそうさまでした」

 

「それも夢で出てきた言葉ですか?」

 

 私は『いただきます』から何も学ばなかったようで、また同じミスを犯してしまった。まあいいや。多少ドジっても仕方ないよね。だって女の子だもん。

 それに超絶金髪美少女な今の私なら、可愛さで大抵の事なら誤魔化せるのだ。私に敵なし!

 

「そうです。アスモデウスも一緒にどうですか?」

 

「魔王様が仰るなら」

 

「では、ごちそうさまでした」

 

「『ごちそうさまでした』」

 

 食器類はアスモデウスが下げ、私はソファーで食後の休憩をしていた。だら~とソファーに倒れこむ私に魔王としての威厳はない。幸いそのシーンをアスモデウスは見ていなかったので何も言われなかったが、バレたら怒られること間違いなしだ。

 

 

 

 

 四度目の鳴き声がした時、私は執務室で仕事をしていた。二日間も仕事をサボって、もとい休んでいたので、承認の必要な書類が山のように積んであるのだ。

 それを見た私は勿論もう一度引きこもろうと、自室にUターンしようとしたが、アスモデウスに肩を捕まれて、

 

「全部承認していただけるまで逃がしませんよ」

 

 とにっこり笑ってそう言われた。なお目は笑ってなく、ハイライトがどこかに消えていた。怖い。

 私は素直に仕事に励むしかなかったのだった。

 

 

 

 

「終わらないよ~」

 

「魔王様、泣き言を言わないでください。魔王としての威厳が……」

 

 私の愚痴に反応して、アスモデウスは私を注意する。でも仕方ないじゃん。どれだけ書類を処理しても、どんどん積まれていくんだからさ。

 こんなのいつまでたっても終わらないよ!

 

 ちなみに私は書類仕事をすることができた。と言うよりも体が勝手に動いてくれる。

 シャルロッテは体が自動で動くくらい仕事をしていたようで、可哀想だと思うと同時に、昔の私に垢を飲ませてやりたいと思った。

 今の私が飲んでも意味ないんだよね。私の今の体はシャルロッテちゃんの体だからね。

 じゃあ私の体に入っているシャルロッテちゃんに飲ませばいいのかな?それはそれで少し違う気がする。

 中身が一致してる状態の私に飲ませないといけないのだ。そんな機会が来るとは思えないけれど。

 

 私はその後もせっせと執務に勤しんだ。殆ど体に任せっきりだったけどね。

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