3、私、入れ替わってる!?
今回出てくるのがメイン主人公です
「な、なんじゃこりゃ~!!!」
時は少し遡る。
私は朝起きると、前日の疲れが嘘のように吹き飛んでいることにびっくりした。お婆ちゃんから貰った硬いベッドでは疲れが全くと言っていいくらい取れないのだ。むしろ腰が痛くなるくらいだ。さらに私は帰宅部なので全く運動しないため、学校の体育の三段跳びで筋肉痛だった体が凄く楽になっていた。確実に二日は筋肉痛だと思っていたので凄く嬉しい。スクワットしても足が痛まないとか凄い。おまけに体が軽い。大袈裟な表現ではなく、冗談なしで羽のように軽いのだ。
人生初の爽快な朝の目覚めを体験した私はルンルン気分で顔を洗いに行った。
寝惚けていた訳ではない。現実逃避をしていた訳でもない。ただ単に筋肉痛から解放された爽快な朝というものに浮かれていたのだ。
私はジャバジャバと顔に水をかけた。タオルを探して手をさ迷わせていると誰かがタオルを渡してくれた。私は目を瞑っていたので誰かは見ていない。この時は家族がこんなに優しくしてくれるなんて何かあったのか、それともこれから何かがあるのかなんて呑気なことを考えていた。
顔を拭いて完全に目が覚めた私はついに鏡を見てしまったのだ。
目の前には金髪ロリの美少女が写っているではないか。寝惚けているのだろうと顔を洗った。昔からアニメや漫画は好きだった。きっと今まで見てきたアニメのキャラのうちの誰かが寝ぼけた頭に浮かんできて、鏡に写っている自分の姿に重ねてしまったのだろう。そう無理矢理納得させた。
バシャバシャと何度も水を顔にかけて念入りに洗う。思考もクリアになってきた。いざ、行かん!
だが鏡に写っているのは超絶金髪美少女だ。目を擦ったり、夢なのではないのだろうかと頬を引っ張りしてみたが何にも起きない。つまり、目の前の女の子は間違いなく自分なのだ。
そう理解したとき乙女らしからぬ声でついつい叫んでしまった。そして今に至る。
「ま、魔王様!大きな声が聞こえましたが、どうかなさいましたか!?」
茶髪でおっぱいがたゆんたゆんの頭から角が生えている茶髪ゆるふわロングの女の子が洗面所に入ってきた。耳が少しとんがっていてとりあえず、普通の人間ではないことはわかる。じっとこの子を見てると名前が脳裏に浮かんできた。
「あ、アスモデウス。何もなくてよ!オホホ」
必死にいつも通りを装い誤魔化す。この子のことを思い出したのが切っ掛けなのか、この体の主の記憶が次々と浮かんできた。
「そうですか。あまり心配をかけないでくださいね」
アスモデウスはタオルを回収して洗面所から出ていった。私は必死に頭の中の情報を整理する。とりあえず重要なのは落ち着くことと、自分の状況を正確に理解することだ。あまり成績のよくない頭でぐるぐると考えた。頭のできも体の持ち主に依存するのか凄く賢くなっているのがわかる。
それでいろいろ考えた結果、私はこの魔王と呼ばれる少女と入れ替わっていることが発覚した。また戻れる保証はなく、この体の持ち主である少女、シャルロッテ・カオエスティールちゃん?が私こと、天野星座の体の中に入っていると予想される。
何そのアニメみたいな設定!アニメ映画『君の○は』みたいじゃないですか!
………とりあえず一度落ち着こう。
ひとまず頭の中に記憶があるので人との接するときに名前がわからないなどの問題が起こることはないだろう。さっきの喋り方?細かいことは気にしなくてよくてよ!オホホ。
それで今後のことだ。確かシャルロッテちゃんはふて寝するために「しばらく一人にしてくれ」と言って部屋に引きこもったはずだ。起きたら私と入れ替わっていた訳だけど。
だけどこれは好都合だ。しばらくの間、人と関わらなくてすむのだ。その間にこの入れ替わり現象が終わるかもしれないし。
私は少し足取りを軽くして自室に戻った。念願の引きこもり生活だ!ひゃっふーい!
とりあえず天蓋付きのふかふかベッドにダイブした。ふかふかでゴージャスな造りになっているベッドの中にいると、気分はまるでお姫様だ。残念ながら捕らわれ役のお姫様ではなく、捕らえる役の魔王様なのだが。
少しゴロゴロしていてあることに気がついた。凄く暇なのだ。自室では何もやることがなかった。日本の我が家ならパソコンでアニメ見たりゲームしたり、漫画読んだりしていくらでも時間を潰せるのだがここにはその全てが存在していなかった。本の一冊すらも。これなら娯楽が戦闘になるのも納得だ。
私はどうにかして暇を潰せないかと考えた結果この今いる魔王城を探検することにした。確か透明化や音声遮断、気配遮断みたいなことができたはずだ。さすが闇の女神の末裔にして魔王と呼ばれる女の子だ。どうすればできるのか記憶を探りながら試した。
「えっと、『闇の女神の一端を解放する、我が権限において彼の者を隠蔽する』」
記憶を探りながらの覚束ない詠唱だったが、うまく使えたようだった。これは魔法ではなく闇の女神の権能によるものだった。これを名付けるなら差し詰め“神隠し”かな?
私は大声でアスモデウスを読んでみた。いつもなら5秒あれば来るのだが、現在は全く来る気配がない。よし、発動しているようだ。
私は自室の扉を勢いよく開けて部屋の外に飛び出した。
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「ふむ、どうやら私はこの天野星座という女の子と入れ替わってしまったようなのだ」
シャルロッテは天野家で事情を説明していた。というのも、朝から大声で叫んでしまったため、星座の親の雷に触れてしまったのだ。入れ替わった日が土曜日だったのが幸いなのか、それとも不幸なのかはわからないが、学校に遅刻するという事態は避けられたようだった。
その代わり二日酔いで気分が悪い時に大声で叩き起こされた母親の機嫌は滝下りのように急降下しているのだが。シャルロッテにとっては不幸だったが記憶の整理をする時間があるというのはありがたいことだった。その前に目の前の問題を片付けなくてはならないのだが。
「アニメの観すぎでしょ!いい加減にしなさい!」
星座の母親に事情を説明するのが最優先事項だった。もちろん異世界の魔王と入れ替わったなんて突拍子もない話を信じるはずもなく、怒りは増していく一方だった。
何故ここまで頑なに信じようとしないのか。シャルロッテは必死に訴えかけていたので、もしかしたらとか最低でも頭の病院に行った方がいいかもと心配してもいいのだが、そんな事を思った様子もない。
もともとこんな話を信じるのはよっぽどの馬鹿か変人のどちらかだが、星座の母親の態度は一般人の対応とも少しずれていたのだ。
それもそのはず異世界の記憶とか、前世の記憶が甦ったとかのネタは中学生、つまり数年前にある程度やっているのだ。それになれている母親は久しぶりに馬鹿なことをやってる程度にしか思っていなかったのだ。
シャルロッテからしてみれば酷いとばっちりであるが本人もそれに関しては黒歴史なのだ。あまり触れないでやってほしい。
シャルロッテは諦めて朝御飯を食べた後星座の部屋に戻り記憶の整理を始めた。しばらくの間こちらに住むことになるだろうからこの体の主のことを詳しく知る必要があるのだ。
ベッドにごろんと寝転がって、目を閉じた。自分のベッドより硬いそれは眠るときには不便だが考え事をするときには、ふかふかの自分のベッドではできないので、そこだけは都合がよかった。ベッドとしての機能としてはどうかとは思うが。
まずは家族構成。天野家にはこの体の主こと天野星座に、さっきの母親の天野時雨、星座の姉の天野霞、妹の天野織姫の四人で暮らしているらしい。父親とは子供の頃に離婚して今は会っていないそうだ。
学校というものに通っていてもとの世界よりも高度なものを学んでいるらしい。その内容は記憶に靄のかかったようになっているため思い出せないのだが。これは星座が授業時間を睡眠時間として使っているためだからだ。
他にはないかと記憶を探っているところシャルロッテは星座の趣味に興味が湧いた。
「ほぅ……“げーむ”とは、中々に興味深いな」
自分の部屋にあるバイトして買ったテレビの電源をつけ、ゲーム機を起動させる。画面が真っ暗になったと思ったら急にタイトルが出てきた。タイトルは割愛するがそれは大人気RPGの最新作だ。
シャルロッテは興味津々で記憶探りながらゲームをした。
娯楽の少ない世界から来たシャルロッテがゲームにどハマりしてしまうのは言うまでもない。
基本はメイン主人公だけですがたまにこんな感じでシャルロッテサイドを出したり閑話で出すかもしれません




